第27話 To the witch of undeath

ラクロエ 北 デムヴェルド山脈

俺達は何とかフィルビスごと移動し

アリスラさんを含め3人で反抗戦術を立てるのだった


俺は眠れず

フィルビスから外に出る

「ステラさん」

外に出るとステラさんが空を見ていた

「楽郎 本当に良かったの?

彼らはあなたと同じ転生者なんでしょう」

「あいつらがいくら正しくても

どんだけ素晴らしい世界を作っても

あなたがいないと俺には意味がないから」

「...」

「それに

個人的にあいつが嫌いなんですよ」

「ふふっ 

いつもの楽郎で安心した」

ステラさんと手を繋ぐ

少し手が冷たい

「今度こそあいつらを倒しましょう」

「でも今の私達じゃ難しい

それは分かってるんでしょう?」

「もっと武装を強化して

俺自身も強くならないと」

「いえ それだけじゃだめよ

まずは魔術師の数的有利を覆す」

「? 

強い魔術師に協力してもらうんですか?」

「えぇ

1人心当たりがあるわ

不本意だけど楽郎が好きそうな魔女よ」


翌日

「よし スサノオとヴィスターブのメンテはばっちりよ

後は奴らを倒すだけだね」

「いえ 

まずは首都に」

「ど どういうことよ!」

「この国で最高齢の魔女に会いに行く」

「な 楽郎の新しい女にするってこと?

私とあんたじゃ足りないってか

ったくたらしだね」

「それは難しいでしょうね

でも彼女の弟子達んら楽郎に力を貸してくれる魔女がいるはず」

「分かったよ

要はこの年増たらしを使って

戦力強化ってわけだね」

そんな人の悪い会話をしつつ

ステラさんとアリスラさんの表情が徐々に明るくなっていく


数日後

アリスラさんの方位磁石とステラさんの記憶を頼りに

俺たちは首都近郊に到着した

魔女の目撃情報は首都の近郊に集中している

まずは首都近郊の街で俺たちが今一番行きやすい街から捜索することにした


首都近郊 ガルヴェラ

首都に近いとはいえ森林と湖に囲まれた幻想的な街だ

「ここに最高齢の魔女が」

「そうは見えないけどね

衛兵の数も少ないし いかにも観光地だし」

首都から観光に来てるらしく人通りは多い

ルクルスよりは近代的な魔具<ガイスト>や電灯で飾られている

「ステラ 疲れたわ

ずっと荒野を横断したんだよ

流石に休ませてくれ」

俺たちは街道に近づかないように荒野を渡ってきた

ほぼ数日間 アリスラさんが寝ずにフィルビスを操縦してきたので疲労が溜まっていた

「ありがとう アリスラ

フィルビスで休んでて」

「あいよ それじゃあ zZZZZ」

アリスラさんが床に寝転がると一瞬で眠る

「行きましょう 楽郎

時の魔女 マルギス・トラスパース・レギスファルス」

「名前長いですね」

「私よりは短いわ

楽郎も噛まずに言えるんじゃない? ふふっ」

「うっ」

最初に会った時 一回噛んだんだよな

ステラさんのフルネーム長いから

「ステラ・レッドスティアーナ・ベルフェガーダ・ドレスティア

ちゃんと言えますよ」

「そうね 楽郎のファミリーネームも長くなるわね」

「そうですね」

ステラさんと結婚したら俺の名前すんごい長くなるな

俺こっちの世界だと戸籍はステラさんのに乗っかるしかないし

そこだけは少し憂鬱だ


首都近郊 ガルヴェラ 地下

結局 街中には怪しい場所は見当たらず

俺とステラさんは地下遺跡があるとされる地下に潜った

「どこかに痕跡でも見つかれば」

俺は光魔術を発動しながら地下遺跡を進んでいく

観光客は入れないような崩落箇所を乗り越えながら進んでいく

「見つけたわ」

ステラさんが遺跡の文様を指差す

「それは」

巨大な円の中に三角を組み合わせた文様が刻まれている

「楽郎 光の魔素を流し込んでみて」

そっと文様に手を触れて魔素を流し込む

「これは」

門が開く

物理的な門じゃない

これは4大古代魔術の1つ空間変異<サティロスト>!!!

「とんでもない術式ね

楽郎 一応構えておいて」

俺とステラさんは発生した空間の歪みに飲み込まれる


幻想街 ヘイグヴェル

俺はいつの間にか十字路の真ん中に立っていた

酸っぱいような匂いが十字路の花壇の方から香ってくる

それにあたりを見回すとルクルスに似た古い建物が並んでいる

「ここみたいね」

ステラさんが惑星魔術を構えてあたりを警戒する

「人がいない

まるで無人の街だ」

「ついに来たか 夜明けの明星!!!」

少年が建物の屋根から俺たちを見下ろしていた

「とぉっ!!」

スタッと少年が屋根から飛び降りて着地する

着地の瞬間に風の魔術を使ったのかやけに軽やかだ

「えっと 誰?」

俺は刀を収める

「とぼけるな!

夜明けの明星め!」

「いや違うって

俺たちはただの魔術師だ」

「嘘つけ!!

なら何で武器構えてるんだ!」

「やめな」

地面の底から響き渡るような声が届く

「ババア!!

こいつら絶対危ないよ!」

「誰がババアだ!!」

見た目は40代程度の女性がゴスッと少年の頭をぶっ叩く

黒髪に底を感じさせない瞳

それに何より 俺やステラさんを軽く上回る圧倒的な魔素量

「あなたが魔女マルギス ですね」

「あぁ そうさ」

スゥとマルギスさんが空中に浮かぶ

魔具<ガイスト>を使ったり魔術を使った形跡がない

「どうしたんだい?

魔具<ガイスト>ならこの街には売ってないよ

魔術の修行なら今はもっといい設備があるだろう?」

「あなた達の魔術師の力を借りたい」

ステラさんが歩み出る

「残念だけど人売りはやらないんでね

あんたらが何者だろうと仲間は売らない

あたし達はここで古代魔術を高めて魔具<ガイスト>に応用する研究を勧めてる

世間との繋がりはそれだけで十分だよ」

「...そうですか

せめて話を聞いてもらうことは」

マルギスさんがドッととんでもない魔素量を開放する

「っ!!!」

体重が何倍にもなったような感じすらある

だがせめて話ぐらいは聞いてもらおう

「はぁっ!!!」

全身に光の魔素を纏わせて圧力を跳ね返す

「―――いい度胸だ

久々の客だしね

私達の城に案内するよ」

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