白い服で長い黒髪の女性は神様でした

@oisiinori

第1話

『心霊スポット!本当に出る!?白い服を着た長い黒髪の女...』

「って....」

そう書かれたポスターを握りながら呟く。

先日行われた中学校の同窓会で、王様ゲームで命じられた命令。

正直言って従いたくなかった。だが中学時代は充実した生活を提供してくれていたクラスメイトからの命令なので、断る口実もなく今に至る。

(まずこの歳で同窓会をしようっていうところからズレてるだろ....)

まだ高校2年生。大学の進路について少し迷いつつある思春期真っ盛りの年。そんな年が始まった春、クラスの中心だった久保 尊によりクラスラインにて招集がかかった。

思春期とは、同時におとなになる期間。

少し背伸びしたっていいだろうという謎の建前を持ってこられ、こちらも断ることができなかった。

久保のことだから、思いで作ったとか言って今のクラスの奴らに善心と陽気さを見せたかったのだろう。


それはそうと、今いるのは心霊スポットではありがちの廃病院の中。

少し前までは本当に霊が出ると有名な心霊スポットだったそうだが、今には興味が他に移り、人気はどんどん急落。今いる客も俺一人だ。

「正直言って、怖くはないんだよな...」

俺は霊を信じていない。

霊がほんとにいたとしても、それはきっと見えないところで俺達を見ているのだ。

これだと信じていることになるのか?まあ、見える霊など存在しないと考えてる点には矛盾はないだろう。

「そ........しょ...ん」

「うぇっ!?」

どこからか聞こえてきたその声に正直言って気持ち悪い声を出してしまった。

「....俺以外に客いたのか」

信じ込ませるように言うと、観光者用に作られた廃病院のマップに目を通す。

HPにもあげられているこれは、心霊スポットとは似ても似てつかない明るい背景とイラストに、廃病院の構図が書かれている。

王様から命じられた命令は、廃病院を一周すること。

どこか特別な部屋に入れとか、霊を見るまで帰らないとかそういう特殊なものではない。

心霊スポットに生かされると言うだけで嫌だったが、正直って一周だけでいいのならありがたい。

さっきの声に気づかないふりをしながら、急ぎ足で歩き回る。

「さ.....よん......う!?」

(うるっさいなカップル客か何かかよ...)

「ね...!」

(あぁもういちゃつくのは心霊スポットでやっていいことじゃないだろ...)

「君に行ってるんですけど?」

瞬間、モヤッとした感触の中現れる。

俺の目の前に。突然。


白い服を着た、黒髪の女が。


「ゆう........れい......?」

一瞬のことで頭に理解が追いつかない中、目の前の女の体が徐々に読み取れるほどに脳が回復してくる。

白い服、黒くて長い真っすぐ伸びたきれいな髪、足がない体.....そして......

幽霊のイメージとはかけ離れた、きれいな容姿。

引き込まれる、そんな感覚。

自分のすべてを優しく肯定され、包み込まれる暖かさ。

今、俺はこの幽霊のような女性と花畑に立っている。

ニッコリと微笑んだ女性に撫でられて....?



「おーいおーい?聞こえてますー?もしかして見惚れて....?いやあ照れるぅ」

「いや見惚れてはないが?」

体質上、うっかり突っ込んでしまったところで現実に引き戻される。

花畑はいつの間にか消え、目の前にいる女性の見た目だけ現実として残っている。

(......めんどくさいことになる前に逃げよう)

いわゆるイベントというものなのだろう。

こういうあとは、だいたいめんどくさい身の程に合わないことをお願いされる。

こういう性格だ。正直言って、断れる気がしない。

「........失礼しま」

「ねえ君!改めてさ!」

(あぁ...........)

遮られた言葉に絶望を覚える。

「私を、救ってくれないかな?」

(うっ......)

「あ......い、いや......うん....ぐっ.....うぁ.......いい、うん...いい、いいよ......」

断れる、はずがなかった。

「やったぁ!」

目の前にいる女性は、大いに喜んだ様子でまるで少女のように体全体でぴょんぴょんとはねている。

その後しばし沈黙が流れて、俺が口を開く。

「...で?何すればいいの?衣食住の提供?十万欲しいとか?処女捨てたい?」

女性驚いた顔をすると、少し咳払いをして姿勢よく背筋を伸ばして白い服の裾を少し掴んでこういった。


「わたくしの名前はアマテラス。名前は聞いたことはあるか?正確に言えば第96代アマテラスオオミカミ。副名はリーベル。そなたには........」



「世界を、救ってもらいたい」



女性改めアマテラス...いいやリーベルと呼ぼう。リーベルは真剣な眼差しでこちらを見てくる。

(ほらほら。めんどくさいことをお願いされるって言ったでしょ?)

そんなこと思っていたとは、口が裂けても言えない。

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