神狼教を崇めし者達は世界を巡らせ

~村の、とある神狼教徒side~




あぁ、何という事だろうか。

私はとても運がよかった。私は自身の担当地域の調査が終わり、村に帰還した。

だが、まさかその帰還した日に、ベル様が降臨なさるとは思いもしなかった……!

私はこれから先の生涯、ベル様のお姿を見た瞬間以上の感動を得ることはないだろう。


ベル様と言葉は交わすことは叶わないけれども。それでも、この目にそのお姿を納めることができただけで……今死んだとしても悔いはないほどだ。

村の外に出てる調査員達は、ベル様を見ることが叶わずに嘆いている。哀れに思いはするがそれだけだ。

私にできることはない。強いてできることを言うとすれば、ベル様のお姿がどれ程美しく、神秘的で、素晴らしいものだったのかを伝えることくらいだ。


いや、これも1つの使命か。大切な仲間にベル様のお姿を伝えると言うことは、後世にもその美しさを伝えると言うことに他ならない。

そうだ、きっとそうだ!

こうしてはいられない。今すぐ世界中に散らばっている調査員達に語ってあげようではないか。


私は全ての調査員に繋がるように意識し、強く念じた。


――――――――――

―――



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No.57『私だお前達に素晴らしい情報を持ってきた』


No.27『ん? 57……村に帰った57か!良い情報とは?』


No.108『村に帰ったのか、羨ましいな』


No.213『素晴らしい情報? ベル様の事か?』


No.57『あぁ、そうだ』


No.76『ま、まさか……ベル様が降臨したのか!』


No.77『君、知らなかったのか!? 嘘だろ!?』


No.76『あぁ……いや、魔物と戦闘をして、数日の間気絶していたんだ。だから最近の事は何も知らなくてな』


No.57『76のことはどうでも良い。お前達、私はベル様をこの目で見た。この意味がわかるか?』


No.108『ベル様を見たのか!羨ましいな』


No.76『はぁぁぁぁぁ!?!? 羨ましすぎる!! ぬぁぁぁぁ気絶してなければもっと早くに村に帰れてたのにぃ!』


No.27『57!? 俺と君の仲だろう、ベル様のことを教えてくれないか!』


No.57『お前達慌てるな、安心しろ。元よりそのつもりだ。私がお前達、帰れなかった哀れな者に、ベル様のお姿を詳細に語ってやろうではないか!!』


No.213『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』


No.108『うぉぉぉぉ!!! だが、実際にその目で見ることができたのは羨ましいな』


No.76『やったぁぁぁぁぁ!! だけど悔しい!』


No.27『っしぁ! さぁ! さぁ!さぁさぁさぁ! 早く教えてくれ!』


No.77『もったいぶらずに早く!』


No.57『良いだろう。心して聞け。ベル様のあのお姿は……そう、全てを静かに飲み込む雪のような――――




――――

――――――――





~とある神狼教徒の調査隊長side~


――――――――

――――


57番の説明を聞きながら。ふと、意識しを覚醒させた。


今は自分が火の番だから、定期的に様子を見なければならない。


調査に出て今日で半年ほど時間が経った。

目的の場所にたどり着くためには、前回の調査員の記録を元に目的地を目指すしかなかった。

記録をした本人も数年前に亡くなってしまったため、今ではその場所は誰も調査を進めていない。


長い長い旅路の果て、自分が率いる調査隊はとうとう、その目的の場所への入り口とも言える場所にたどり着いた。

なかなかに大変な道のりだった。まぁ、海を調べている調査員達よりはましだったかもしれないが。


朝日がうっすらと昇り始め、辺りの様子が少しずつ見えてきた。

朝日に照らされた大地を見ると、乾燥してカラカラになった地面や、所々に生えた草木が見え。草木と同じように所々に存在する水場が見えた。



「あ~……なんだったかな。エンリ様の書かれた本に書いてあった、ああいう所の名前」


「サバンナですよ。隊長なんだからしっかりと覚えておいてください」



ふと、小さな声で呟いただけだったのだが。隊員の一人が起きて気づいたようだ。

まぁ、小さく呟いたところで我々が聞き逃すわけがないか。



「いや、すまんな。万が一があれば村にいる連中に聞けば良いと思ってたんでな……」


「確かに、村の方々に聞けば答えてくれたでしょう。なんなら、図書館の管理人に直接聞けば絶対にね。ですが、隊長たる者、そういう所はきちんとしてくださいね?」


「いや~すまんすまん。そういえば今、村に帰った奴がベル様のことを話してるぞ」


「え!? 早く言ってくださいよ! そういうことは!」



そういうと、すぐに意識を集中し始め話を聞き始めた。


本当に、こいつは真面目だなぁ。

