第4話To the salvation with Heroin

I love you

夏目漱石だったか

月がとっても青いなぁとか変な訳したの

人は言わなきゃ伝わらない

それは日本語でも英語でも同じだろう


「・・・」

俺の体は空を舞っている

廃墟の屋上が見えるほど高く上がったところで

落下が始まる

周り森だったんだな

遠くに街が見える

街の明かりがほのかに見える

日本と違って明かりが少ないせいか街の上の星もしっかり見える

何よりも重力

ここが異世界とはいえ現実だと思い知らされるな

俺の全身が風を切る感覚と共にまっすぐ地面へと落ちていく

風を切る音とともに思い出されるのは

元の世界で見た熟女達の笑顔

不思議と裸ではなくそういう映像の冒頭で見た笑顔だ

「これが走馬灯か」

流石に異世界といえど目測20mの高さから落下したら助からないだろう

「熟女ハーレム 作りたかったな」

体を切る風が強くなり

眼前に地面が迫る

っ!!!

俺は死ねない!

全力で手足を真下に伸ばす

出来るだけ手足の多い面積で着地するんだ

俺はまだ死にたくない!!!

「生きたい」

ドッッ!!!!!!!!


「ぐがっ!」

左脇腹がえぐれるように痛む

「何だ!?」

生きてるのか

あの高さから落ちたのに

「ハーレムはお断り

でもあなたが死ぬのはもっと嫌」

「ステラさん!?」

俺の体が浮いている

土星のような球体と輪の土塊に乗って浮いているのだ

そしてステラさんがいる

黒のローブとコスプレみたいな魔女帽子から金色の髪をなびかせて

「女神」

「私は人間よ」

「星霊術・星征陣<ロクス・アステラ>」

ステラさんの体の周りに10以上の土塊が浮かび上がり

徐々に形を変えていく

これはまるで

「太陽系の惑星!?」

「ふふっ 魔術はからっきしでも星は分かるのね

ちょっとこいつら片付けるから下がってて」

「あぁ!!?何様だてめぇ!!

てめぇみたいな役立たずの中古ババアはお呼びじゃねぇんだよ!!!

20歳以下の売れねぇ糞女はすっこんでろ!

これはビジネスなんだよ!」

男達が武器を構えてぞろぞろと向かってくる

奴等は魔術ってのを発動してるらしいな

男達の周りの木々が刃で切り裂かれていく

「中古じゃないけど20歳はちょっと若すぎない?」

ステラさんが俺と男達の間に立つ

「下がりなさい すぐに終わるから」

本来はここでステラさんがかっこよく倒すのがいいのだろう

だがそうはいかない

俺は熟女好きだ

「嫌です!!!」

「何言ってるの!魔術も使えないのに勝てるわけが」

「勝てるか勝てないかじゃない

熟女<この世の至宝>をバカにされて黙ってちゃあ

男 いや 俺が俺じゃなくなる!!!」

「え?」

拳を握る

血が出るほど強く強く

左脇腹だけじゃなく全身が痛い

それでもやれる

「うぉおおおおおっ!!!」

全力で男の1人に距離を詰める

「手足もげても二束三文にはしてやるぜ!!!

ビジネスだからな!

風霊術・波風の矢<ボレアス・アレー>」

「見切った!」

正確には見えてはないのだが

こいつらの魔術は範囲が超限定的だ

さっき俺を吹き飛ばした時も地面にあった土は表面しか削れてない

つまり

「全力で横に飛べば」

俺は右に思いっきりステップして範囲外に出る

左肩から血が吹き出す

少しかすったぐらいじゃ死にはしないさ

「くらえ!!」

「この」

男が拳を振り下ろす

だがそれよりは俺の右手の方が速い!

ゴツッ!!

男の顎に俺の右拳がめり込む

よし!倒せなくとも一撃は入れてやった

「え」

俺の拳が急に茶色に発光する

それと同時に拳に力がみなぎり

「あぐっ!」

男の巨体が地面に沈む

「倒した  のか?」

違和感がある

こんな巨体の男を俺の体格の正拳で倒せるものなのか

「てめぇ 許さねぇぞ!!!」

巨体の男の後ろにいたモヒカン男が鉄の棒切れを振り下ろす

「くっ」

油断した

左肩が切られたせいか左腕が上がらない

右腕のガードも間に合わないっ

「あなたを立てるのはここまでね

土星転回<クロノス・キクトス・エピタキントス>」

「!?」

俺の体が宙に浮くと同時に鉄のモヒカン男が紙切れのように吹き飛ぶ

「土星の輪!?」

土星の輪のような物体が俺の胴体にぴったりフィットして体を持ち上げているらしい

「円環<キクロス>の加護 汝は我が寄る辺 一時の安らぎを汝に 代償は愛を注ぐべし」

「これは」

輪から力が流れ込み

全身の傷が治っていく

これが魔術なのか

「もう少し我慢してて」

ステラさんが月を指差す

「蒼き月光 響くは狂闇犬<ヴィズ>の激昂 裁きを執行せん 

星落し<アリス・イーヂス>」

「!!!」

上を見上げると巨大な土の塊

星と呼べるほどの巨大な塊が降ってくる

「逃げろ!」

「やべぇ!」

「くそアマが!!覚えてやがれ」

「後で絶対殺してやる!」

男達は一目散に街と反対側にある森の方へと逃げ出す

「逃げられるわけないでしょ」

巨大な土の塊が男達の逃げた方へと落下方向を変えていく

「嘘だろ!」

「嫌だ!」

「死にたくな」

ドッ!!!!!!

ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!

男達を押し潰していく

どこまでも圧倒的な力の存在感

これも魔術なのか

もはや天変地異に等しい力だ

「終わったよ」

ステラさんが俺を見つめる

月と同じ蒼い瞳に吸い込まれそうになる

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