第5話「武闘将・服部王道」

「御屋形様、見つけましたね、ついに」


「あぁ、こんなところで出会うとはな」


「とりあえず、これで全員揃ったわね」


「王道、奴を追えるか?」


「御意、すでに煙巻隊けむまきたいが追っております」


綾野あやのも来ているのか?」


「はい、奴らがどこから来たのか、すぐに分かるでしょう」


「すぐに、か、ということは、若宮がアレを北に完成させたと?」


「はい、運用は初めてですが、若宮のことですから」


若宮紗冬わかみやしゃふか、相変わらず頼りがいのあるやつだな」


紗冬しゃふくんのアレってさ、もう超能力だよね、あそこまでいくと」


「いやいや、アレは、技術力、で御座いますよ。雪見さん」


「ふーん、その技術力ってやつはあたしには分からないからなぁ」


「しかし、御屋形様、これでますます」


「おう、面白くなってきたぞ......」


「では、楽田城がくでんじょうに向かいましょうか」


「ハッ!」



 ザッ......ザッ......ザッ......ザッ......ザッ......


 十数人になった一行は森を抜け、神雲家の前線基地、楽田城へと向かう。

 その道中で、月見と花見が神雲軍団について教えてくれた。


 服部王道はっとりおうどう

 神雲軍団の軍団長であり、八闘将はっとうしょうの一人、武闘将ぶとうしょうだ。

 2メートル近い身長に100キロを超える体重がある巨躯で、20キロの大戦鎚だいせんついを武器に使うため、対戦相手の顔は潰れるか、消えて無くなるか、だと言う。

 元の世界では有名なラグビー選手だったようだ。


「王道さんはヤバいね。めっちゃ強くて、めっちゃ優しくて、めっちゃ丁寧なんだよ!花見は王道さんがだぁぁぁい好きなんだぁぁぁ」


「武闘将は神雲家の武の象徴ですわ、そして、誰よりも御屋形様を御護り下さる御方です」


 王道は信三郎の側近中の側近だ。

 誰も知らない信三郎の頭の中を王道はもっとも理解している。

 そして王道と同じく、信三郎の側近はもう一人いる。


 渡貫源田わたぬきげんた

 副団長で槍闘将やりとうしょう、軍団の中でも軍師的な立ち位置だ。


「軍師って言ってもね、源ちゃんもかなりヤバいよぉ。あの槍攻撃は花見でも結構ヤバヤバだもんっ、てか最近源ちゃんに会ってないなぁ」


源田げんたさんは東大卒でとても優秀な方です。武も知も兼ね揃えた傑人ですわ」


 服部王道と渡貫源田、この二人が神雲軍団の指揮を執っている。

 この二人は軍団全体を統括しているため、直属の隊は持たず、信三郎配下の精鋭部隊である紫雲しうん親衛隊を率いている。

 この二人以外の闘将はそれぞれが隊を持ち、独自色を出している。


 但し、八闘将はちとうしょうは現在1つが空席のため、残り5人の闘将がいることになる。

 そのうちの一人が弓闘将ゆみとうしょう那賀澤ながさわ雪見だ。

 神雲軍団の弓隊の隊長である。


 雪見は月見の妹であり、花見の姉だ。

 那賀澤三姉妹は三人揃って戦国時代に来た。


「雪見はこっちに来てホント、すぐに強くなったよね~、ねぇ、月見ぃ」


「元々私たち三姉妹は全員が弓道をやっていたんです、その流れで」


「ねえねえコータロー、ほんとはね、月見のほうがつっよいんだよ、まじで!」


「やめなさい、花見、私は」


 月見の表情が曇る。


「お姉ちゃんはあたしより強いよ、確実にね。但し、人をてたらの話だけどね!」


 いつの間にか横に来た雪見がそう言った。


「コータロー、月見はね、人を殺せないの」


 月見は何もしゃべらない……。


「人を殺せない者は、ここには必要ないのよ、孝太郎とか言ったわね、あなたは、人を、殺せるかしら?ふふふ」


 戦国時代、必要とされるチカラは現代社会とは全く異なる。

 人を殺す能力を求められているのだ。


 孝太郎は背筋が冷たくなるのを感じた。


(ぼ、僕は、人を......、殺せるのだろうか)



[つづく]

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