82. 変幻自在(ただしランクは低い)
さて、ダンジョンで手に入れたもう一つのアイテム、【変幻自在ツール】について見てみよう。
【変幻自在ツール】
◆分類◆
武器・特殊(特殊)
防具・特殊(特殊)
◆攻撃性能◆
物理補正:F 魔法補正:F
◆防御性能◆
物理防御:F 魔法防御:F
◆特殊効果◆
所持者の意思によって変形する
分類は武器であり防具でもある。おそらくは、どちらにも変形することができるのだろう。攻撃性能と防御性能は高くない……というか、はっきり言えば弱い。おそらく、その真価は特殊効果にあるのだろう。
とりあえず、形を変えてみよう。とりあえず、ペルフェが宿っている清浄の青刃の形を真似てみるか。
「剣になれ!」
変え方がわからないので、とりあえず宣言してみる――……が、無反応。変化の兆しすら見えない。宣言しただけでは駄目となると、どうしたものか。
「ペルフェ、これの使い方を知らないか?」
『んん? 変化しろと念じれば変わるはずだけど?』
「そうなのか? だが、全く反応しないんだが……」
『ランクのせいじゃない? たぶん、高ランクのアイテムはコピーできないんだよ』
そうなのか。見た目だけなら、ランクなんて関係がない気がするが……。いや、ちょっと待て、今、ペルフェは“コピー”と言ったな。
「これは武具をコピーするアイテムなのか? 見た目を真似するだけでなく?」
『そうだよ。と言っても、大したものはコピーできないと思うけどね。それ、武器と言うよりは道具だから』
もしかして、これはピッキングツールみたいなものなのか? どんな鍵穴にもぴったりと合う……みたいな。
だが、攻撃性能や防御性能の表記がある以上、武具にも変形できると思うんだがな。
「試しに、片っ端から変形させてみるか」
物は試しということで、色々と変化させてみた。まずは、農具や工具。機械式のような物は無理だが、単純な構造の道具には変化できた。一例を挙げると、こんな感じだ。
【ピッチフォーク】〈変化〉
◆分類◆
武器・槍(槍)
農具
◆攻撃性能◆
攻撃補正:F
【バールのようなもの】〈変化〉
◆分類◆
武器・鈍器(鈍器)
工具
◆攻撃性能◆
攻撃補正:F
分類上は一応武器である。ただ、攻撃性能はF。最下級という評価だ。これを使うくらいなら普通の武器を使った方が良い。
特殊効果はどんなものに変化させても共通で、“所有者の意思でツールに戻せる”と“耐久力がゼロになるとツールに戻る”がついてくる。
続いて武具への変化を試してみる。コピーではなく変化だ。農具類のように、明確なモデルがなくても変化できるのかという検証である。結果としては、変化させることはできたのだが――……
【短杖】〈変化〉
◆分類◆
武器・杖(短杖)
◆攻撃性能◆
魔法補正:F
【小盾】〈変化〉
◆分類◆
防具・盾(軽盾)
◆防御性能◆
物理防御:F
とまあ、性能は農具類と大差ない。手元に所持していない武器種のスキルを使いたい……なんてときには役に立つかもしれないが、インベントリがあれば予備武器を持ち歩く負担は少ないので、あまり出番はないだろうな。
そして、最後に試したのが実在する武具のコピー。清浄の青刃はコピーできなかったが、低ランクの武具ならばコピーできるのか。それを確認してみたわけだ。
結果として、低ランク装備のコピーはできた。それだけなら、大した意味もないが、意外なメリットもある。なんと、特殊効果までコピーできたのだ。例えば、こちらに転生したばかりのときに手に入れた祈りの指輪をコピーすると――……
【祈りの指輪】〈変化〉
◆分類◆
防具・装飾品(軽装)
◆防御性能◆
魔法防御:F
◆特殊効果◆
精神がわずかにアップ
このように、精神アップの特殊効果までコピーできる。まあ、低ランク装備の特殊効果だから、メリットは小さいが。とはいえ、この特性はなかなか有用である。実は、既存装備の劣化版をイメージすると、レプリカという形で変化させることができることがわかったのだ。
