第6話 ゾンビ's キッチン
「こごみさーん! お魚採ってきましたー!」
「うーん、なるほど……」
人間は魔法しか使えない、死霊術は魔法ではなく霊術、か。なるほどね。
で、俺は転生者特典で逆に霊術しか使えないらしい。いや別に特典になってねえな。
「こごみさん?」
「あっぞんべあちゃんおかえり~ってなにそれドラゴン!? でかっ! 羽生えてるし!」
ぞんべあちゃんが羽が生えてるでっかいヘビみたいな魚を担いで戻ってきた。どうやって採ったん?
「この魚はパナシーアフィッシュと言って、食べると状態異常が治るんです! こごみさんの幻聴も聴こえなくなります!」
「すげえ……マジで漢方薬じゃん。」
幻聴ってのはウソだからちょっと心が痛いが、転生してから何も食べてなかったからありがたい。
「それじゃあ、こごみさん、どうぞ!」
「えっ」
満面の笑みでパナシーアフィッシュを差し出してくるぞんべあちゃん。良い笑顔だ。
「あの、これを? どうしろと?」
未調理のお魚丸々一匹差し出されても。てかでかすぎる。
「どうぞガブっといっちゃってください!」
「……そのまま食うの?まさか、鮭食ってる熊じゃないんだから」
「……クマですけど」
そういやこの子はクマだった。正確にはクマ耳娘(ゾンビ)だけど。
『この世界で食材を"調理"して食べるのは人間だけなの。他の種族はそのまま食べるの。オープンワイルドなの。』
『そうなんだ……』
「私はクマなのでそのまま食べるしか知りませんけど。火も使えないですし。こごみさんは他の食べ方を知ってるんですか?」
ちょっとむくれ気味に聞いてくるぞんべあちゃん。ごめんて。
「よし、ちょっとやってみるか。ぞんべあちゃんお魚貰うね。ありがとう。」
「あっはい……」
ぞんべあちゃんから魚を受け取っ
「って重!! さっき軽々持ってたよね!?」
「クマなのでっ!」
えっへん、とドヤ顔でクマさんアピールをするぞんべあちゃん。
力持ちなんだね……良かった機嫌直してくれて。でもマジで重すぎて俺の腕がちぎれそう。
魚をいったん近くの岩に降ろす。
「それではKogomi'sキッチン、やっていきたいと思います。」
おーパチパチパチ! とよく分かってないぞんべあちゃんが拍手してくれる。
「よし……ふんっ! うわー……ぐにょっとしてる」
包丁がないので素手で魚の内臓を取り除く。ウロコがあるが1枚が大きいのでがんばって手で剝がしていく。
「じー……」
ぞんべあちゃんが物珍しそうに見学している。ウロコ食べる?
「下処理はこんなもんかな。さて、あとは味付けして焼くだけなんだけど……」
実はメリィちゃんから死霊術のスキルについて色々と聞いてみたところ、料理に使えそうな技があったので試してみることにした。
料理に使えそうな死霊術ってなんだよ。
「技名を言うだけで使えるらしいけど……コホン、えー、†盛り塩†」
ピョン!
「「わっ!」」
変な効果音がして二人で驚いてたら、魚の横に小盛りになった塩が出現した。ちょっと舐めてみる。ペロッ……これは……塩!しょっぱ。
塩に興味津々のぞんべあちゃんにもあげてみた。
「ペロ……しょっぱいです!」
盛り塩が技なのも死霊術なのも謎すぎるけど、とりあえず調味料が手に入るのでかなりありがたい。
塩を魚の全体にまぶして、森で拾ってきた木の枝で作ったくしに刺す。
「さて、これから火をおこします」
「火を……!? 火が出せるんですかっ!?」
リアクション100点満点だねこの子は。
「……†鬼火†」
ピョン! ボワァッ
「「わぁっ!!」」
また変な効果音がして、空中に青白い火の塊が出現した。てかそのカエルみたいな効果音一緒なのかよ。
出現した鬼火を操れるような感覚があったので、ふんっ! と気合を入れる。動かせた。
魚の近くに鬼火を設置して、しばらく串焼きにする。
「じゅるり」
「ぞんべあちゃん、よだれ拭いてね。」
「っ!!」
……。
…………。
「できた!」
「できましたー!」
「「いただきまーす!!」」
ふーふー、ぱく。
「「おいしーかもー!!」」
空腹だった俺は久々の食事、ぞんべあちゃんは恐らく初めての調理したごはんを食べたので、二人して夢中になって食べた。
「「ごちそーさまでした!!」」
状態異常:”空腹”が治りました。
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