第13話 私が必要なんですよね?



「やっと着いた……。いや、帰ってきたかな」



 バイト候補を探すため、町を出て徒歩で半日。

俺が最初に召喚(?)された森の前に到着した。



 馬車とか出てないかなって探したけど普通になかった。それどころか、乗合馬車のおじさんに話を聞いたら、



「兄ちゃん、まさか”埋葬の森”へ行くのかい? やめといたほうがいいぜ。

あの森には”彷徨うケモノ”って呼ばれてる魔獣を封印してたんだが、最近になってその封印結界が壊されたらしい」



 とまあそんな感じで行くのを止められてしまった。あそこ埋葬の森っていうんだ。

てか多分結界壊したの俺ですね、スイマセン。



「てか、”彷徨うケモノ”ってまさか……おっ?」



 ぺた……ぺた……



 湖からでっかい魚を抱えてゆっくりこちらに歩いてくる、クマ耳の女の子の姿を見つける。



「お~い、ぞんべあちゃん!」



「……? っ!! こごみさん!!」



 俺を発見してペタッペタッと駆け寄ってくるぞんべあちゃん。遅いのであんまし徒歩と変わってない。あっコケた。



「そんな慌てなくていいからゆっくりおいで~って足取れてるよ足!」



「こごみさぁ~ん」



「這ってくんな!」



 取れた足も、抱えてた魚も全て放置して、這いずりながら近づいてくるぞんべあちゃん。いやホラー展開やん。



「もうちょっと自分の身体を大切にしなさい。物理的に」



 取れた足を回収してくっつけてあげる。ちなみに磁石みたいな感じでくっついた。



「えへへ、ありがとうございます……おかえりなさい。こごみさん」



「うん。ただいま、ぞんべあちゃん」



『感動の再会なの』



 ……。



 …………。



「おいしい! こごみさんこれとっても美味しいです! てんぷら!」



「今度会ったら美味しい料理ごちそうするって言ったからね。ご期待に添えたようでよかった」



 町で油とてんぷら粉っぽいやつを手に入れたので、ぞんべあちゃんが採ってきた魚を捌いて揚げてみた。

スキル:†盛り塩†で出した塩を付けて食べる。うん、美味しい。

めんつゆがあればもっと良かったんだけど、この世界に存在するのだろうか。頑張って自作しようかな。



「こごみさん、町はどうでしたか?」



「うん、それがね……」



 ぞんべあちゃんと別れてからの出来事を説明する。

ちなみにぞんべあちゃんは、俺と契約していないのでメリィちゃんが見えていないらしい。



「まあそんな感じで、ネオグリム町で喫茶店をやることになったんだけど、」



「ふ~ん……女の子の幽霊さんと一緒に、ですか……その子はかわいいんですか?」



 話し終えたらぞんべあちゃんが何故かじと~っとした目でこっちを見ていた。え、何? 俺、なにかやっちゃいました?



「エルダーちゃんのこと? うん、まあ、可愛いと思うけど。元気いっぱいというか、ちょっとおてんばというか」



「……こごみさんのえっち」



「なんで!?」



『二人きりの時に他の女の話をするのはデリカシーに欠けるの』



 えぇ……どうしろと。



「それで、その幽霊さんとのイチャイチャ喫茶店のろけ話を私に話してどうしたんですか?」



「いやめっちゃ刺してくるじゃん。よくわかんないけどゴメンて。

まあそれで、喫茶店を始めるのに俺とエルダーちゃんだけだとさすがに人手が足りなくてさ」



「はあ、そういうもんですか」



「そういうもんなんですよ。というわけでさ……ぞんべあちゃん、ウチでバイトしない?」



「はあ、バイトですか。……はい?」



「ぞんべあちゃん可愛いからさ、ウチの喫茶店でウェイトレスやってくれたら絶対人気出ると思うんだよね。だからさ」



「や り ま す !! 」



「やっぱ獣人だし、ゾンビだし、町で働くのは抵抗はあると思うんだけどって返答はっや! いいの?」



「こごみさんは、私が必要なんですよね?」



「……うん」



「や り ま す !! 」



 ぞんべあちゃんが喫茶店で働いてくれることになった。声でか。

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