未練の力って強すぎない?

あれから、数日が経った。


火の玉の正体が魂だとわかって、私はすぐに対処したのかと言うと。

答えはNOだよ。


火の玉の正体がわかったあと。さらに他の龍脈にも異常がないか。わざわざ辿って確かめてきたんだよね。

いや、まぁ途中で龍脈を直接繋いで、そこから感知を応用して確認すれば良いって気づいたんだけど。

兎にも角にも調べ終わった結果。

地上に魂が出てきてるところが、エレスの所以外にも複数ヶ所あることがわかった。


まぁ、他にも同じような場所があるのは予想できてたんだけども。

その場所が問題だったんだよね……。

その場所って言うのが、全部人里の近くだったんだよ。


これが偶然とは思えないし、色々と考えてみたけど。考えられる理由を2つほど思い付いた。


1つが、人の持つ魔力に引き寄せられた可能性。人は魔臓器がなければ魔法を使うことは基本的に出来ないけど。魔力自体は無意識のうちに練ってる。


え? 魔力は魔素を練ることによって出来るんだから。魔素を感じることもできず、操ることすら出来ない人間は魔力を生み出すことは不可能だって?


……はぁ。


最初の人類はそうだったよ。魔素を練ることによって魔力を生み出すんだから、猿人と呼ばれるような彼らは魔力は愚か魔素すら操れなかったよ。


ただ、彼らの中に心臓が血液を送るように、肺が酸素を取り込むように、魔素を魔力に変える魔臓器を持つ人達が現れちゃったから。

その前提が崩れ去ったんだよね。

魔臓器が適応した結果なのか、それとも突然変異なのかはわからないけど。魔力を自然と無意識のうちに練れるようになっちゃったんだよね。


まぁ、そんなこんなで魔力を持つ人達がわんさか増えて。今でこそまだ魔法を使ってる人達はいないけど。いずれ、きっと出てくるだろうね。

昔はたまたま練れた魔力の違和感に気がついて魔法を使ったんだろうけど。たまたま魔力を練られたら、こっちにとっちゃたまったもんじゃないよ。魔力ってそんな簡単に練れるものだったかなぁ……もしかして、生物によって魔力の練りやすさが変わるとか? まぁとりあえず、そう言うことはあとから考えるとして。


今は、魔力は生まれたときからあるものだから、違和感なんて物がない。

それでも、絶対に魔法を使う人達は出てくるはずだ。何とかしないとなぁ……。


まぁ、それもあとで何とかしよう。


ちなみにエンリちゃんは前者の方で自力で魔力を練っていた。


魂が人里に集まる理由の考えられる2つ目は、死ぬ前の記憶が原因の可能性。


死ぬ原因ってのは別に寿命だけじゃない。病気だったり、事故だったり、殺されたり。色々な死因がある。

でさ、やっぱり寿命以外で死ぬのってあまり納得いかないよね?

もっとあんなことをしたかった、こんなことをしたかったって後悔もあるはずなんだよ。

所謂いわゆる、未練ってやつ?

その未練が魂に影響しちゃって魂の通り道から外れて、現世に来ちゃった可能性がある。


まあ、もしかしたら。っていう可能性も全然あるんだけど。


とりあえずエレスの所以外は対処はできた。魂がその場からむやみに動き回って、遠くに行かないように束縛してきたし。

その土地から一定の距離を離れるとその場所に強制的に戻るように、一つ一つの魂に魔法を施してきたから。あの場所から遠くに行っちゃう心配はなくなった。


正直、魂については詳しくないからネロに何とかして貰うしかないんだけど。今のところ普通の人には魂は見えないし。魂は物質に対して何かしらできるわけでもないだろうから、しばらくは放置しておこうと思う。


もちろん、自分自身でもなんとかできないか試すつもりだけどね。


一番の問題なのはエレスの所だね。

いや、解決していると言えばしてるんだけど。


エレスの所の魂も同じように魔法を施そうととしたんだけど……



「こらこら、そっちは危ないですよ。行くとするのなら向こうに行きなさい? そう、それで良いのです」



エレスが魂のことを気に入っちゃって自分でなんとかするって言ってるんだよね。

まぁ、聞いてみれば最初は結構な数の魂がいたらしいんだけど。接するうちに目の前で消えた魂が沢山いたらしいし、何かしらの条件で魂の道に戻すことができるってのがわかったんだって。

ちなみに、そう思う理由は勘なんだとか……神の勘は外れることは少ないらしいし、合ってるんだろうけど。



「ですから、そのバカみたいに無駄に大きな狼に近づくと危険ですって。こっちにおいで。あの白い狼に近づくと、あなた達消されちゃうかも知れないですよ?」


『ねぇ! いつ突っ込もうか迷ってたんだけど、さっきから酷くない!? 別に私、魂を消したりなんてしないんだけど!』



エレスがさっきから失礼なことを言ってるから、思わず強い思念になってしまった。


私の言葉を聞いてエレスは驚いたような表情をした。



「……嘘ですね」


『嘘じゃないよ! なんで!?』


「ベル様……私が生前の時に、エンリ様とアルル様、ベル様、私の4人で遠くの海に行った時の事を覚えていますか?」


『え? 海……あぁ! 覚えてるよ!』



そう、言語の塔が完成するよりも前。

エンリちゃんとアルルちゃんが旅に出る少し前くらいに、1度だけ4人でピクニックに行ったことがあるのだ。

でも、それがどうしたんだろう……?



「ベル様は海につくと、エンリ様達と遊び始めましたね」


『うん。あれは楽しかったな~』


「その時にエンリ様が言っていた言葉を覚えていますか?」



うん? う~ん……エンリちゃんが言った言葉?

