第11話 バイト契約

『……バイト契約?』



『そうなの。バイト契約なの』



 この町へ向かう道すがら、自称オペレーターのメリィちゃんにスキルについて聞いてみた。



『アナタが今使える死霊術のスキルは3種類なの。”盛り塩”、”鬼火”、そして”バイト契約”なの』



 パナシーアフィッシュの塩焼きを作るときに使用した”盛り塩”と”鬼火”、そして”バイト契約”。これが今、俺が使用できるスキルらしい。



『バイト契約ねえ……ちなみにどんなスキルなの?』



『バイト契約はアンデッド族を使役できるスキルなの。ただし、契約するには相手が納得して許可をしないとできないの』



 倒して強制的に契約、みたいなのはできないということか。



『契約が成立したアンデッド族は、アナタが死なない限り、消滅しないの。勝手に成仏したりもしないの』



『なるほど。それで俺は契約したアンデッド族に指令を出したりできると』



『特に命令とかはできないの』



『えぇ……』



 出来ないのかよ。それ俺にメリットなくね?



『かわりにアナタのスキルがパワーアップしたり、新しいスキルを使えるようになったりするの。

影響するスキル能力は契約したアンデッド族によって変わるの』



『それは結構良いな! でもスキル名からして時給を払わなきゃいけなそうだけど。そんなにお金ないぞ』



『契約にお金は発生しないの。消滅から守ってくれるだけでプライスレスなの。ちなみに契約人数に上限は無いから、なるべくたくさん契約すると良いの!』






「……スキルの説明については、まあそんな感じなんだけど」



 バイト契約について、メリィちゃんから聞いた話を、エルダーちゃんに説明する。



「バイト……店長は、エルダーがバイトしてくれたら、嬉しい?」



「嬉しいよ! 君がここで働いてくれたらとても嬉しい。」



「そっか、嬉しいんだ……。わかった! ここで働く! 店長、エルダーとバイト契約してください!」



 エルダーちゃんが笑顔で手を挙げる。少しは信頼を得られたのかな。



 俺は笑顔で答えた。



「よしっ! それでは採用面接を始めます」



「えっ」



「あっいや、ほら、一応ね、形式だけね」



「……店長はいじわるだわ」



『アナタはデリカシーがないの。幽霊心が分かってないの』



 エルダーちゃんは笑顔を失い、メリィちゃんには怒られてしまった。すんませんでした。



「えーそれでは採用面接を始めます。お名前とバイトの志望理由をどうぞ」



「はい。エルダーって言います。ここはパパとママの思い出がたくさん詰まったお店なので、ここで働きたいと思いました」



「なるほどね。よし! 採用!」



「はやっ! やる意味あった? ねえこれやる意味あったの?」



「まあ良いじゃん。それじゃあエルダーちゃん、バイト契約をやろうと思うんだけど、大丈夫?」



「うん。お願いします」



 さっそくエルダーちゃんに死霊術:バイト契約を使ってみる。



『契約対象の名前とスキル名を言えば発動するの』



「よし。それでは、えー……†バイト契約:エルダーちゃん†」



 ピョン!



 「「わっ!」」



 いつもの変な効果音と共に俺とエルダーちゃんの身体が一瞬光る。



 ……。



 …………。



「……契約できたのか?」



 特に変わったところは無いように感じる。



『左手を見るの』



「ん? 左手? うわ!なんだこのマーク」



 左手の甲に†1って書いてある。入れ墨か?



『契約印なの。契約数が増えると数字が更新されるの。目指せ友達100人なの』



「エルダーちゃんは大丈夫?なんか変わったことあった?」



「うーん特には……あっエルダーも左手に†1って書いてある」



 エルダーちゃんの左手の甲にも俺と同じマークが書いてある。



『エルダーちゃんのマークの数字は契約番号なの。契約第一号なの』



「そう……エルダーが店長の契約1番なのね。ふ~ん。~♪」



 何故かエルダーちゃんがご機嫌になっている。



 ……ん?



「エルダーちゃん、もしかしてメリィちゃんの声聞こえてる?」



「うん。 聞こえてるっていうか、店長の後ろにいるじゃない。その子メリィちゃんって言うのね」



「……えっ?」



 まさかと思って振り向くと、そこには西洋人形を思わせる、30cmくらいの小さな女の子が浮いていた。えっ浮いてんだけど。



『わたしメリィちゃん! 今アナタの前にいるの!』



 メリィちゃんが視えるようになりました。

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