たまに気のせいなのか気のせいじゃないのか、自分を信じれなくなるとき……あるよね

女の子が死んでいた。


死因は多分、転落死。

体に争ったような形跡が無かったから自殺だと思う。

そもそも、野生動物とかに襲われるなんてことは、私の気配と匂いが染み付いてるから絶対にあり得ない。

魔物に襲われてたんだったら特有の魔力がしばらく滞留するからわかる。

でも、あのトカゲの魔力以外にそんなものはなかった。



つまり、自殺以外に考えれなかった。



昨日まで見て話していた子が、今日死んでいた。その事に普通の人なら何かしら感じるのかもしれない。


でも、ふと思ってしまった。そう思えてしまった。




あぁ、なんだただ死んだだけか……と。



魂のことを知っているから死にたいしての頓着が無くなっているのか。それとも、長い年月を生きたせいで、死に対して何も感じなくなっているのか。それについては詳しくはわからない。

そもそも、私には女の子がどうして自殺したのかも検討がつかない。


こんな時、普通の人ならどう感じるのだろうか。感情はどう揺れるんだろうか。

やっぱり悲しむのか。それとも何も感じないこの状態が正常なのか。きちんと女の子が自殺した理由もわかるのか。

それすらもわからない。


まぁ、死に対してどう思ってるのかは遥か昔から前世と変わっているのは感じてた。

それが今日、やっとハッキリとしただけで。








よし! うじうじ考えてても私のこの感覚が変わるわけでもないし。

まずはこの死体を野ざらしにしておくのは可哀想だし埋葬してあげよう。



『つくね、起きて?』


「…………ピ? ピピ!?」



最近つくねは眠ってばっかりだなぁ。

今回は女の子を紹介してなかったから。急に人間の死体がある状況になってて、驚かせちゃった。


『つくね、この子をつくねの炎で火葬してくれない?』


「ピ!」


つくねは心得たとばかりに大きく鳴いた。つくねの出す火には、火の魔力が含まれている。

最初、含まれてる魔力は火の魔力だけかと思ってたんだけど。最近になって、つくねの火には聖の魔力も含まれてることがわかった。

きっと、つくねの不死性に関連するものだと思う。

試しに聖の魔力の比率を高めてもらったんだけど。その火は鉱石や植物を燃やすことに変わりはなかったんだけど……なんと、生き物を癒す効果があった。

傷ついた生き物にその火を当てると、傷がふさがったんだよね。試しに私にもやってもらったけど、その火に当たってると傷が治るだけじゃなくて元気が湧いてきたんだよ。物を燃やし消す炎の対局の再生と癒しの炎だね。


それで、なんでその炎で火葬をしてもらうのかと言うと。なんとなく……かな。

私の炎で火葬するよりも、つくねにしてもらった方がいい気がしてね。多分つくねの炎に聖の魔力が含まれてることが関係してると思う。

なんでかはわからないけども。勘みたいなものだね。








崖の上にお墓を作った。

作ったお墓にはあの女の子の骨と、村だった場所にあった死体の骨を一緒に埋めた。

すでに、魂はここに無いとわかってはいるけど。それでも、心の奥のまだ残っている人としての心がそうした方が良いと言っている気がした。






『つくね……つくねは、優しいよね』


「ピ?」


『つくねは人が死んだとき…………いや、やっぱりなんでもないよ』


「ピー?」


『うん、大丈夫だよ。そんなことよりも、今までつくねを連れていってなかった、あの村に行こうか。きっと、つくねも気に入ると思うよ』



いつまでもズルズルと引きずるわけにもいかないし。気分を変えるためにも、今までつくねに教えるだけ教えて、連れて行ってなかったあの村に連れていこうと思う。


あの村には冶金技術もあるし、鍛冶が好きなつくねも気に入ると思うんだよね。

この前育てたエルキルが相手をする、王の金ピカの鎧と武器もあの村で作ってたはず。

王の名前ってなんだっけ。まぁいいや。



オリジナル空間魔法:神出鬼没の門ワープゲート



つくねを頭に乗せると、ワープゲートを潜り抜けた。


潜り抜けたとたんに一気に風景が変わる。

ここは村の少し離れたところで、小高い丘になっているから、村のほぼ全体を見渡すことができるようになってる。

まだ、所々に雪が残っていて白い斑点のようになってるね。この村は標高が少し高いところにあるから、ほんの少しだけ雪が残ってたりするんだよね。


じっくりと村を見てみると、明らかに文明のレベルが中世の少し前くらいの家が建っていたりする。

意味がわからない……一体どこからこんな建築技術を持ってきたの? まるで世界のありとあらゆる技術を集めてきたみたいだよ。まぁ、遠くと情報を伝達する手段なんてないから、そんなことはありえないだろうけど。


思い付いたの? だとしたら頭良すぎない?


それにしても、昔と比べるとこの村も大きくなったなぁ……人も増えたし。なんだか、動物のパーツが生えてたり、空を人が飛んでる気もするけど……気のせいだ。気のせいに違いない。きっとそうだ。

人に翼が生えて飛ぶなんて、そんなことあり得ない。


あ、数人が私に気づいたみたいだね。

そろそろ向かおうか。






村の中心のようになっている広場に移動した。

周りを見渡すと私を取り囲むようにして村の人達が跪いている。

続々と集まってくる人達を見ていると、周りとは少し違う質の良さそうな服をきた人が歩いてきた。

村長だ。


エルキルと会うときに案内してくれた村長が私の元へとやってきた。



神狼フェンリル様お久しぶりでございます。エルキルの件ではありがとうございました。私共のために神狼フェンリル様の手を煩わせてしまい申し訳ございまけん」


『まぁまぁ、そんな畏まらないで。そんなことよりも、前回から何か変わったこととかあった?』


「はい、これと言って大きく変わったことは無いのですが。強いて言うなれば我らの中で派閥ができたと言うことでしょうか」



派閥? 派閥ってアレ? 同じ仲間の中でも別れるアレ?

