湧音砂音

第1話

「では最初に名前と年齢を確認させてもらいます。道能花実さん 年齢が26歳で間違い無いですか」

「はい」

「お仕事は何をしていますか」

「カフェのアルバイトとスーパーのアルバイトをしています。就職活動は今のところするつもりはありません」

「なるほど、しばらくはアルバイトで生活すると。何かそれに理由はありますか?」

「はい、それは今の自分の能力を考えた時にこの現代社会では非常に……」

「めんどくさいからー」「からー」「らー」「めんどくさいから?」


「い、いえ!そんな理由では無くてその、ジェンダーというかアグレッシブさというか……その決してめんどくさいと言った理由では無くて!」

「でも昨日就職活動について調べてたら言ってたじゃん、マナーだとか社会常識だとかしかも時給じゃなくて日給とかマジめんどいわってね」

「ねー」

「こ、こらっ!そういうプライベートな事は黙っててよ!ていうかまだ出てきちゃダメでしょう……」

「だってバックの中暗いし狭いんだもーん」「そー暗いの」「そーだよ」「そー」

「なるほど、ただ単に面倒なだけですか」「うう……はい」

「まあそれは置いといて……例の魔女とはそれですか?」

「あ、はい。ほんとはもう少し後に出てもらおうと思ったんですけど出てきちゃいましたね」

「まあまあ元気なのは良い事じゃ無いですか。で、この魔女とは出会った経緯は?」「あれは……不採用通知が来た夜ですね。ヤケになってチューハイを5缶ぐらい呑んだ私はなぜか家から飛び出してですね、人形が落ちてる!拾っちゃえ!的な感じで朝起きたら人形が喋っててそれが赤の魔女との出会いです」

「喋るのは普通に喋ってましたか」

「はい、めっちゃ普通に」

「ものすごーくびっくりしてたよー。この世の終わりだー!みたいに」

「……この世の終わり?」

「余計な事言わないの!」

「まあその反応も仕方ないと言えば仕方ないですかね。それで他の魔女とはどんな経緯で?」

「まあ、色々ですね。猫に咥えられてたり公園で遊んでた子供の帽子にいたり、帰宅したら窓際に座ってたりもありましたね。ってちょっと……みんなつねるのやめ……いたっ…」

「ははっ…恥ずかしいんだね。かわいいもんじゃないですか」

「かわい……いだけ……じゃ…ないんですよ…魔法だって……つか……だから……やめなさい」

「魔法……?そんな小さな姿で?」

「使えますよ……例えばこんな風に頬を指でつついたああああああああしびれれれるううuu uu uu uuたずげてええefeeexu!!!」「な、なるほど……てか見た目赤いのに電気系なんですね」

「そ、そうなんですよ。赤の子が電気、青の子が風、緑の子が闇、黄色の子が光、紫の子が水……って感じです」 

「……バラバラになりやがったのか。相変わらずクソったれ野郎が」

「今なんか言いませんでした?」

「いや、気のせいですよ。それでその小さな魔女達の名前はありますか?」

「はい、赤の子が……って自分でそれぐらい言いなさいよ!喋れるんだから!」「やだね!」「やだ!」「やだよ」「嫌だ」「……」

「さっきから思ってたんですけど、反抗期か何かですか……?」

「そんな事は無いですよ!おかしいなあ……普段だったらこんな事無いのに」

「まあいいでしょうそんな事は……それじゃ今度は魔女さんに質問しよっかな」

「えーなに?」

「魔女さんたちはこの女の人のことどう思ってるかな?好き?嫌い?」

「んー」

「好きっ!!!」「好き!」「好きかも」「……好き」

「へーそうなんだ。どんなとこが好きかなぁ?」

「んっとね……」ぺたっ(花実の頬に赤の手がくっついた音)

「うぎゃああああああっ?!?!」

「ほら、こんなところ」

「あ、反応が楽しいのね。で、それは赤の魔女さん以外もそうなのかな?」

「「「お前に話すかばーーっか!!!」」」

「……コイツら」

「ああ、やめて!抑えて抑えて!」

「……すいません、ではこれにて質問は終わりにさせていただきます。本日はありがとうございました」

「えっ……?!もう終わりですか!?もっと話したいことあったのに」

「終わりですよ。ほら、早く帰った帰った」

「はい……どうもありがとうございました」


……


花実が部屋を出ていった後に男の肩には一人の小さな魔女が乗っていた


「いいのか勝手に離れて」

「どうせ戻ってくる。それまでよ話は」



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