原初のドワーフ族とエルフ族
ドルフの亡骸は火葬された。
火葬しようと提案したのは私。
火葬についてエルスは最初から賛成した。
……でも、つくねが嫌がった。
ドルフが死んだことを受け入れられなかったらしい。つくねは、ドルフの亡骸の上でひたすらジッと座って動かなかったよ。
そこから私はひたすら説得を繰り返した。
つくねは、亡骸をそのまま放置しておくと腐ったりするということを知らなかった。
その事を教えると、今にも泣きそうな表情をしながら火葬することに賛成してくれた。
……つくねは自身が死んでも復活できるから、生き物の死が訪れた後というものを知らない。
食事をしなくても生きていける体、自身の気配で生き物は逃げていく。例え自身を襲ってきた生き物がいたとしても炎で灰になる。
つくねは今まで生きてきて死んだ後がどうなるのか知ることができなかったんだよ。
そりゃあ死体が腐敗するなんてわかるわけないよね。
つくねも辛いだろうに自らの炎で火葬をしてくれた。多分、ドルフが死んだという事実を受け止めるためだろうね。
ドルフを火葬した後、残った骨は私が回収したよ。そのまま地面に埋めたりしたら、ドルフの
体内にたまっていた膨大な魔力がどんな周りに影響を与えるかわからないしね。
喉仏は小さな袋を作って、形見としてつくねにあげた。すでにあの金槌もあるけど、もっとドルフのことを感じれる物があればって、つくねから私に伝わるほど強く思念が伝わってきたからね。
小さな袋に入れた後に紐を通して首にかけれるようにしてあげたら嬉しそうにしてた。
そんなこんなで、つくねを説得したり火葬したりして、あれから1週間ちょっと経った。
こんな風に過ごしてる間にちょっとした問題が発生した。
洞窟の民と森の民の長同士が仲違いしたせいでそれぞれの人々同士でも仲が悪くなってしまったんだよね。
森の民の長は言わずもがなエルスだけど、洞窟の民の長はドルフと仲が良かった人の子孫なんだよ。
それで、ドルフの死が知らされたときに、それぞれで考えが違ったんだよね。
エルスはどうやらドルフと個別に話していた夜に、話し合って決めていたらしいんだけど。
エルスは森の民は森の民として独立するという主張、洞窟の民の長はそれに対してドルフを裏切るという考えらしい。
ドルフはすでにそれを了承してたけど洞窟の民の長は知らない。本当にその事を言われたのかは洞窟の民の長にはわからないし、証言しようにも証人として存在するのは狼と鳥。
まぁ、私のことはドルフと一緒によくいたし大きさ自在のすごいナニかって認識っぽいからいけるかもしれないけど。
まぁ、これは私が口を出すべきことではないよね。これはエルスと森の民の長の問題だし。
それから数日が経った。
エルスから話があるからと呼び出された。
「ベルさん、我々森の民と洞窟の民は話し合いの結果。我々森の民はエルフ族、洞窟の民はドワーフ族として交流は保ちながらも別々の民として暮らしていくことに決まりました」
わぁ……えるふと、どわーふだぁ
まじか……エルフとドワーフってこうやって誕生したんだね。絶対に違うけど。
『えっと、なんでエルフとドワーフって名前なの?』
「はい、それはですね。僕の名前、エルスとお父さんの名前、ドルフを合わせてエルフ。森の民の長、ドワイルとお父さんの名前でドワーフとなりました」
『へ、へぇ~』
結構ちゃんとした理由があった。
聞くに、こんなことで争ってもドルフが悲しむだろうってことで、交流は保ちながらもほぼほぼ関わり合いにならないようにしようってことになったらしい。
まぁ、平和的に解決できたのなら良いや。
これで同じ者を慕う同士で永遠に仲違いになったら悲しいもんね。
とりあえず、私はドルフに許可を貰ったことをやらなければいけない。
今日はそのためにエルスに呼び出されたついでに洞窟の長も呼んだんだから。
「それで……話は終わったか」
『うん、待っててくれてありがとうね。ドワイルだっけ?』
「あぁ……」
「あの、ベルさん。それで僕達にしたい話ってなんでしょうか」
『えっとね。君たち森の民と洞窟の民には私の神域に移り住んでもらいたいんだよね』
「「?」」
あ、毎回忘れちゃうけど、いきなり神域って言ってもわからないよね。
前はつくねとプロテウスに説明するために縄張りで説明したけど。
今回はどう説明しよう。
いや、今回は2人とも理解することができるか。
それにしてもドワイルは、ドルフやエルスと比べてあまり喋らないなぁ。こういうのを寡黙って言うんだっけ?
