第12話 視える子ちゃん

「メリィちゃん、そんな小さかったんだ……浮遊してるし」



 まるで童話の妖精を連想させる小さな体躯、淡い金色の巻き髪にエメラルド色の瞳。

それが俺のオペレーター、メリィちゃんの姿だった。



『契約の効果で霊視のスキルを手に入れたの! だからメリィちゃんが視えるようになったの!』



 そう言うとメリィちゃんは俺の肩にちょこんと座った。いつもそこにいたのか。



「あーメリィちゃんずるい! エルダーも店長の肩に乗りたいんだけど!」



「いや君は無理だろ」



 エルダーちゃんも小柄だけど普通に人間サイズだし。

ちなみにエルダーちゃんは実体があるタイプの幽霊なのでふつうに重い。



「店長なにか失礼なこと考えてる……」



「いやそんなことないぞ。まあ今度、肩車でよければしてやるからさ」



 背中からよじ登ろうとするのはやめてね。



 ……。



 …………。



「さて、それではさっそくお店の準備にとりかかりたいんだけど……」



「だけど?」



「人手が足りません」



「それならエルダーがいるじゃない!」



 ぺちっ! っと無い胸をたたくエルダーちゃん。そうか、君の胸はもう成長しないんだね……あまりの切なさに涙が止まらない。



「ちょっと、なに泣いてるのよ。わかったわ! エルダーがバイトするのが泣くほど嬉しかったのね!」



「そんなところかな。いやまあ、それはおいといて」



 涙の真実に気付かれる前に話を進めよう。呪い殺されちゃうからね。



「今のままだと、俺がキッチンで料理とドリンク全般、エルダーちゃんがフロアで給仕とお会計。さすがにきついよ」



「たしかに、パパとママもとても忙しそうだったわ」



 奥さん、つまりエルダーちゃんのママが亡くなって、マスター1人になってからは、カウンター席だけを使ってバーをやっていたらしい。



「やっぱもうちょっとゆとりを持って働きたいからね。せめてあと一人、ドリンクかレジ周りをやってくれる子が欲しいね」



「でも、お金に余裕ないんでしょ? エルダーちゃんを雇うくらいだもの」



「そうなんだよなー……ただでさえ幽霊が出る、っていうか働いてる喫茶店だしなあ」



 同僚に幽霊がいる職場かあ。訂正なバイト代で求人出しても応募ゼロかもしれないな。



『それなら、アンデッド族を雇えばいいの。アナタの契約スキルがあれば大丈夫なの』



 アンデッド族なら幽霊のエルダーちゃんを怖がらないし、バイト契約でお金もかからない。ついでに俺のスキル能力も上がるかも。



「でも店長、エルダー以外のアンデッド族の知り合いなんているの?」



「アンデッド族の知り合いねえ……あっ」



 ……いる。クマ耳の、ちょっと耳がちぎれてる、ゾンビの女の子。



「エルダーちゃん、俺ちょっと出かけてくるね」



「分かったわ。お店はエルダーに任せて! で、どこいくの?」



「ちょっとね。クマ出没注意の森まで」



 約束通り、美味しいごはんも作ってあげなきゃな。

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