色々と会話してたしなぁ。どうしよう、わからない。だけど、ここでわからないと言ってしまうと、エレスにまた呆れられてしまう!


……いや、待てよ? 別にわからなくても良くない? だって、100年以上前だよ?

私は別に今でも鮮明に思い出せるけど。普通の生物なら覚えてるはずないし?

その事はエレスも知らないはずだから……!



「どうせ、ベル様の事ですし。覚えていないでしょう? 覚えていたとしても細かいところは覚えていない。もしくはどれの事かわからない……と言ったところでしょうか」


『ど、どうして……わかったの!?』


「ベル様。今のは別に予測しただけで、別にわかっていたわけではないですよ。ですが、今ので確定しましたね」


『あ』


「まぁ、良いです。その時にエンリ様が言った言葉は「姉さんは一度何かに夢中になっちゃうと回りが見えなくなったりするから、気を付けてね。それに、何かに夢中になってなくても何らかのトラブルを起こすからそれもね!」……と言っていました」


『……え? 声真似上手くない? 一緒って訳じゃないけど、声質? みたいなのはそっくりだったんだけど』


「今はそんなことは、どうでも良いのです。問題なのはその言葉を言われた直後に、ベル様はお腹がすいたからと急に海に潜ったかと思うと。何 故 か ! ベル様よりも大きな魚のような魔物を引き連れて戻ってきたではないですか」



……あ。

あぁ~!! 完全に思い出した!

海に潜ったら海底に魔物の反応があって。攻撃したら思ってたよりも大きかったあの魚のことかぁ!あれは美味しかったなぁ。

あの魚に勝る美味しさの魚は存在しないんじゃないかってくらいに美味しかった。


ん?



『ねぇねぇ、エレス。その事については思い出したけどさ。それとこれとが、どう魂が私に近づいちゃダメな事と関係があるのさ?』


「それは一例を出したにすぎません。ベル様はこの他にも、様々なことをしでかしてきたではないですか。言語の塔崩壊に大地消滅、昼夜逆転……他にも、もっと沢山ありますよ? まだまだ言いましょうか?」


『ヴッ……いや、大丈夫です……はい』


「要するに、たとえベル様に魂を傷つけたり消したりするつもりが無くても。ベル様の事ですから、何かしらそれに並ぶような事をしまう可能性があるのです。それならばそもそも最初から近づかない方が良いでしょう?」



か、完全論破されてしまった! 

いや、というよりかは諭されちゃった。

くそぅ……確かに私自身にそんな気がなくても何かが起こらないとは限らないしね。

そんな万が一が起こってしまうよりは、私から魂を遠ざけて置く方がたしかに一番良いことだよね。


そういえば、エレスは何らかの条件で魂を元の道に戻すことができるって言ってたけど。その事について心当たりはあるのかな?



『私に魂を近づかせないようにするのはわかったけど。エレスは魂を元の道に戻す方法に、心当たりみたいなのはあるの?』


「えぇ、一応目の前で魂が消えた……元の道に戻った時は、全てに共通点があるので」


『共通点?』


「はい。元の道に戻った魂は基本的に子供の魂だったのですが『ちょ、ちょっと待って! エレスは魂の生前がわかるの?』あぁ、いえ。勘です」



か、勘かぁ……



「まぁ、勘というのは流石に冗談ですが。私がその魂達が子供だと思ったのは。行動が全体的に子供らしかったからですかね」


『あ~確かに、魂によって行動が別々だし。判別がつかないこともないかな?』


「えぇ、それでですが。魂が元の道に戻った時というのが、その魂と遊び終わったときだったんですよ。ベル様がおっしゃっていた。おそらく未練? が無くなったのではないかと考えています」



おぉ~やっぱり、人の所に魂が集まるのも未練とかそういうものが関係してそうだね。

おそらく未練のようなものを解決することで、魂が元の道に戻ることができるって感じかな。


……魂の道って何回も言いづらいなぁ。

今度から魂=幽霊ってことで、霊道って呼ぶことにしよう。


『じゃあ、エレスは魂の未練を無くしてあげるつもりなんだ』


「はい。長くはなるでしょうが、私は神なので時間はいくらでもあります。暇でしたし丁度良いかと思いまして」


『じゃあ本格的にここの魂はエレスに任せるよ?』


「わかりました。ここにいる全ての魂を元の道に戻せるように頑張ります」



よし! 魂については解決したね! 

……エレスの所だけだけど。まぁ、他の所もなんとかなるでしょ!


『よし、じゃあエレス。私は別の事をしようと思うから。またいつかね!』


「はい、それではお元気で。まぁ、ベル様が元気じゃない時はないと思いますが」


『じゃあね~!』































さて、私自身の……大事な事を始めようか。



この、薄くなった感情を取り戻す。














――――――――――――――――――――

オオキャミーですよろしくおねがいします。


どうもお久しぶりです。新学年が始まりようやく完全に適応しました。今は頭に円環が浮かんでいます。オオキャミーはいます


時間があればちょくちょく書き進めて、ようやくこの1話を産み落とすことができました。いや~大変だった。よろしくおねがいします。


まぁ、あと2、3、4……長くても5話でこの章は終了するんですけど。

とうとう次の章ではアトランティスを舞台に出きるのでね。胸がワクワクドキドキしてるんですよ。オオキャミーはここにいます。


次の話はあの村の人達、神狼教の人達を深掘りします。ベル本狼は出てきませんが是非お楽しみに!


そういえば最近馬に転生する主人公の物語(ファンタジー世界、人化無し、騎馬、軍馬)が頭の中で着々と何故か完成しつつあるんですよね。不思議ですね~


オオキャミーでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る