第8話 事故物件
「そうかあ、兄ちゃんは異世界から来たのか。それは大変だったろう」
宿屋までの案内の道すがら、おじさんに事情を説明した。
ぞんべあちゃん同様なにも疑うことなく信じてくれた。この世界の住人は善人しかいないのだろうか。
そんな善人のおじさんはこの国の事を色々と教えてくれた。
ここ、ネオグリム町は、正式には「ハーデニー王国領独立地域・ネオグリム」という。
ハーデニー王国という国が治める地域にあるのだが、色々あって管轄する領主がおらず、独立国のような扱いだという。
「昔、ここら一帯は罪人の流刑地であり、処刑場でもあった。まあ要するに、罪人の墓場だったんだとさ」
そんないわくつきの土地に造られたネオグリム町。やはりというべきか、心霊現象だったり、
町の付近にアンデッド族モンスターが出現する頻度が他の地域に比べて高く、王国の貴族はそれを気味悪がり、誰も管轄せずに放置。
仕方ないから住民たちで町議会を作り、町が今のように活気づくまで頑張ってきたという。
「町のみんなで協力してなんとかここまでやってきたぜ。ここは俺たちの自慢の町だ」
そう言ったおじさんの笑顔はとても晴れやかだった。眩しい。あとおじさんの頭も眩しい。
宿屋まで案内してくれたおじさんに礼を言って別れた。
おじさんはまた町の入口へ向かっていった。やっぱNPCじゃん。
宿屋で受付を済ませる。一泊1000イェーン。
俺が神様から貰って持っていた金貨は1万イェーンらしい。
宿で借りた部屋に入った途端、猛烈な眠気が襲ってきた。
「転生してから色々あったもんな……」
さすがに疲れが溜まっていたのか、そのままベッドに倒れ込んで、気絶するように眠った。
気が付いたら朝だった。
「さて、次は仕事を探さないとな。」
宿屋の食堂で朝食を済ませる。
神様に貰った金貨は5枚、つまり5万イェーン。宿屋の値段を見る限り、しばらくは何もしなくても暮らせそうだけど、
人生なにがあるか分からないからな。いや本当に。
仕事を見つけて、安定収入を得て、宿じゃなくて家を借りよう。
そしたら森で待ってるクマ耳のゾンビガールに美味しいごはんを作りに行こう。
「やっぱ異世界といえばギルドだよな。とりあえず行ってみるか」
宿屋の主人にギルドの場所を教えてもらい、出発する。
死霊術士の求人……はさすがに無いだろうか。死んだ人を生き返してくださいとかあっても困るしな。
ギルドへ到着。受付で職業登録の手続きを終わらせる。
「ヒノシタ・コゴミさん、死霊術士……?」
そういや人間は霊術使えないんだっけ。やべ。めっちゃ怪しまれてる。
「いや、あの俺、実は異世界から転生されて」
「あーなるほど! 異世界からいらっしゃった系ですね! ならOKです!」
「大丈夫なのかよ!」
大丈夫だった。
「依頼の掲示は……これか。結構あるな」
クエスト依頼の掲示板を見つけたので、今の俺でもできそうな依頼内容を探す。
「ペットのナメクジ探し、毒薬の治験モニター、メシマズ料理屋のレビューで☆5をつける簡単なお仕事……ロクな依頼がねえな」
毒薬の治験は報酬金額が良いので結構人気があるらしい。世知辛い世の中だ。
「……ん? ”空き家に出没する地縛霊をどうにかしてほしい” 報酬は5万イェーンと、その空き家?」
なにそれ。めっちゃ気になるんですけど。
「ああ、その依頼ですか……。実は、町の外れに喫茶店があったんですが、すこし前にお店のマスターが亡くなってしまって」
受付のお姉さんによると、とある喫茶店のマスターが亡くなり、1人で経営していた店は閉店。空き家になってしまった。
買い手が付かないので店を取り壊そうとしたところ、店に入った作業員が謎の怪奇現象によって怪我を負ってしまい、解体は中断。
そんなことが何度か起きたという。
「怪我をした作業員はみなさん口をそろえて言うんです。女の子の幽霊が椅子持って襲い掛かってきた、って」
「この依頼受けます。いや受けさせてください!」
行くぜおまえら~! 美少女幽霊ちゃんに会いにな!
『わたしメリィちゃん!アナタの趣味、終わってるの!』
新たなアンデッド娘に出会うべく、我々は空き家へと旅立った(性癖探検隊)。
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