まぁ……だからこそ、この調査隊に着いてきたんだろうが。


残りの3人は……まだ寝てるな。そろそろ、起こしてやるか。



「おい、お前ら起きろ!」



寝ていた隊員達はその声に反応し、モゾモゾと動き目を覚ました。



「あ"あ"あ"……隊長うるせぇ……!」


「もう朝か、また新しい1日が始まったな」


「うぁぁぁ……まだ、寝ていたい」



三者三様の反応をし、文句を言いつつも朝食の準備を始めた。


まったく……こいつらは揃いも揃って。

ふと、笑みがこぼれた。



「何を笑ってるんですか?」



先程まで村の話を聞いていた奴が横に並び、気味が悪い物を見たような顔をして話しかけてきた。



「おい、なんだその顔は」


「いえ、とても気持ち悪い顔をしていたので……」


「なんだとコラ! 気持ち悪いとは失礼な! 隊長だからな!?」


「まぁ、そんなことはどうでも良いのですが。何故笑っていたのですか?」


「おまっ……どうでも良いって。いや、綺麗な景色だなと思ってな。」


「え、気持ち悪……いや、何でもないです」


「おい、それで誤魔化せたと思うなよ」



全く、昔からコイツは変わらないな。

自分はコイツに悪意がないのはこれまでの付き合いでわかってるが。コイツの態度は初対面の奴からすれば気分は良くないだろう。

まぁ、初対面の相手にいきなり、いつもの調子で話しかけるわけないってのはわかってるんだがなぁ……。

少しだけ人見知りなのを知ってるから心配なんだよなぁ。


おっと、そんなことはどうだって良い。

とりあえず、準備を早く済ませて調査を再開するとしよう。



―――――――――

―――


様々準備が終わり、調査開始の準備が完了した。

自分は、眼前に並ぶ隊員たちを一人一人しっかり見ながら注意すべき点を話した。



「さて、隊員諸君。我々はこれから、このサバンナと呼ばれる地域の調査を行う。調査するにあたり、調査隊員それぞれに別れて調査を行うこととする! 調査時間は俺が号令をかけるまでだ。号令がかかったら、この場所に集合だ! わかったな!」


「「「「了解!」」」」


「それと一つ! サバンナは広大だと聞く。必ずこの場所に印を付けてから調査に出発しろ! 帰り道がわかりなくなりましたなんて事が起きないようにしろよ!」


「「「「了解!」」」」


「それでは現時点から調査開始とする! 解散!」



自分が合図を出すとそれぞれが翼を生み出し、空へと舞い上がった。それを見届けると、自分も地面に自身のフェンリルオーラを染み込ませ印を付ける。そして、翼を生み出し空へと駆けた。ある程度の高さまで昇ると隊員の1人が話しかけてきた。


「ひゅ~! 相も変わらず格好良いっすね~その翼。隼をモデルにしてるんですっけ?」


「そうだが、早く調査に行けよ? 長い時間調査した方が良いんだからよ」


「了解~! あ、自分は向こうに行くつもりなんで。それじゃ! ラー隊長もお気をつけて!」


そういうと飛んでいき、一気に最高速度に達したのか。強化なしの眼だとすぐに見えなくなった。



さて、俺も調査を行うか。気合いをいれていこう!










――――――――――――――――――――


No.85『緊急報告。記録にない大陸が発見された。あの海域は本来、大陸どころか島もなく。あれほど巨大な大陸を見逃すなどあり得ない。そのため突如出現したとしか考えられない。至急調査隊の派遣を願う』


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――





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どうもオオキャミーです。

今日投稿しなかったら5月中に1度も投稿しなかったことになってましたね。いや~ギリギリセーフ。……セーフだよね?


この話の時間軸としてはベルがアトランティスの魔力を感知した日から2、3日後の話です。


この話でこの章は終わりとなります。

あと1話投稿しますが、それは登場人物紹介です。




それと、話は変わりますが。


自分、カクヨム甲子園に作品を出そうと考えています。しばらくそちらの作品を書くことに専念しようと思っているため。こちらの更新が結構な間止まります。


そのため、楽しみにしている方には申し訳ないのですが。カクヨム甲子園の作品が完成するまでは、最初から読み返すなどして待っていただけると幸いです。

また、カクヨム甲子園の作品が完成したらそちらも覗いてみてください。

ジャンルとしてはホラーを書くつもりです。


追記

そういえばX(旧Twitter)始めました。名前で検索すれば出てくると思います。まぁ、基本的にイラストしか投稿しないんですけど……生存確認とかに使ってもらえれば。(フォローしてくれるのが一番嬉しいけども)

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