気力がなければなんにもできないよね

『で、君はなんでこんな人が集まる場所から離れたところで倒れてたの?』


「やっぱりお前が話しかけてるのか……?」


『そうだよ~目の前の真っ白で美しい狼が話しかけてますよ~』


「……自分で言うのか?」



はい、私の目の前にいるのは食べ物を食べてすっかり元気になった少年だよ。

本当にただの空腹で倒れてたみたいだね。

いや、足とかを見たらだいぶ傷ついてるし、何日か休まずに歩いたと考えた方が良いのかな?



「俺が倒れていた理由か……狼なら別にあいつらの仲間なわけないよな……」


『あいつら?』


「……俺は、逃げてきたんだよ」


『何から?』


「俺を生け贄に選んで、森に投げ捨てようとした連中からだよ」



そこから語られたのは人間の下らない思想による下らないことだった。まぁ、当の本人にとっては堪ったもんじゃないだろうけどね。


なんでも、少年は私がさっき見つけた集落みたいな所の反対の、森の中の集落で暮らしていたらしく。その集落では狩猟をして暮らしていたらしい。

少年がいた集落では自然信仰? 精霊信仰? みたいな感じで自分達よりも上位の存在=自然みたいな認識で、自分達を生み出したのも自然だし、他の生き物を生み出したのも自然という認識だったらしい。

要するに自然超ラブ集団ってことだね。

少年はその事に少し、いや結構疑問を思ってたらしいけども。

まぁ、だからなのか。

ある日少年は少年の両親を含めた大人達が、自分を自然の生け贄にしようって会話を聞いたんだって。

なんで生け贄を必要としたのかというと、聞いた感じでは、ここ最近動物が減っていて生け贄を捧げることによって生き物をさらに増やしてもらおうって魂胆っぽかった。


まぁ、生き物が減った原因は絶対にその集落が原因だろうね。少年にいつもどのくらいの獲物をとるのか聞いたら結構多くとってたし。

多分乱獲したことによって、その森の動物が逃げ出して減ったとかそんなところじゃないかな。


まぁそれで、そこまで信じてもいない自然への生け贄になって堪るかと逃げ出そうとしたら、大人達に見つかってそのまま逃走劇が開始。

なんとか大人達を撒いて、数日間木の実や雨水だけでここまで逃げてきたらしい。


よくやるよ。

すごい根性だね。



『ところで少年』


「なんだ?」


『少年の名前を教えてくれない?』


「……名前? って何?」


『え?』


「え?」


『名前って言うのは人それぞれにある呼び方だけど……まさか、知らない?』


「人それぞれの呼び方……俺が元いた所じゃ、そんな1人1人に呼び方なんてつけなかったんだけど」



わぁお。いや、確かに名前をつけない村とか集落もあるんだろうなとは思っていたけども。

まさかこの少年の集落か村がそれだとは。



『そっかぁ……じゃあ、とりあえずは少年って呼ぶね』


「もう呼んでただろ」


『まぁまぁ、細かいことは気にしないで。ところで少年。少年はこれからどうするつもりなの?』


「これからか……そう、だな。……あまり、人とは関わりたくない。自分以外は信用できない。それに、外から来た奴を仲間に入れる奴らがいるとは思えない。だから、しばらくは1人でこの森で暮らすと思う」


『ほほ~』


「そういえば、食べ物をくれたのはありがたいんだが。自分は何も返せるものはないぞ?」



この少年、律儀だな~返せるものがあったら返してたんだ。まぁ、アイテムボックスに大量にあるから別に返さなくても良いんだけどね


まぁ、そんなことよりも。私、この少年と出会ってからずっっっと気になってることがあるんだよね。

この少年自覚あるのかな?



