第3話 エリートスパイオカン 拘束される 後編
ハダカの二人が共に果てて、ベッドで抱き合う。
「はあ。はあ」
男を抱きしめながら、可奈子は久々のセックスに酔いしれる。
口も含め、男と三回も致した。
最後は結局、生出しも受け入れて。しかも、自分から。
男の体液が、可奈子の中に満たされているのがわかる。
もう三六なので、まず着床はしないだろう。
万が一のために、事前にピルも飲んでいる。
だが、もう一回と言われたら。
「すごいな。こんなに燃え上がる性交渉は、久しぶりだ」
後戯で可奈子の髪をなでながら、男は満足げに言う。
「さて、もう一ラウンドといくか」
無尽蔵の性欲と体力に、いよいよ可奈子も溺れそうになった。
そのとき、下の方で爆発音が起きる。
「何事だ!?」
立ち上がろうとした男を、可奈子は腕力で押さえつけた。
「なっ」
何が起きたかわからないのか、男は可奈子を睨む。
「手入れだ!」
男の部下らしき男性が、確認もせず入ってくる。
こちらの様子を見てギョッとしたが、すぐに立ち直った。
「なんだ。ノックくら――」
額に針を打ち込まれて、部下が倒れ込む。
「なに、武器なんてどこにも!」
「あるで」
可奈子が発射したのは、麻酔針だ。
バニースーツのヌーブラに、仕込んでおいたのである。
可奈子の生体反応でしか、打ち出すことはできない。
仲間である科学者「
このヌーブラを仕込むため、特製のスーツが必要だったのだ。
「母乳は出えへんけどな。美しいバラには棘があるって、小学校で習わんかったか?」
「クソが」
「クソはあんたや!」
ヌーブラ麻酔針を、直接男に打ち出そうとした。
だが、筆で受け止められる。
「狙いは、初めから俺か!」
「せやで。一番権力があって強いあんたさえセックスで足止めしとったら、後は雑魚や。今頃ウチの仲間が、全部片付けてくれてるはずや」
そう。可奈子の役目はオトリ。
自分の肢体で釘付けにしておけば、たやすく抑え込めると思ったのだ。
ヌーブラを揉まずに外されたのは、計算外だったが。
ベッドの拘束も、バニースーツのボタンに仕込んだテグスで解いていた。
銃から弾を抜くことができたのは、この高性能テグスのおかげである。
「ちい!」
予想外の腕力で抵抗され、可奈子はムリヤリひきはがされた。
その拍子に、スーツを着直す。
「くそが!」
ベッドに隠し持っていた銃で、男は可奈子を撃つ。
しかし、弾丸が出ない。
「残念。タマは空にしたったで。あんたのキンタ●も含めて」
可奈子は舌を出す。
「やろう!」
今度は、格闘戦にもつれこむ。
右フック、左のボディを避けて、同時にノドへ指を当てた。
「があ!」
身体を掴んで、無理やり腹に膝蹴りを浴びせてくる。
「おおおお!」
可奈子はタックルの状態になり、男をそのまま鏡台に叩きつけた。
「ふんふんふん!」
鼻めがけて、何度もパンチを叩き込む。
「クソ女、しねえ!」
男が、クローゼットに逃げ込み、ロケランを持ち出した。
「ううーわ。あかん!」
可奈子は窓を突き破って飛ぶ。
ロケットが発射されて、可奈子もふっとばされた。
爆風で、反対側のビルに激突する。
落下しスレスレで、なんらかのクッションが働く。
「IQ《イクー》かいな!」
白衣を着た合法ロリ科学者「IQ」が、バギーで駆けつけてくれた。
可奈子が歩道に落ちる直前で、クッションを用意してくれたのだ。
「可奈子さん、これを!」
IQが可奈子に、ミサイルランチャーを持たせる。
「ええんか?」
「あのビルには、もう誰もいません。思い切ってやっちゃって!」
「よっしゃ!」
可奈子は、ミサイルポッドを打ち出す。
ミサイルが被弾し、ビルが完全に倒壊した。
ガレキの下から、可奈子は男を引きずり出す。
あれだけの爆風だったが、ミサイルはかろうじて男を避けたのである。
ロケットだったら殺していただろう。それで、男から情報も聞き出せなかった。
夫を殺した人物が誰だったのかも、闇の中になっていたかもしれない。
「出所したら、またデートしてくれるか?」
「道具に頼るやつは、ごめんや」
仲間が、男を連行していった。
「……おかん、なにしてんねんな?」
歩道に、息子が立っていた。
「ああ、パートや。パート」
バニースーツを見られて、可奈子は一気に恥ずかしくなってしまう。
「ミサイル持ってパートなん?」
「これは爆竹や」
「ビル吹っ飛んでるやん」
「元々や」
IQに、ミサイルランチャーを回収してもらった。
「あの、オカ……母は、うまくやってるんですか?」
「とっても働き者で、みんなの人気なんですよ~」
息子からの質問に、IQはしれっとウソをつく。
「ではわたしは、片付けがありますので。可奈子さんはそのまま上がってください」
バニー姿の可奈子に、IQは自分の白衣を着せた。
「図書館の帰りか?」
「せや。おかん、パーマ行ってくるっていうてたやん」
「行ってきたでパーマは」
「服は?」
「
「なんのパートよ? スーパーでバニーガール?」
「今年の干支やさかい!」
瞬時にウソをついてごまかす。
「パーマは……してきてんな?」
「い、行ったで」
「パンチパーマにしてきたん?」
「え! パン……あーっ!?」
可奈子の頭が、爆風でパンチパーマになっていた。
(おわり)
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