第7話 NPCおじさんと湖畔の町
「お魚美味しかったです! こごみさんは三ツ星のシェフの方ですか?」
「なんで三ツ星シェフっていう概念を知ってんの。全然そんなんじゃないよ」
メイドカフェで働いてた時は、人手不足で店長業務の他にキッチンも担当してたから簡単な料理はできる。得意料理はオムライスです。
「そうなんですか……でもこんなに美味しいごはんが作れるなら、町でごはん屋さんをやれば大繁盛間違いなしです! あっそういえば、魚を採りに行った時、湖の西側に家がいっぱい建ってる場所が見えましたよ!」
「えっそれ本当?」
ぞんべあちゃんが人間の町っぽい所を発見したと教えてくれたので、見える位置まで行ってみる。
遠目にだが、たしかに建物が密集している場所があった。全然気づかなかった。
「ひとまず向かってみるか……」
ここで狩りをして野宿を続けるわけにもいかないしな。
情報収集もしたいし、ギルドや宿泊施設なんかもあるかもしれない。
「こごみさん、やっぱり行っちゃうんですね……」
ぞんべあちゃんが心持ちさみしそうな声で話しかけてくる。
そんな雨の日の捨て犬みたいな顔で見上げてくるのはやめてほしいんだが。
「ぞんべあちゃんも一緒に、ってわけにはいかないよなあ……」
「獣人族は人間の町にもいますが、ゾンビになっちゃったらさすがに……」
町に入ったら速攻で討伐されかねない。
「……こごみさん、町、行ってください。私は大丈夫なので。そして立派な三ツ星シェフになってください!」
「ぞんべあちゃん……」
いや三ツ星シェフにはならんけど。
「こごみさんが森の封印から解放してくれたので、私はしばらくこの辺りで過ごそうと思います。
だからこごみさん、町へ行ってもたまには私に会いに来てくださいね……?」
儚げな笑顔で送り出してくれるぞんべあちゃん。
なんとかペット扱いでいけないかなー……ダメですか、宿屋でゾンビ飼っちゃダメですか……。
「わかった。町に行ってみる。そんで住むとことか決めて、落ち着いたらまた絶対に会いに来るから。
そのときはさっきの焼き魚よりも美味しいごはん作る」
「はいっ! こごみさん、いってらっしゃいませ!」
「……うんっ! いってきます!」
後ろ髪を引かれまくりながらぞんべあちゃんと別れ、俺(メリィちゃんもいるの!)は町へ向かって出発した。
……。
…………。
「や、やっと着いた……」
ぞんべあちゃんと別れ、森から湖沿いに歩き続けること約半日、ついに町にたどり着いた。
ヒマすぎてメリィちゃんと脳内しりとりしながら歩いた。しりとりは負けた。
「ネオグリム町。思ったより栄えてるな。」
グリム湖沿いにある町だからなのか、名前が似ている。
町の大きさは、千葉県にある某テーマパークの海の方くらい。
石造りのタイルにレンガ調の家。西洋風というか、異世界っぽいというか、おしゃれだな(語彙力)
行きかう人々の中に時折ケモノ耳の人がいる。
あの人たちがゾンビになってないタイプの獣人族か。先にぞんべあちゃんと出会ってしまったので新鮮な感じだ。
とりあえず泊まれる場所を探そう。アパートみたいな所を借りたいんだけど、相場も分からないしまずは宿屋かな。
町の入り口にいたおじさんに宿屋の場所を聞いてみる。
「あのーすいません」
「ここはグリム湖畔の町、ネオグリム町! 特産品はパナシーアフィッシュだぜ!」
「あっはい、てかあの魚ここの特産品なんだ……それで、宿屋の場所を」
「ここはグリム湖畔の町、ネオグリム町! 特産品はパナシーアフィッシュだぜ!」
「セリフそれしかないのかよ! NPCなの? ねえ、おじさんNPCなの?」
もしかして乙女ゲーの世界に転生しちゃったの? ジャンル変わっちゃうよ!
「ハッハッハ! 冗談だ冗談! 初めて見る顔だったんでな、まあこの町の洗礼みたいなもんだ……NPCってなに?」
「さいですか。とりあえず宿屋の場所が知りたいんだけど……」
NPCではなかったらしい。スルーしよ。
「宿屋だな! よし! 店の前まで案内してやるからついてこい!」
宿屋の前まで案内してくれた。いいおじさんだった。
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