まぁ、いいや。
『えっとね、私が作り出したここは違う別の場所だよ』
「!」
「え? つまり、ベルさんが治める場所ということですか!?」
『おぉ~……多分そう! まぁ、私の自由にできる場所って思ってくれたら良いよ。安全な場所も用意できるし、ドワイル』
「?」
『ドルフから鍛冶のやり方を一応学んでるんだよね?』
「あぁ……あの人からは…………沢山のことを……学んだ」
『そっか……神域だと鍛冶がやり放題だよ? ドルフからあまり鍛冶をしすぎるなって言われてたでしょ?』
私はドルフに鍛冶をするとしても作ったものを再利用したりしてあまり地面を掘らないように言っていたんだ。
あまり沢山掘りすぎると、後世でその痕跡が見つかっちゃうかもしれないからね。
でも、もし神域に移動するんだったら後世でも神域は絶対に見つからないから安心安全なんだよね。
私の精神衛生上的にも素晴らしい。
「……少し…………考えさせてくれ」
『わかった。じゃあ明日まで待つよ』
「……ありがたい」
ドワイルはそう言うと部屋から出ていった。
エルスはどうだろうか。
「僕は、お父さんと過ごしたここを離れるのは少し寂しいです。でも、気持ちを入れ替えるという点では賛成です。その、神域……? というところは森がありますか?」
『森だけじゃなくて、大自然も広がってるよ! なんてったって私が1からこだわって作った世界だからね!』
「なるほど、ではドワイルさんが決めるまで僕も考えてみます。まぁ、多分その神域とやらにいくと思いますが」
『わかった、じゃあ明日ね』
「はい、では」
『ばいば~い』
ふぅ、今のうちに神域を広げておこう。
そうだなぁ……大きさは地球よりも少し大きいくらいで良いよね。
空間交換
◇ ◇ ◇
よし、久々の神域だ。
あの子達には今日は会わなくても良いね。
エルス達をこっちに連れてくるときに会うだろうし。
さて、私が今いるのは現在神域を広げた端っこ。その奥は真っ暗な空間が広がっている。
星がない夜の空を想像すれば良いと思う。
さて、久々に本気を出そうかな。
龍脈の代わりは私で良いね。
+
+
魔術陣補助 大地操作魔術:
+
結界魔術陣:空間束縛結界
+
魔術陣魔力規格解放
∥
私が魔法を発動すると目の前の何もなかった空間に一瞬で大地が誕生した。
それだけではない。
ここから見ていたらわからないけど。
神狼眼を使って全体を見てみると。
一部を除いて大地が剥き出しの星ができていた。
一部というのは今までできていた神域だね。
岩が剥き出しになっているところは今完成したばっかだからだし。しょうがないね。
私が今発動した魔法は、龍脈接続型魔術複合オリジナル魔法っていうもので。
今回は本来だったら龍脈に接続するのを私自身に接続して発動したものだよ。
龍脈は地球にあるからね。
空間を繋げば地球の龍脈を使えなくはないけども、私に直接繋ぐ方が断然楽だね。
まぁ、とりあえず地下深く掘っても裏側に出ちゃって落っこちる! なんてことはなくなったね。
今まで神域は地球平面説状態だったし。
さすがになんの星も夜空に浮かばないのもあれだし、今度沢山の星を作って配置しておこう。
……そうなると地球がある宇宙を少し観察して真似もしていきたいね。
さて、神域の時間と向こう側の時間の流れをずらしたから、もう向こうでは1日が経ってるはずだね。
じゃあ、空間交換っと。
ちゃんと神域に移動するって言ってくれれば良いなぁ……今回拒否されたら次の世代まで待つしかないもんね。
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