第4話 わたしメリィちゃん


『わたしメリィちゃん! 今アナタの後ろに』



「っ!!」



 バッと振り向いたが隣にいるぞんべあちゃん以外誰も見当たらない。

てか初手背後は展開はやすぎだろ。せめて最寄り駅とかからスタートしろよ。



「こごみさん、さっきからどうしたんですか?」



「えっ、もしかしてぞんべあちゃん、メリィちゃんの声聞こえてない……?」



「メリィちゃん? いや、私とこごみさんしかいませんし、声も聞こえませんが…」



 ぞんべあちゃんが怪訝そうな顔を浮かべている。

えっ聞こえてないの? じゃあ俺はさっきから挙動不審の虚空話しかけおじさんになってたってこと?

こいつ、異世界転生で頭が……とか思われているのかもしれない。え、つらいじゃん。



『わたしメリィちゃん! 今アナタの脳内に直接語りかけてるの!』



「十万〇まんじゅうスタイルかよ!」



 こわい、こわすぎる。埼玉県民にしか通じないよ。



「こごみさん……?」



「あーごめん、なんでもなかった。さっきキノコ食べたら幻聴が聴こえるようになったんだった。大丈夫だから気にしないで」



「いや大丈夫じゃないですよ! ちょっと待っててください! 幻聴に効く魚採ってきます!」



 ぞんべあちゃんはそう言い残すと慌てて湖へ向かっていった。

スマン、幻聴は嘘なんだ。てかそんな漢方薬みたいな魚いるんだ。



『わたしメリィちゃん! 幻聴じゃないの! アナタ専用の異世界オペレーターなの!』



『分かっとるわ! さっきからずっと聴こえて……え? オペレーター?』



『わたしメリィちゃん! そうなの! 分からないことがあったら何でもわたしに聞いてなの!』



『開幕自己紹介はもうええて! てかどこにいんの? マジで後ろにいるの?』



 普通に声を出すと振り向きながら独り言喋ってる不審者になってしまうので、こちらもテレパシーっぽいイメージで語りかけてみる。



『ちゃんと後ろにいるの! でも霊視スキル使わないとアナタからは視えないの!』



『霊視スキル……?』





 ぞんべあちゃんが戻ってくるまでの間に、自称 ”異世界オペレーター” ことメリィちゃんに色々と教えてもらった。



 まず、この世界や今いる地域について。これに関してはメリィちゃんは何も知らなかった。いや知らないのかよ。

マップ情報に関しては自分で情報を収集したり、地図を手に入れたりしないとメリィちゃんにインプットされないらしい。そういうもんか。



 そんでもって俺に付与された死霊術士とかいう職業スキル。

これに関しては、この世界における"魔術のルール"を知っておかなければならない。

当たり前のように魔術とか出てきたけど。まあ異世界だし。



 メリィちゃんの説明によると、この世界には ”魔法” と ”霊術” という、2種類の異なる魔術が存在するらしい。



『死霊術士のスキルは霊術に分類されるの。でも、この世界の人間族が使えるのは ”魔法だけ” なの。』



『うん……ん?』



 あれ、俺って人間じゃないんか……?

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