第3話 私の恩返し
「先輩が好きです!私と付き合ってください!!!」
放課後、何気なく校内を歩いて居ると、蓮夜先輩が告白されてる場面に出くわした……
「ぅわぁ…凄いシーンに…って?」
ダダダと…少し離れた所から覗いて居た人が走り去って行くのが見えて、その方向を見ていたら、風に靡く綺麗な髪…
「彩先輩?」
多分、間違えて無いよね‥‥?
「あぁ…えっと、気持ちは嬉しいんだけど…俺は好きな人が居るんだ。だから、ごめん…君とは付き合えない。」
断った!……そりゃそうだよね〜、先輩は彩先輩が好きなんだし…
「ぅぅ…自分で考えておいてダメージ受けた……それは兎も角、先輩の事、追いかけないと……」
私は彩先輩が走り去った方向に向けて最初はこっそりと歩いて、距離を空けてから走り出した。
……………………………………………………………
はぁ、はぁ、はぁ…何処?!追いかけたけど姿が見えないよぉ〜…
「身体能力の差が……彩先輩凄すぎです……知ってましたけど!!」
帰っては居ないと思うし、会って何を話せばも良いかも分からないけど……それでも!
何となく、本当に何となく空を見上げた……学校の屋上も見えて……居たっ!!!
「唯、立って遠くを見てるだけなのに姿が絵になるって……これだから美人は!!!」
私は急いで校内に戻って階段を一気に駆け上がる。
屋上の扉を遠慮無く開け放てばバンっ!と大きな音が鳴って、駆け込んだ私を驚いた顔で見てる、彩先輩に、私は一言だけ告げる。
「やっと、見付けて追い付きました!」
…………………………………………………………
「つ、司?!どうしたの!?そんなに慌てて!!」
「はぁ、はぁ…先輩を探してたんです!」
「私を?何か急用?てか、何処にも行かないから先ずは息を整えて!!」
「は、はい‥‥ふぅ…もう大丈夫です。」
「そっか。それでどうしたの?私を探してたって言ってたけど‥‥」
彩先輩が私を不思議そうに見つめてくる。
改めて思うけど‥‥この人、本当に同じ中学生なの?サラサラで綺麗な長い髪、スッと通った鼻筋、一つ上とは思えない程の色気のある唇、大きくて綺麗で強い意志を感じる綺麗な瞳と長いまつげ‥‥顔のパーツが全て整っていて誰もが振り返って仕舞う様な容姿、周りの全てを癒して仕舞いそうな雰囲気、それに‥‥大人と子供の両方を満たす整ったスタイル‥‥何よりも綺麗で透き通って何時までも聞いて居たいと思う様な声‥‥本当にこの人は私の一つ上の年齢なんだろうか?と思ってしまう様な人だ。
「司‥‥?どうしたの?」
「いえ‥‥あのですね‥‥先輩が走り去ったのが見えてそれで‥‥蓮夜先輩の‥‥その‥‥」
「あ~‥‥そっか‥‥あそこに居たのって司だったんだ。変な所見られちゃったなぁ‥‥はぁ‥‥」
「そ、その!あれですよ!蓮夜先輩は!断ってましたよ!!!!」
「そう‥‥そっか‥‥はぁぁ‥‥」
「彩先輩?」
「ねぇ…司…」
「は、はい!何ですか‥‥?」
私の答えの後、彩先輩は一人歩きだして屋上の手摺りまで歩いて行く‥‥私もその後ろを追いかける。
私が隣に並んだのを確認した彩先輩が話し始めた。
「あのね‥‥蓮夜って凄くモテるの‥‥」
「はい‥‥それは分かりますけど‥‥?」
「だよね。司も好きだもんね。」
「うぇぇ?!///な、何で知って?!////」
「ふふっ。分かるよ、だって私も同じだもん。私も昔から蓮夜が好き‥‥大好き‥‥」
「はぃ‥‥それは見てて分かりますけど‥‥彩先輩って誰にでも優しいですけど、蓮夜先輩以外の男子には距離おいてますもんね。」
「うん。結局さ、皆が私を好きだって付き合いたいって言ってくるのって、アクセサリーの為なんだよね。」
「アクセサリー?」
「そう、勿論だけど全員が全員そうだとは言わないけど殆どの人はそうなの。俺はこんな綺麗で可愛くて皆に人気のある女と付き合ってるんだぜ?凄いだろ?って言うね。」
それは‥‥確かにその認識ならアクセサリーって言えるけど‥‥
「まぁ‥‥年齢を考えたら可笑しくは無いんだけど‥‥一種のステータスの為ね。」
「ど、どう言う事ですか?」
「えーっと‥‥例えばだけどテレビで芸能人の結婚報告とか交際報告とかあるでしょ?あれの中でさ、確かに美男美女の組み合わせもあるけど、正直な所、美女と野獣の組み合わせも多いじゃない?」
