第25話 少年期 出生の秘密
シオンの誕生会を兼ねた夕食は普段よりも数倍豪華だった。食堂のテーブル一杯に料理が並べられ、明らかに家族だけでは到底食べつくせない品数だ。
「すげぇな!」
「美味しそうです」
ブルーノとリアは美味しそうな料理に目を輝かせ、
「……数が多い」
「美味しそうだけど……」
ミヒャエルとティアナは品数の多さに驚き、
「……多いな」
カールは小さく呟き、そんなみんなの様子を見ていたアデリナは「あらあらー、賑やかね」と一人平常運転だった。
珍しく表にきて最初に料理の説明をしてくれた料理長曰く、「シオン様の誕生日ということもあって張り切ったらこうなっちゃいました!」とかわい子ぶっていたが、スキンヘッドに屈強なガタイ、おまけに右目に傷跡が残る顔でそんなことを言われても反応に困ってしまう。珍しくアルベルトが頭を抱え「後で話があります」と料理長に伝えていたけど後でフォローしておこう。
そんなこんなでシオンの誕生会はつつがなく終わり、一行は談話室に移った。木目調の大きなテーブルを挟んで各々座り、エマが紅茶を持ってきて去ったのを確認してからカールがゆっくりと口を開いた。
「まずはシオンのスキルについて聞かせてもらおうか」
「シオン、スキルの用紙を見えるようにしてくれる?」
ティアナの指示に従いシオンは自身の用紙を開き、ランドルフに教えてもらったスキル部分を秘匿にする魔法を解除する。
カールは用紙に目を通していく。
「……なるほど、確かにこれは誰彼構わず見せない方がいいだろう。ブルーノ、後日ランドルフ司祭にお礼の品を持っていくように」
「わかった」
お礼とは要は寄付のことだ。それだけあの時ランドルフ司祭が秘匿にしてくれたことが重要だったか思い知らされる。
「シオン、分かっていると思うが、家族以外、使用人たちにもあまり公言しないように」
「わかりました」
「ならばいい、……いいスキルを賜ったがそれに奢ることなく鍛錬を続けなさい」
「はい」
「大丈夫だよ親父、シオンはこんなちっさいときからずっと努力してきてるんだからよ」
ブルーノが手で高さを表すがその低さは犬や猫ぐらいで明らかに人の背ではない。
「ブルーノ、シオンがそんな小さいときは赤ちゃんの時ぐらいだよ」
「わかってるよ、例えだよ例え。ともかく親父が心配しているようなことは絶対にない」
「そうねー、シオンは頑張り屋さんだからー。ちっちゃいときから手がかからなかったし。もっとママに甘えてくれても良かったんだけどねー」
シオンは背中がむずがゆくなり顔をしてに向ける。
「シオン、照れてるの?」
「そんなことないです」
両脇に座っていたティアナにからかわれシオンの耳が赤くなる。
「照れてるシオンお兄さまかわいいです」
「リアまで」
「ごめんなさいシオンお兄さま。でも事実ですから」
嬉しそうに笑っているリアを見ると怒るに怒れない。
「相変わらずティアナとリアはシオンにぞっこんねー」
そんな様子をアデリナが微笑ましそうに眺める。
「はい、リアは一生シオンお兄さまと一緒にいるって約束してますから」
ふふんと鼻を鳴らしながらリアが胸を張る。
「私もシオンの傍にいるつもりですから」
ティアナも対抗するようにシオンの腕に抱き着く。
「あらあら、いいわねー」
一方シオンはブルーノに努力を認められてることや、リアと一生一緒にいる約束をしたこと、ティアナに腕を抱かれて感じる柔らかい感触などで頭が一杯一杯になってショート寸前になっていた。
「……んん」
カールが咳ばらいをして一同の視線がカールに集まる。
「そろそろ本題に入ろう」
たった一言で場の空気が一気に引き締まった。
「前々からシオンが12歳の誕生日を迎えたら伝えようとアデリナと決めていた、聡いお前はもう気づいていると思うが……」
カールの鋭い眼差しがまっすぐにシオンを捉えた。その視線は普段の伯爵としてのカールとは何処か違い、鋭さの中に優しさがあった。シオンは臆することなくカールの眼差しを二つの瞳でしっかりと受け止める。
「シオン、お前は私とアデリナの本当の息子ではない」
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