第8話To the next city and dungeon
翌日 午後
「これ 最初から使えばもっと早く着いたんじゃ」
「いいじゃない 旅は経過を楽しむものでしょ」
俺はステラさんの惑星魔術の星に乗って飛んでいた
普通に速い
40km/hぐらいは出てるんじゃないか 飛んでるから坂とか関係ないし
風が気持ちいいな
「見えたわ」
「あれが...
えっと何でしたっけ」
「―――名前忘れたのね
ディヴソルム
工業と土の街よ」
街全体が赤いレンガの壁で覆われ街のすべての建物が焦げ茶色系の色で統一されている
あれが次の街
「それじゃあ ショッピングよっ!!」
「? ショッピング?」
工業と土の街 ディヴソルム 職人街
「す すげぇ」
街の中心から離れているにも関わらず
店舗がキラキラしてる上にいちいち装飾が細かい
店の壁面が基本ガラス張り
さらにガラスの端の方にすべて細かい装飾
壁にも凝った装飾が施されている
街全体が似たような色の建物しかないからこういうシンボルとか装飾で差別化してるのか
「家電 いや魔具なのはわかるんだけど」
どこを見渡しても魔具<ガイスト>が並んでいる
洗濯機みたいに服洗うやつとかオーブンまで
ほんと至れり尽くせりといった感じだ
文明レベル こっちの世界の方が高くないですかね
家電は忙しい時にやたら壊れるし
「旅といえばまずは戦闘用の魔具<ガイスト>よね!」
ステラさんはテンションが上がったのかウィンクしながらある店舗を指差す
戦闘用の魔具<ガイスト>ってステラさん割と好戦的だな
あとウィンクが下手なのが背徳感ある感じに魅力的だ
「あ あれは」
1件だけ他と違って華やかさのかけらもない
剣と血濡れの滴りを表現したシンボルの店舗がある
「私の知り合いがいるのよ
戦闘用の魔具<ガイスト>ならあそこが一番」
「は はぁ」
俺とステラさんは武器屋・ベルガーゴと書かれている店に入る
「へい いらっしゃ
ってステラじゃない」
「ヘス 久ぶりね」
茶髪のショートの髪にすすまみれの顔
女性には見合わない分厚い作業着を着た女性だ
「そっちは?彼氏? なんてステラに彼氏なんて」
「婚約者よ」
「ブフォッ ゲホゲホッ グハッ」
女性が吹き出してむせて咳き込んでかがみ込んだ
「だ 大丈夫ですか?」
「大丈夫 うん
って年差ぁ! まだ学生じゃん」
「一応18なんですけど」
「そうなの へー なら大丈夫か
極東の人って見た目で年齢分からないんだよね
ちなみにステラはよんじゅ」
大丈夫なのか 基準が分からん
「ヘス!
楽郎にあった戦闘用の魔具<ガイスト>がほしいのよ」
「えー それなら師匠に聞いてよ
私防具専門だし 1個買ってく?」
「楽郎は私の魔術で守るからいらないわ」
「かっこいー」
軽いなこの人
「ちなみに適性は?
えっと楽郎くんだっけ」
「光です」
「光かー そりゃ戦闘用の魔具<ガイスト>あったほうがいいね
ちなみに極東の人なら刀とかがいいんじゃない
慣れてるんでしょ」
「一度も触ったことないです」
「極東でちゃんとした刀持ってるのは基本武士
特権階級みたいなのだけよ
他はみんな脇差し 小さいナイフしか持ってないの」
「ふーん」
ステラさんは俺が異世界人であることを隠してくれてるな
「ヴィスターブみたいなのないですかね」
「そんな欠陥品 うちには置いてないよ」
「欠陥?」
「ステラ 使う道具についてはちゃんと説明しといて
いい ヴィスターブは出力調整も非線形だし
その割に攻撃範囲が限定出来ないから使用者の」
「長くなるから結構よ
楽郎の魔素レベルだとそこまで悪影響ないし」
「それじゃあこれとか」
魔術師っぽい杖を差し出された
何か魔術師っぽいな強いのか分からないが
「はいはい
大体在庫は分かったわ
これはオーダーするしかないみたいね
アリスラさんはどこ?