この村の人達って仲良いから、そんな派閥とかできたりするとは思わなかったなぁ。

もしかして私を最高神として認めるか認めないかみたいな宗教的な派閥?

一応、神狼教ってエンリちゃんとかアルルちゃんとかエレスも神の内1人として数えられてるし。


さすがに無いか。


『どんな派閥があるの?』


「それはですね……飛ぶための翼は、鳥の翼か蝙蝠の翼どっちが格好良いかというものです」


『……え?』




は?




……なにそれ。

え? くだらなぁ~……え、いや待って。

本当に言ってるの?


村長の顔を見ればとても真剣な表情をしている。


『え、あのちょっと待って。どっちが飛びやすいかとかじゃなくて?』


「はい、どちらが格好良いかです」


『えぇぇ……?』


神狼フェンリル様。今、とてもどうでも良いと思いましたね? しかし、これはいくら我々の神と言えども譲れぬものなのです!」


『え、いやうん。まぁ、思ったけどもそこまで?』



本当にどうしよう。

とてっっっっつもなくどうでも良い。



「良いですか? 我らが大いなる神よ」



急に呼び方どうしたの。



「格好良いのか、格好悪いのかはとても大事なのです! まず! 我らが神! 神狼フェンリル様はとても格好良いです! 神々しいそのお姿は誰が見たとしても感動を抱くでしょう」


『え? あ、うん? ありがとう?』


神狼フェンリル様にお聞きします。人の目の前に現れるときに、良い印象を与えられるのは格好良い方ですか? 格好悪い方ですか?」


『え? え~っと……格好良い方?』


「その通りです! つまり、格好良い方がたぶん良いのです!」


『たぶん……』



なんだろう。この村の人達って頭は良いはずなのに……なんでこうなんだろう。

これがこの村の人達のデフォルトなんだろうか。

周りの人達を見てみても、村長に対して頭のおかしい人を見つめるような目線は一切無く。

逆に共感するように首を縦に振ってたり、拍手をしている人までもいる。


やっぱり頭おかし。


内心呆れていると、村長がやれやれとでも言うように手を頭に当てて周りを見渡した。



「まぁ、どれ程争おうとも。鳥の翼が一番ということに代わりはないのですがね」


「「「うぉい! ちょっと待てぇ!」」」



この村長とんでもないこと言い始めたんだけど。


村長の発言に対して、おそらく鳥の翼じゃない派閥の人達が揃って声をあげはじめた。

それに呼応するかのように、広場がだんだんと騒がしくなってきた。



『まぁまぁ、落ち着いて。それぞれの良さがあるってことじゃダメなの?』


「ふぇ、神狼フェンリル様……しかし、いや。我らが神がそうおっしゃるのならそうなのでしょう。……皆の者よ! ひとまずは停戦としようではないか。しかし! いずれ、またいつの日か。必ず決着をつけるとしよう!」



パチパチパチパチパチパチ!!


なんで拍手が巻き起こるの? 拍手喝采じゃん。目の前に君達が崇めてる神いるよ? 良いの? 放置して良いの?


なんか……久しぶりに疲れた気がする。

女の子が死んでも揺らがなかった心が疲弊してるよ。


なんだかこの感覚も久しぶりだなぁ。

とりあえず、つくねを紹介しよう。



『一段落ついたところで悪いんだけど。紹介したい子がいるんだよね』


「ほほう、昔の記録にあるように人の子を拾ってきたのですか?」


『いや、今回は私に似たような子かな。人間じゃないよ。じゃあ、つくねを出ておい……』







村の人々につくねを紹介しようとしたその時。


私の魔力探知が、どこかであり得ないほど膨大な魔力が瞬間的に広がったのを確認した。


何? 今の?


私の魔力探知は魔力溜まりを発見するために、一定以上の量の魔力を感知するようになっている。

そのため、魔力溜まりが発生すると瞬時にわかるようになっているのだ。

だけど、膨大な魔力を感知したのはほんの数瞬。今は先程の魔力はなんだったのかと言わんばかりに一切の反応がない。


気のせい……?

いや、でも確かに魔力を感知したはず……。

魔力溜まりの爆発?


魔力溜まりは魔力が一ヶ所に溜まることで発生するけど、魔力が溜まりすぎると周りの魔力がより薄いところに流れるっていう性質がある。

その流れ出すときに、爆発するようにして一気に周りに広がるんだよね。

でも、魔力溜まりが発生してたのなら私が気づくはず……どういうことなの?


しかも、気のせいじゃなかったらさっきの魔力。


魔法を使ったかのような魔力の動きだった。



神狼フェンリル様……? どうかなされましたか?」


『あ、いやなんでもないよ』



なんだったんだろう……気のせい?

いや、でもなぁ……?


う~ん、まぁ良いや。とりあえず先につくねを紹介しよう。考えるのはそれからでも別に良いよね。






────────────────────────────

ウオオオオオオオオオオオオオオオキャミッ!


どうも、修学旅行に行っていたオオキャミーです。全身筋肉痛に悩まされながらも頑張って書ききりました。

そろそろ自分が3番目くらいに書きたかった所がやってきます。

やっとだぁ! ここが終われば紀元前も終わるっ……はず。


この小説が面白いと思っていただけたら是非♥️などで応援してください。がんばります。


オ「エタだけはイヤだ!」

 「エタだけはイヤだ!」


帽子「続行!」


オ「いやったぁぁぁ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る