【レプリカ・清浄の青刃】〈変化〉
◆分類◆
武器・剣(長剣)
◆攻撃性能◆
物理補正:F
◆特殊効果◆
不浄なる者への攻撃にプラス補正
【レプリカ・霊亀王の魔鎚】〈変化〉
◆分類◆
武器・鈍器(槌)
◆攻撃性能◆
物理補正:F 魔法補正:F
◆特殊効果◆
<弱体>使用者の魔力に依存した無属性の魔法ダメージを追加で与える
<弱体>あらゆるダメージを僅かに軽減する
生命とマナの自然回復速度が少し上昇する
武器性能はあいかわらず最低レベル。だが、一部弱体化しているとはいえ、特殊効果はコピーできる。もし、伝説級のアイテムをコピーすることができれば、凄まじい特殊効果が扱えるかもしれない。
まあ、十中八九それも弱体化するのだろうが。それに幾ら特殊効果が強くても武器としての性能が弱ければ微妙だ。
「だが、弱ければ鍛えれば良いだけだしな」
鍛えるといっても俺は鍛冶師ではない。そもそも、鍛冶師でも、このツールを鍛えることはできないだろう。となれば、ペルフェの協力が必要だ。
『ええ? 鍛えるって……もしかして、それに移れって言うの?』
察したペルフェが不服そうな声を上げる。だが、問題ない。説得の言葉は考えてある。
「よく考えろ、ペルフェ。変幻自在ツールを極めれば真の最強武器になれるんだぞ」
『……真の最強?』
「そうだ。例えば、ペルフェが最強の剣になったとしよう。だが、状況によっては槍が必要になるかもしれない。そのとき、ペルフェは出番がない。もし別の槍に宿ったとしても最強ではなくなってしまう」
『たしかに!』
「だが、このツールなら、どうだ? 槍が必要になれば、槍に変化すればいい。宿る先を変える必要はないから、存在値はそのまま。つまり、最強のままだ!」
『最強のまま!』
「ついでに言えば、コイツは防具にもなれる。最強の防具にだってなれるんだ!」
『すごい!』
「そうだろ? このツールに移らない理由なんてあるか?」
『ない! わかったよ。僕、このツールに移るから!』
狙い通りだ。最強という言葉を使えば、ペルフェは乗ってくると思っていた。
まあ、別に嘘はいっていない。最強に至るかどうかはともかく、同じ水準で武器種を切り替えることができれば便利だし、存在値も分散しないので成長もしやすくなるだろう。
『よ~し、ガンガン鍛えて、真の最強武器になるぞ~!』
「おお、そうだな。がんばれ」
ペルフェが変幻自在ツールに移ったことを確認して、俺はその形状を変化させた。
【
◆分類◆
武器・杖(長杖)
アーマニア
◆攻撃性能◆
魔法補正:F
『ちょっ、何するんだよ~!』
「何って、お仕置きだ。迂闊に殲滅衝動を使うやつには必要だろ?」
『だ、だから、ジンヤの気のせいだって!』
ペルフェがやかましく騒ぐが、取り合うつもりはない。本当に反省するまで箒の姿で頑張ってもらおう。
と、そこに、つまらなさそうに土いじりをしていたルゥルリィが近寄ってきた。
「ますた、飛ぶの?」
「飛ぶ?」
「ほうき! 飛ぶ!」
ルゥルリィは何故か目を輝かせて、箒を見ている。何を言っているのかわからずに、聞き返すと、どうやら魔法の箒の話をしているらしい。いったい、どこでそんな知識を仕入れてきたのやら。
魔法の箒ではないので当然飛ぶなんてことはできないのだが……ルゥルリィがあまりにニコニコと嬉しそうにしているので非常に指摘しづらい。
「……あとでペルフェが乗せてくれるだろう。念動で飛べるしな」
「本当!? ペル、ありがとう!」
『ちょ、なんだよ、それ~! 僕は武器なの! 箒じゃないの!』
「ほうき、だよ?」
『……うわ~ん!』
ま、まあ、これも修行だと思って頑張ってくれ、ペルフェ。
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