裏にはいないの」
「いないよ 多分工房だね
今めんどーな発注を受けさせられてね
交渉揉めてるの
買わないなら帰った帰った」
バタン
「結局追い出されちゃいましたね」
「アリスラ・ゴールドブランデュア・レイルマ・ソドィア」
「ヘスさんの師匠ですよね」
「相当の変人だと聞いてるわ
会ったことないけど」
「妙齢の女性だといいなぁ」
「ちょっと楽郎!?」
「じょ 冗談ですよ」
いや本気だけどね
鍛冶師の女性 俺のハーレムに必要な人だ
旅を続けるなら今後武器の魔具<ガイスト>をメンテナンスしてくれる人がほしい
そうでなくても魔具<ガイスト>は日常生活に欠かせないものだと分かった以上
詳しい仲間は必須だろう
ステラさんも基本的なところは出来るみたいだけど遅いっぽいし
「ここですね」
街の南に位置する職人街
職人街の裏通りを少し入ったところにある石造りの工房だ
かなりでかい
周りの建物の2倍はあるが古びているな
石に風化後があるし 一部削った後もある
「入るわ」
「し 失礼します」
ギギギッ
扉を開け
「そんな期間と金額で受けられるわけないだろ!!!」
「ふざけるな!!これでも譲歩してるんだぞ!!!」
男女の怒号が飛び交っていた
「えーっと」
「取り込み中みたいね」
俺とステラさんが入ったのにも気づいてないのか
気づいていても無視して2人で怒号を飛ばし合っている
「出直しますか」
「そうね」
「ちょっと待ちな!」
女性が俺の肩を掴む
「あんた何か用?
ここ工房なんだけど
在庫なら店舗の方に」
「俺の戦闘用の魔具<ガイスト>を作って欲しいです」
「ふーん そっちの魔女はーって
ステラさん!?」
「私のことご存知で」
「覚えてるも何も
今まで会った中で最強の魔女だし
また会えて嬉しいよ」
「それで楽郎に魔具<ガイスト>を作ってくれますか」
「喜んで でもうちは一切値引きしないよ」
「えぇ 問題ないわ」
あれ 俺金なくね
「ステラさん 俺は金ないですよ」
「大丈夫よ ブラックシープの毛皮売れば多分足りるし」
「え」
「確かに
傷のないブラックシープの全身の毛皮なら銀貨40枚は下らないだろうね」
「戦闘用の魔具<ガイスト>は大体30銀貨ぐらいだし 足りるでしょう」
「残念
私の特注品は
最低でも100ね
いいよ あんたの依頼受けた」
「えーっと 銀貨60枚はどこから」
「作るのに2~3日はかかるからどっかで工面してきなさいな
ステラさんの仲間なんだろ」
「ですよね」
何となく分かっていたが職人器質なタイプか
それでいてコスト感覚もちゃんと持ってる
アリスラさん 流石だな
今は客と店員の関係だからハーレムに誘うのはやめとこう
だがますます加えたくなった
「ちなみにあんた 魔術の適性は?」
「ふざけるな!!!いつまで話し込んでるんだ!!」
奥のソファにかけていた男が怒鳴った
そういえば来客中だったな
「うっさいねぇ
さっさと帰りな
うちは格安商売はしてないんだ
他を当たるんだね」
「ふざけるな
俺はこの国最高の大企業 ゲニルマニラカンパニーの社員だぞ
取引を断るのがどういう意味か」
「知ったこっちゃないね
適正価格以外では受注しない
その大企業にとっては別に大した金額じゃないだろ」
「くそあまが
覚えてろよ!!!」
ドガッと男が扉を蹴り開けながら帰っていく
「悪いね あんなのでも元は客でね
それでどこまで聞いたっけ?」
「俺の魔術の適性ですね
光です」
「へー 珍しいじゃないか
まぁ 派手さはないし戦闘向きじゃないけどね」
「うぅ」
「そいや名前は聞いてなかったね
なんて言うんだい」
「楽郎 早乙女楽郎です」
「へー あたしはアリスラ・ゴールドブランデュア・レイルマ・ソドィア
母方のファミリーネームが長ったらしくてね
アリスラでいいよ」
「はい よろしくお願いします アリスラさん」
「それじゃあ 早速色々測っていこうかね」
「測る?」
アリスラさんの目がギラリと光る
まるで獲物を狩るような目だ
