第35話 葡萄その3
「あ、んっ、や・・・」
必死に足を閉ざそうとするけれど、それよりも知晃の指がその場所に触れる方が僅かに早かった。
ショーツの上からぐにゅりと指を沈められて、ぞくっと背筋を電流が駆け抜ける。
「んっ・・・」
「あれ、もう濡れてる?」
指を動かしてぬめりを確かめた知晃が、低く息を吐いた。
あやすように内ももを撫でられて、堪らなくなって彼の肩に縋りつく。
夜の寝室でならどうにか恥ずかしさを堪えることが出来るけれど、風鈴の音が響く夕暮れ時の縁側で肌を暴かれる状況に思考が追い付かない。
それなのに、昨夜の名残を思い出した身体は知晃の指に淫らな反応を返した。
くちゅりと響いた水音に、知晃が首筋に額を擦りつけた音々の背中を優しく撫でる。
「早く帰って来て良かったわ」
そのままショーツを避けてゆっくりと指が沈められた。
ぬかるみを擽って溢れる蜜を掬ったそれが、花びらを甘やかしてくる。
熾火のように広がっていく甘痒い感覚は、昨夜何度も経験したもの。
覚えている場所にもう一度熱を貰いたくて、腰が勝手に揺れてしまう。
「おまえ、こんな状態で我慢できねぇよな?」
告白に笑った知晃が、ご褒美のようにそこを擦り立てた。
「っふ・・・っっ~~っん」
飲み込んだ指を締め付けてあっさりと熱を弾けさせる。
駆け上がった階は、昨日よりもずっと低いものなのに暴れる鼓動の激しさは昨日以上。
背中に感じる夕日の熱と、埋め込まれた知晃の節ばった指の甘さに溺れそうになる。
抱き寄せた音々の身体を膝の上に下ろした知晃が、浴衣の襟元に鼻先を突っ込んできた。
ぐりぐりと広げるように頬を擦りつけて、緩んだそれを遠慮なしに引っ張る。
ほんの一瞬胸元が涼しくなったと思ったら、首筋にキスが落ちた。
ちゅうっと強く吸いつかれて、熱の走った場所を悟っていけないと身を捩る。
「なに?」
「だめ・・・痕」
襟元から覗く場所には絶対に唇の痕を残さないでとお願いしているのに。
「ギリギリ見えねぇよ。心配なら、明日店閉めろ」
あっさり返した知晃が、もう一度そこに吸いついてくる。
おまけのように舌で柔らかい皮膚を舐められて、ぞわりと走った愉悦に息を飲む。
どこをどう触ったら音々が悦ぶのか知り尽くしているのだ、彼は。
「お、横暴っ」
これでもお嫁に来てから一日も自己都合でお休みを取った事が無いのに。
多少具合が悪くても店に立つ音々を強引に母屋に連れ戻して、閉店プレートをぶら下げるのはいつも知晃の役目だ。
「一日二日閉めても家計は苦しくなんねぇだろ」
一日二日どころか、この先一生お店を開けなくても十分食べていけるだけの貯蓄と財産のある知晃である。
音々が生真面目に毎朝小梅屋の店先を掃き掃除しているのを見るたびに、知晃が適当でいい、と本気で言っている事も知っている。
が、折角大好きなお店の本物の看板娘兼嫁になれたのだから、出来る限り店に立ちたい。
「そゆ問題じゃ・・・あ、ゃ、っっふ・・・っ」
詰り声を上げた音々をあやすように胸元にキスを落とした知晃が、一度引き戻した指をもう一度を押し込んできた。
狭い隘路をぐにぐにと押し捏ねながら、昨夜の記憶をたどるように愛される。
指を遊ばせた知晃が折り曲げた指の腹で柔らかい壁を擦り上げた。
「~っン、んっ」
熟れた媚肉が震えて、頭の中が真っ白になる。
遠くで聞こえる警告音は、飛び込んだら戻れない事を示していた。
それでも飛び込まずにはいられない。
だってその先がどうしようもないほど甘くて心地よい事を知っているから。
かき混ぜる指をそのままに、知晃が耳たぶを甘噛みして来た。
耳孔をぺろりと舌でつつかれて、一瞬腰を浮かせてしまう。
それを抱えて引き落とした知晃が、ぐうっと指を捻じ込んできた。
「あーもう奥トロットロ・・・・・・これ、どーすんだ?」
「し、知らない・・・」
言えるわけがない。
唇を引き結んでこみ上げてくる嬌声をどうにか飲み込む。
気持ちいい場所で指を遊ばせた知晃が、蕩けたそこから指を引き戻した。
「ふーん・・・じゃあ、指、抜いてもいい?」
「~~っだめ」
このまま放置されたら自分がどうなってしまうのか分からない。
熱の鎮め方を知らない音々は、知晃に縋って甘えるよりほかにない。
首に腕を回してぎゅうぎゅう抱き着いたら、耳元で大きく息を吐いた知晃が指を引き抜いた。
「ん、や・・・っ」
反射的に腰を捩ってむずがる音々を抱き上げて、知晃がゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、続きは部屋な」
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