「はい‥‥言われてみれば確かに‥‥何でこの俳優さんがこの女性と?とかこの女優さんがこの人と?とかって思う事はあります。」
「それってね?お付き合いと結婚は別の問題だからなの。お付き合いの場合はそこまで大きな責任って無いじゃない?」
「えっと‥‥何となくは分かりますけど‥‥」
「うん。それで結婚ってなると残りの人生をその人と一緒に歩いて行く相手でしょ?それってさ単に容姿が良い相手だからって出来る訳じゃ無いってのは分かる?」
「それは分かります。」
「一緒に生活する、子供が出来たら子供の養育もするそうなったら何よりも大切なのってお金じゃない?」
「つまり‥‥安定した生活を出来る相手を選ぶって事ですか?」
「全員が全員そうだとは言わないけど、中にはそう言う人も居るのが現実でしょ?勿論、それは大切な事だから否定するつもりは無いよ。でも‥‥私はさ、確かにお金は大切だと思うけど、それ以上に心から愛せる人と結婚したい。たとえ貧乏でも一緒に工夫して、一緒に困難を乗り越えて、一緒に手を繋いで歩いて行ける人と結婚したい。」
「そう‥‥ですね‥‥それは私も同じです。」
「うん、結婚って言ったけど‥‥今からそんな先の事を考えてる訳じゃ無くて、そう言うのも込みで考えたら、私は蓮夜以外は考えられないの。私は蓮夜が本当に好き、心の底から愛おしい‥‥蓮夜の為ならどんな事だって苦にはならないし、蓮夜が私の作った物を美味しいって言ってくれるのが本当に嬉しくて、楽しくて、幸せなんだ。」
彩音先輩の心‥‥人に寄っては、重いと感じるだろうけど‥‥蓮夜先輩と彩音先輩はずっと一緒に過ごして来て、一緒に成長してきた‥‥だからこそ彩音先輩の心の一番の席は今までもこれからもずっと‥‥ずっと、蓮夜先輩で埋まって居るんだろう‥‥それが彩音先輩の想いと思いなんだって‥‥そして蓮夜先輩もきっと同じなんだろうと私は感じた。
だって‥‥そうじゃなきゃ、傍から見たら振り回されてる様にしか見えない蓮夜先輩の顔が常に笑顔な訳は無いんだ。
だから…それなら…私に出来るのは…二人の応援…だと思う…それが私に出来る恩返しだ。
「蓮夜は……私の事は女の子として見ては居ないのかな……?」
「そんな訳無いですよ!!絶対に有り得ません!だって!だって!彩先輩と居る時の蓮夜先輩は何時も何時も!楽しそうな笑顔です!彩先輩にどれだけ振り回されても、仕方無いなぁ〜って顔しながらも笑顔ですもん!だから!だから!」
「そっかっ。ありがとね?司……でも、振り回すってどう言う意味かなぁ〜?」
あっ!つい思ってる事出ちゃった!!
「いや!違いますよ?!彩先輩に振り回されて大変だなぁ〜とか思ってませんよ?!」
「そんなに慌てなくてもっ。別に怒ってないよ〜。」
そう言った先輩は私に向き直って優しく抱き締めてくれる。
「ありがとね。情けない所見せちゃった。」
「そ、そんな!情けないなんて事無いです。先輩も私達と同じで好きな人の事で一喜一憂するんだなぁ〜って…そんな部分も見せて貰えて嬉しいなって思ってるので……」
「うんっ。ありがとっ。」
「あ、あの?先輩?何か強く…」
彩先輩の抱き締める力が強くなってる!?やっぱり怒ってますよね?!さっきの怒ってますよね?!
「やっぱりさっきの怒って…」
「怒ってないよ?でも……お・し・お・きっ!」
「……に"ゃゃゃゃゃ!折れる!折れちゃいます!!出ちゃ駄目なのが出ちゃうぅぅぅぅ!!」
屋上に私の悲鳴が響き渡った……
…………………………………………………………
「はぁ…酷い目にあった……」
「司が悪いんです!」
「ゴメンナサイ……ところで告白しないんですか?」
「ぅ…だって……振られたら……」
「何言ってるんですかぁ〜……誰がどう見てもお互いに想い合ってるじゃ無いですか……」
「わ、分かんないじゃん!もし振られたら今みたいに出来なくなるし…怖いよ……」
「それは…分かりますけど…でも誰かに取れらたりしたらどうするんですか…?」
「泣く…思いっ切り泣く…この世の終わりって位に泣く…」
「だったら…「でも!だって!うぅぅ……怖いんだよ……」……はぁぁ…分かりました!私に任せてください!」
「任せるって……?」
「良いですから!私が何とかします!任せてください!!!」
全く!この人は!誰がどう見ても両思いだってのに!
彩先輩が出来ないなら蓮夜先輩に動いてもらう!丁度良い物もあるし!!
私を不安げに見つめてくる先輩を私は強く見つめ返す、私だって蓮夜先輩が好きだ!それでも!恩人の二人が仲良くしてるのはもっと好きだから、二人が先に進めないなら私が背中を押す!せめて…それくらいはしないと、私は二人に恩返しも出来ない!!
だから……待っててくださいね?彩先輩。
…………………………………………………………
「それで?話って何なんだ?司。こんなに改まって。」
私は今、蓮夜先輩のお家にお邪魔している。
最初は外でと思ったけど、外だと誰かに見られたり聞かれたりするかも知れないから、放課後に無理言って先輩のお家にお邪魔させてもらってる。
「時間も時間なので、本題を話しますね。先輩は、彩音先輩の事をどう思ってるんですか?!」
私の質問に先輩は珍しく顔を真っ赤にした。これだけで答えは分かった様なものだけど……それでも聞かないとはっきりとはしないから、私は先輩を睨みつける様に見つめ続けた。
「はぃ…?いきなり何を?彩音の事って…それは…まぁ…その…な…?」
「何ですか!ハッキリしてください!」
「ハッキリと言われても…そりゃまぁ…大切な幼馴染だし…何時も世話になってて悪いなぁとは思うけど…でも、嬉しいのも間違いないし…」
「だーかーらー!好きなんですか!!??嫌いなんですか!!??勿論!女の子としてですよ!!!」
「そ、それは‥‥そりゃ勿論‥‥」
「勿論なんですか?!はっきりしてください!」
「あ~もうっ!好きに決まってるだろ!何年一緒に居ると思ってんだ!とっくに彩音に胃袋も何もかも掴まれてるつーの!‥‥たく、これで満足か‥‥?」
「はい、満足です!と言う訳で‥‥先輩にこれを進呈しますので、彩先輩をデートに誘って告白してくださいっ!」
私は蓮夜先輩に水族館のチケットを2枚差し出すと、チケットを見ながらも驚いてる。
「こ、告白?!何でそうなる?!」
「先輩は何時まで彩先輩を待たせるつもりですか!!!この間の告白だって彩先輩に見られてますよ!!!!」
「えぇぇぇぇぇ?!何で?!」
「偶々だったみたいですけど‥‥先輩はショック受けたみたいで走って行きましたよ‥‥」
「そうか‥‥そう言う事もあるか‥‥彩音は何か言ってたか?」
「特には‥‥ただ、蓮夜ってモテるんだよねと、自分の事を女の子と見てないのかなって‥‥そう言ってました‥‥」
「そんな事ある訳無いだろう‥‥はぁ‥‥あのな、俺だって彩音と関係を進めたいって思ってない訳じゃ無いんだ。」
蓮夜先輩は、ゆっくりと話し始めるのを私は静かに聞き続ける。
「俺だって‥‥彩音が他の男に告白されてるのを何度も見てるよ‥‥だからこのままだと他の男に取られるかも知れないってのは分かってる。」
「だったらっ!」
「だけど‥‥それ以上に拒否された時の事をどうしても考えてしまうんだ。怖いんだよ‥‥彩音との関係が悪い方向に変わる事が‥‥」
はぁぁぁぁぁぁぁ‥‥この二人は本当に‥‥っ!
「せ・ん・ぱ・いっ!!!馬鹿な事考えてないで自信持って告白してください!言っておきますけど!!!」
「お。おう‥‥な、何だ‥‥?」
「先輩は勘違いしてます!幾ら幼馴染だと言っても好きでもない相手を毎朝起こしたりしません!毎日ご飯を作ってくれたりしません!誰が好き好んで興味も無い男の世話を焼く訳無いですよ!!!!良いですか!!!だから馬鹿な事考えてないで、告白しなさい!!!」
「は、はい‥‥分かりました‥‥」
全くっ!この人達!本当にもう!!!
「蓮夜先輩‥‥私はお二人が好きです。先輩としてもお友達としてもだいすきです。だからこそ、お二人を見てると本当にヤキモキしちゃって‥‥ですからお二人の恋人になった姿を見せてください。生意気な事ばかり言ってすいませんでした。」
頭を確りと下げて恩人の先輩に謝る。
私だって蓮夜先輩が好きだけど、それ以上に二人が一緒に笑って居るのが好きだから!
だから!お二人の背中を押すのが私の‥‥恩返しっ!
「司、ありがとう。ちょっと勇気出してみるわ。」
「はいっ!絶対に上手く行きますから頑張ってください!」
ちょっと照れくさそうな蓮夜先輩の顔は‥‥何時もの格好良い姿とは違って可愛いって感じる姿だった。
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