「魔具<ガイスト>ってのは人の手に馴染んでなんぼだよ
ちゃんと体に合ったものを使わないとね
ほら 上着全部脱ぎな」
「なるほど」
すごくこだわりを感じるな
だからこそ銀貨100枚か
一通り採寸が終わり
体の至る所を測られ体重や体のバランスまでも見られた後
俺とステラさんは近くの宿に入った
もちろん同室
金がない俺はステラさんの部屋に泊まらせてもらう形になる
本来であればステラさんと同室というだけで心が沸き立つものだが
今は連日の歩き疲れでそれどころではない
それに
「銀貨60枚 どうすれば」
アリスラさんの見積もりだと3日後
俺は銀貨100枚 つまりあと60枚を稼がねばならないのだ
元の世界の価値に換算すると60万ぐらいってところか
ほんとインフレ進んでるなこの世界
「悩んでもしょうがないし
明日、明後日 廃鉱に行って野生化した魔獣を倒して素材で稼ぐしかないわ」
向かいのベッドに座っているステラさんが地図を広げる
「廃鉱?」
「見る? 街の外れに鉱石が掘れなくなった魔鉱窟があるのよ
多分 魔獣が大量にいるはずだから全部倒して解体して素材を売る
簡単でしょ」
「簡単って そこって勝手に入っていいんですか?」
ゲームとかだと勝手に入ってモンスター狩るが普通は街が管理してるよな
不法侵入とかで狩られる側になるのはごめんだぞ
「ハンターなんて危険な仕事は誰もやってないから
役所に届け出を出せば誰でもオーケーよ」
「そういうもんなんです」
「こっちの方だと変わった魔獣が何種かいるから気をつけるのと
それとブラックシープはいないから
ヴィスターブの風を斬撃として使っても大丈夫よ」
「まだ強風ぐらいにしか」
「それならあと少しね
明日あたりに戦いながら掴めるかもしれない
大事なのは実戦よ」
翌日
「行きましょう」
「はい」
俺とステラさんは廃鉱山の入り口にいた
入り口がいくつもあるのは採掘したものを運び出す用だな
そのうちの一番大きい入り口へ入る
中はかなり暗いな
ところどころ光る苔が生えてるがそこ以外は真っ暗だ
「サン・ミンクロ・クストラ」
ステラさんが小さい明かりを4つ同時に灯す
惑星魔術はほんと便利だな
めっちゃ強いし
「後ろは頼むわ」
「えぇ」
俺は背後を警戒して歩く
魔獣に知能があるなら背後から奇襲してきそうだし
責任重大だ
廃鉱山の十字路まで歩いてきたが
魔獣が少ない
小さな背中が角張った魚みたいなのはいたが金にならなそうだしな
土の中を泳ぐ魚がいたのにはびっくりしたが
何匹が見ている内に慣れた
「おかしい 魔獣が少なすぎる」
「それは一体」
十字路になったせいで警戒範囲が広がる
4方のうち2方向を警戒しなきゃいけないな
「こういった人の通りがなくなった場所は
野生化した魔獣がそこに生態系を作るものなのよ
小さな虫やネズミを底辺として中型、大型の魔獣の食物連鎖
それがない
まるで何者かにすべて消し去られたかのような」
「原因として考えられるのは?」
「変異種ね」
「変異種?」
「家畜が魔術によって性質を変えて改良されているのは話したでしょ」
「はい 成長を早めるために魔術を付与して」
「その魔術と野生の魔獣の魔術が偶発的に相乗効果を起こして
突然変異を起こすのよ」
「それが変異種 もしかしてめちゃくちゃ凶暴だったり」
「めちゃくちゃ凶暴だし 危険よ
その代わり実入りはいいはずよ
基本的に変異種は2~3世代でその特性が消えていくから
個体数が少ないの」
「だったら何で乱獲されないんですか」
「凶暴性が高すぎて狩る側が割に合わないのと」
ゴッ
「ってぇ」
俺の頭に石が落ちてきた
上を見た瞬間に
ゴッ!!!
巨大な岩石をまとった塊が落下してきた
「ステラさん!!!」
俺はステラさんを手で押し飛ばす
「楽郎!?」
ゴォォォォッ!!!!!
巨大な岩石をまとった塊が十字路の真ん中 楽郎のいた箇所に突き刺さった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます