第3話 ケモ耳ゾンビのぞんべあちゃん
「それではこごみさんは、この世界とは別の世界から来たひとなんですね……」
「自分で言ってて信じがたい話なんだけど、まあそんな感じ。とりあえず今は食料と住むところを探し中」
とりあえずぞんべあちゃんに現状を説明した。
素直すぎてちょっと心配になるレベルで信じてくれたな。
家から出たことない純粋培養お嬢様じゃん。
「そういえばぞんべあちゃんはこんな森の中で何してたの? てかラインヌやってる?」
「私はここに住んでるというか、徘徊してるというか……え? ライ……なんですか?」
「なんでもないです……スルーしてください……てかここに住んでるの? こんな物騒な森の中に?」
獣人っぽいとはいえ、こんな富士山の樹海みたいなとこに人が住めるのか……いやゾンビだけど。
「目が覚めてゾンビになった時にこの森にいて、最初は森から出ようと思って湖に向かったんですけど、
森の境目に透明な壁みたいなのがあって、出られなかったんです。」
透明な壁? そんなんあったっけ……?
「湖とは反対の方角にも行ってみたんですが、やはり森の外は見えるのに壁に阻まれて進めなくて……」
出口を探し回ったが、結局透明な壁とやらに阻まれて森から出れず、仕方なく森の中を探索、というか徘徊していたところ、俺に出会った……ということらしい。
「そっか、それは災難だったね……でも俺、普通に森に入れてるんだけど。壁なんてあったかな……?」
「た、たしかに……こごみさんには効果が無かったのでしょうか。というかむしろ私だけ? ゾンビだから?」
ずーんとうなだれるぞんべあちゃん。アンデッド系限定なのか。聖なるバリアミ○ーフォースじゃん。いや知らんけど。
「ま、まあ気を取り直して。そういえば俺、死霊術士とかいう職業なんだ。何かぞんべあちゃんの助けになれることがあるかも」
そういやそうだった。自称神様からの手紙に書いてあったけど死霊術士とかいう職業になったんだった。
ホラー趣味だから死霊術士…なんとまあ適当なハロワ対応。まあいいけど。
「死霊術士……アンデッド族を使役できる魔術師だと聞いたことがあります。つまり私を使役してあんなことやこんなことを」
「いやしねえよ。どうした急に」
思春期かよ。
とりあえず二人で湖側の出口へ行ってみることにした。死霊術士のスキル的なやつで封印を解いてミラ○フォース壊せるかもしれないし。
てか本当に俺は死霊術士なのかだろうか? 何かスキルとかも使えるのだろうか。
ステータスの見方も分からないんだよな…試しにさっき「ステータス表示!」とか言ってもなんも出なかった。
ついでにぞんべあちゃんに「えっなに急にこわ」みたいな顔で見られた。しにたい。俺もゾンビになろうかな。
「さて、戻ってきましたよっと。しっかし改めてみるとデカい湖だ……」
「この湖はグリム湖といって、この辺では1番大きな湖なんですよ。美味しいお魚もたくさん採れるんです」
森から出て湖を眺めていると、追いついたぞんべあちゃんが隣に来て教えてくれる。
ちなみにぞんべあちゃんの歩くスピードはちゃんとゾンビだった。
「へぇ~ここグリム湖っていうのか。今度よかったら魚の採り方を教えて、って、あれ、ぞんべあちゃん、普通に森から出れてるけど……?」
「任せてください! 魚採りは得意なので! ……えっ、あれ?」
驚いたようにさっきまでいた森を振り返り、ゆっくり目の前にある湖へ視線を向ける。
「出られた……やったあ……!! こごみさあん!!」
感極まって襲い掛かる、もとい抱き着いてくるぞんべあちゃん。ちょっとひんやりするゾンビ肌。
身長のわりに意外とあるんすね……てか力強いなこの子背骨が痛いマジでストップギブギブ無理無理無理!!
あとちょっと腐敗臭がいやしない嘘です。女の子やぞ。フローラルだよ。
「いや俺なんもしてないって。女の子が気軽に抱き着いちゃいかんよ。あの、もうちょっと、緩めていただけませんか」
「だって……だって…気づいたらこんなんなってて、森から出れなくて、ずっとひとりぼっちで……うう……びえええええ!!」
気付いたらゾンビになって、1人森を徘徊する日々。さぞかし寂しかったであろう。
しばらく抱き着かれたままになって彼女が泣き止むのを待った。役得? なんのことですか?
「…すいません。お恥ずかしいところをお見せしてしまい……」
「全然気にしなくて大丈夫。むしろこちらこそ……いやなんでもない。しかし、本当になんで出られたんだろう?」
俺が一緒にいたから? 死霊術士のスキルかなにかだろうか。ステータス見れないからわからん。
『あっやっと出られたの!』
……。
…………?
「ぞんべあちゃん、今なんか言った?」
「いえ、私はなにも…」
えっなんかめっちゃ耳元で声がしたんだけど。え、こわ。
「あっもしかしてあれか? 転生ものによくある自動音声でスキルとか説明してくれるやつ。
いやー表示できなくて困ってたんだよね。あのーステータスさん? ちょっと説明とかしてほしいんだけど」
『わたしメリィちゃん! 今アナタの後ろにいるの!』
……。
…………。
「……は?」
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