第5話 To home and the next!

「・・・あの人達

こ、殺したんですか ステラさん」

ステラさんの魔術で男達の上に隕石が落ちた

魔術を使えば簡単に人を殺せる

それほど圧倒的に科学と異なる力に対する畏怖

いや違うな

男達の生死よりも俺はステラさんが俺のために手を汚すことが嫌だ

本来俺を助けなければステラさんはこんなことをする必要はないんだ

「よく見なさい」

巨大な岩の塊に潰されたはずの男達が人間の形を保って岩の下に挟まっている

こいつら手足は変な方向に向いて入るが生きてるぞ

「殺すと思った?」

「――― これだけの魔術?ってのやったら普通死ぬでしょ」

「それは元いた世界の常識?」

「!!!」

ステラさんは知っているのか

俺が異世界人だってこと

「――――― はい」

服装が違いすぎたか

異世界人からしたら俺はコスプレ衣装で歩いてたのと同じだ

それにこの世界でほ子供も含めほぼすべての人が使えるであろう魔術を

命の危機においても一切使えない異様な人間

それが俺だ

「やっぱりね

時々いるのよ 異世界人

でも」

ステラさんが俯く

「―――

でも 何なんです?」

「すぐに死ぬ」

「!!!」

死ぬ どういう意味だ

それに口ぶりからして他の異世界人を知っている

「何でですか」

「あなたと同じ

魔術が使えず戸籍のない人間は

人身売買が目的の地下組織かカルトに来てすぐに狩られる

そして万が一生き残っても」

ビュッ!

「!!!」

ステラさんが俺を指さした瞬間に俺の後ろに生えていた木に穴が穿たれる

「異世界人を快く思わない人間に殺されるのよ」

「異世界人は恨まれてる?」

「戸籍を持たないせいで法に守られない人間

それも自分たちと全く違う人間がいたらどうする?」

「・・・」

話して友達になってみたい

と言いたい所だがそれは俺が平和ボケした世界で育ったからだろう

既に体験済だ

よくて死ぬまで奴隷

ストレス解消のサンドバック

これは予想だが実験動物の扱いで死なない程度に魔術の実験とかか

「あなたも俺を殺すんですか」

ステラさんは他の異世界人と因縁があるのか

それとも異世界人自体を恨んで

「でもあなたは死なない

いえ 死なせない 」

「・・・」

ステラさんが俺にゆっくりと歩み寄る

「私が好きなんでしょ」

ステラさんの両腕が俺を包む

温かい

こちらの世界に来てからずっと憎しみと怒りばかりだった

「うっ うっ 俺は」

「・・・」

ステラさんが俺の頭をそっと撫でる

目が熱い

月は蒼く輝いていた

少し滲んで見えた



翌日

「ほら起きて」

「あと10分」

「だーめ 起きて」

「って うぉおおおおっ!!」

俺の寝ているベッドにステラさんが顔を寄せていた

寝起きのステラさん刺激的すぎませんかね!

寝巻きがはだけて胸元ちらっと開いてるし

髪が少し乱れてるのが何とも言えなく刺激的だ

「お腹減った」

「へ?」


俺は台所にいる

どうやらステラさんはいつも街で買った黒パンと適当なシチューで済ませているらしい

飽きないのかな...

何か作ろうとしても何の食材もない

黒パンとチーズだけか

そして火すら起こせない

この世界の人間ほぼ全員は魔術を使うことが前提なせいでマッチの火すらない

厳しいなこの世界

「火なら私がつけるから」

パチンッ

ステラさんが指ぱっちんしただけでコンロっぽい道具に火が付く

便利だな魔術

街に電線とかないわけだよ

こっちの世界の人間は全員電池人間ならぬ、魔術人間じゃないな

魔術師ってことか

そして魔術は昨日のみたいなドンパチじゃなくて

生活や人を幸せに使うのが本来の役目なんだろう

そうあってほしいと願うのみだ

とりあえずパン焼いてチーズ切って炙ってから乗せるか

そのぐらいしか出来ることがない

牛乳もないから水か

火通せばとりあえず大丈夫だろう


「パンが焼かれてチーズがこんがりとろーり!!」

ステラさんが目を輝かせる

「まさか黒パンそのまま食べてたんですか...」

「そうよ チーズは普通そのまま食べるでしょ

おいしっ」

そうなの

食文化だけは圧倒的に元の世界の方がいいな

「すっごい美味しそうに食べますね

黒パンとちょっと焼いたチーズですよ」

ステラさん完璧超人な女性のイメージあったが

食事面はすっごいずぼららしい

「楽郎」

ステラさんが俺をまっすぐ見据える

「楽郎 20歳以下よね 

とりあえず婚約しましょ」

「ん?」

「婚約よ」

ステラさんの顔が真面目なままだ

この人会って1日しか経ってない男に何を言ってるんだ

「結婚詐欺とかじゃないですよね?」

「結婚詐欺? 聞いたことはないけれど

するの?しないの?」

「します!!」

凄いな、こっちの世界

いやこれはステラさんがぶっ飛んでるだけなのか

だが 婚約者となればあんなことや

「婚約者とは言えエッチなのはまだ駄目よ

ちゃんと成人してからね」

「ぐっ」

見透かされてた

こうして俺は異世界転生して2日目にして婚約者が出来た

俺の好みどストライクの妙齢の女性だ

人生絶頂期来たんじゃないか 俺


「それじゃあ、旅に出ましょう」

黒パンを食べ終わった直後にさらっとステラさんが言い放つ

「な 何でですか!?」

せっかく婚約したんだしこれから仕事探しとか考えてたが

「決まってるでしょ

あいつらの報復回避よ」

「それは...」

つまり俺を助けたせいでステラさんはこの街で生活できなくなったってことか

「たった2年住んだだけだから安心して

それにちょうど引っ越ししたかったし」

「俺 旅の路銀ないですよ」

「大陸鉄道使うならお金はかかるけど

歩けばただよ」

「鉄道あるんですか!?」

「驚くことはないでしょ

あなたの世界は魔術ないんでしょ

あっちの世界にないものがあってあっちの世界にあるものがない

そういうものよ」

「それはそうですけど」

それだけじゃない

魔術が一切使えない俺には不安しかない

「旅 か 

ふふっ ちょっと楽しみね」

ステラさんが微笑む

笑顔は本当に最高だが

徒歩で旅は不安しかないぞ

こっちの世界に転生前はまともに長距離歩いたことない

魔術を用いた襲撃があるかもしれない

だが

「ステラさんと一緒ならどこにでも行きたいです」

「いい顔になった」


「それじゃあ行きましょ」

「はい!」

空が青い

俺とステラさんは新しい街へと歩みを進める

この旅の先に何が待っているか分からない

不安がないといえば嘘になる

それでも俺には夢がある

俺は熟女ハーレムを作る

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