『少年、少年。別に返すとか考えなくて良いよ。そんなことよりもさ、少年。……君、を操ってる自覚ある?』


「気?」


『そうそう。正確に言えば気力だし、操ってると言うよりかは体内を巡らせてるってのが正しいんだけどもさ』



気、それは魔素や魔力とはまた違う力であり。私がたまに練習している念動力も気の力だ。


てか、なんなら私は起きてるときも寝てる間も、一日中365日、一度も休まずに無意識レベルで気を巡らせているよ。

気はエネルギーだ。

気力が減れば元気もなくなる。逆に元気な時は村の人間やエレスの国の人間ですら気力が増える。

生命の体や精神と、気力は切っても切れないほど密接な関わりがある。


生命と言ったけど気は動物だけじゃなく植物にも存在する。

さらに言えば大地の奥深くにも気は存在する。

マグマは莫大なエネルギーがあるから、そこに気も存在するのだ。そこに気が存在するからマグマがあるとも言える。


長々と語ったけども。結局のところ気と言うのは魔素が存在するまえから地球……いやこの次元に存在するエネルギーってこと。


気というのは空気中にも薄く漂っている。だって、風もエネルギーだしね。

基本的に気と言うのはご飯を食べれば自然と湧いてくるし、寝ても湧いてくる。

それ以外にも呼吸をすることによって空気中に漂っている気をほんの少しだけ、無意識に取り込んでいたりもする。


さて、ここでもう一度少年を見てみよう。

主に人間の中を流れる気は、ほとんどの人が停滞している。

私は今まで人間と出会った中で、気を自分の力で動かせているのは1人しか見たことがない。

まぁ、その1人っていうのがアルルちゃんなんだけども。あ、フェンリルオーラは別ね。あれは純粋な自然界に存在する気とは全く違うから。私の力混じってるし。

なんなら神の力が混じってるから。あれに適応したあの村の人たちは、めっっっっっちゃくちゃ微量ではあるものの神の力が使えるって言っても過言ではないんだよ。


また脇道にそれちゃった。


まぁ、今まで1人しか気を操ってる人を見たことないんだけども。今回でこの少年が2人目になった。



「……わからない。でも、あいつらと暮らしていたときより疲れにくい……気がする」


『いや、確実に疲れにくくなってるはずだよ。気を常に体内で巡らせてるし。なんなら今も呼吸にあわせて、空気中から気を取り込んでるしね』


「そうなのか。気づかなかった」



少年はきっと元から気を操る才能があって、大人達から逃げるときにその才能が開花したってかんじかな。

少年をこのまま放置して行くのもあれだしな~どうしよっか。

まぁ、気の使い方だけ教えてあとはバイバイで良いかな。


『少年、少年。君は気を操りたい? 気を自由自在に操れるようになったら、今私がやってるように、思念を直接伝えるようなこともできるし。こんなこともできるよ』



少年に思念を伝えた直後周囲に降っていた木葉無数の木葉の動きを念動力で止めた。

少年はすぐに異変に気がついたようで、驚いたように辺りを見回していた。


ちなみに私が思念を届けてるやつだけど。実を言うと私のアレは、正確には気だけじゃなく魔力も使ってる。

性能には差程違いはないんだけど、魔力の力で距離を伸ばしてるんだよ。

まぁ、だから気だけで何の問題もない。



「これが、俺にも……?」


『うん、できるできる。少年には気に才能があるみたいだし。なんなら、今も初歩的なやつならできると思うよ』


「初歩的なやつ? それはどんな?」


『こう、お腹辺りにギュッと力を入れる感じでグワァーって体の中で速く気回すイメージでブワブワ! ってすれば身体能力が上がるはずだよ。とりあえず気をハッキリ感じるために、私に触ってくれない?』


「……グワァ? ブワブワ? と、とりあえず触れば良いんだな? おぉ……! フワフワだ……」



少年は恐る恐る私の頭に手を触れた。

フフフ……そうでしょうそうでしょう! 私の毛はなにもしなくてもフワフワのままだけど。フワッフワになるように専用の魔法を開発して毎日のように使ってるからね!

それにしても、そんなに怖がらなくても良いのに。そういえば昔エンリちゃんに遠回しに、初めて見ると神々しさは感じるけど少し怖いかもしれないって言われたことがあるなぁ……私って怖いの?



『じゃあ力抜いて~? いくよ~』


「フワフワだ……フワフワだ…………フワフワだ………………」



なんか心ここにあらずみたいな感じだけど良いか。

私は気を操作すると少年の体内の気に干渉して勢いよく廻し始めた。



「フワフっわぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」


『は~い力抜いてね~。今感じてるのが気だよ~。この感覚を覚えてね?』


「ちょちょちょいちょいちょい! ややややややめめめやめやめやめめめやめめ!」


『え? 何?』


「うをぉぉぉぉぉ!? かかか体のな中中か中かかかかから声ががががぁ!?」



あ、気絶した……少しやり過ぎちゃったかも。まぁ、体に問題無いようにしたから慣れない感覚に驚いて気絶しちゃったんだろうな。


多分。


さて、目覚めるまで待っとこ。


「ピー!!」


『あ、つくね。ごめん忘れてた』


なんか……ごめんね。



────────────────────────────

おぉ………神よ………オオキャミーよ! つって!


どうもオオキャミーです。

新年明けて11日が経過したって本当ですか?

いや~気づかなかった。

正月は久しぶりにベースを弾いたり、ひたすら絵を描いたり絵を描いたり絵を描いたり絵を描いてました。

人間の体ってなんでこんなにもえっちなところが沢山あるんでしょうね? 最近は足の筋肉にハマってます。


今年までに完結………するかなぁ?

せめて紀元前は抜け出したいですね。

紀元前までの、この後の大きなイベントは■■■■■■■■■だけですよ。

その後は■■■■■■とか■■■■とかイベント盛り沢山ですからね~。


てなわけで、今年もよろしくお願いします!

この小説が面白いと感じていただいたのなら是非小説のフォロー、♥️や★で応援してもらえると嬉しいです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る