後に神造の兵器と呼ばれる物
無事にドルフの望む合金を完成させたあとに金槌を作ってしばらくたった。
最近、ドルフの様子がなんか変なんだよね。
いや、いつもおかしいんだけどさ。
何と言うか、無理してるみたいな? ふと気づいた時に見てみれば目に覇気がないと言うか。でも、話しかければいつものドルフに戻る。
最近はそんな調子がずっと続いてる。
エルスや洞窟の民、つくねにはそんな姿は見せてないんだけど。やっぱり無理してる感がある。
まさか病気? いやでも、ドルフが風邪引いたり怪我したところ見たことないしなぁ。
一応あの薬飲ませとこうかな?
あの、飲んだ生き物のもっとも健康な状態の未来を持ってきてその未来を確定するついでその副次効果としてちょっと回復するって薬。
実際はちゃんと元気になったあとに、安静にして体力回復しないとなんだけどね。
飲んだあとに安静にしてれば一日もたてば自身の健康な体が戻るってわけ。
安静にしてなかったら治るのが遅くなるってだけだけどね。
体表に塗れば擦り傷や火傷が治る未来があれば治るし。
飲めば自身の内蔵が良くなる未来があれば治る。本当にただそれだけの物だよ。
本当の回復薬とかなら、そんなことしなくて良いのかもだけど。
もし飲んで元気になったらドルフが元気になる未来があるってことだし。
元気にならなかったらずっとこの調子か……あの時のエンリちゃんみたいに元気になる未来が1ミリも存在しないってことになるか。
どうしよう。
飲ませようかな。
まぁ、ドルフに聞いて自分で飲むって言ったら飲ませようかな。
石でできたコップを用意して、中にその液体を満たした。
『ドルフ~回復薬的な体の調子が良くなる飲み物あるけど飲む?』
鍛冶場で鍛冶をするわけでもなく、火を眺めていたドルフに声をかけた。
「……む? あぁ、ベルか。体の調子が良くなる……な。いや、良い遠慮しておこう。それに、儂は別に悪いとこなどない」
『……そっか』
どうしよう、この薬。
飲むか。
ゴックンとな!
ふぅ、相も変わらず何の味もしない。
この薬も、原材料の薬草がなくなったからもう2度と作れないんだよなぁ……まぁ、人が一生かけて毎日飲んで、飲み干せるか飲み干せないかの量あるから良いけどさ。
ちなみに私はこの薬にたいして耐性をつけてる。だからこの薬を飲んでも効果がない。
この薬と対になるような薬もあるんだけどそっちも耐性をつけてる。
そっちは死ぬ可能性を持ってくるってやつ。
要するに即死毒。
耐性って便利だよねぇ。
状態異常無効もお酒には酔うけど絶対に酔いつぶれないし。
まぁ、そんなことは置いといて。
……ドルフどうしたんだろ。
「お、そうだ。ベル、お前さん随分と前に物を沢山持つことができる腕輪のことを言ってたよな」
『え? あぁ、異空間生成と空間接続、空間操作の魔術陣を石とか木に刻めば、沢山の物を持てるようになるよ。重さも感じないし』
「そうか、じゃあこいつらを収納するための腕輪でも作るかな」
ドルフがそう言って取り出したのは、赤っぽい金属に金の装飾が入った芸術品とも思えるような金槌と、黒く鈍く反射しながらも表面をよくよく見れば様々な色が反射してうっすらと虹色に所々輝いている黒い金属の球体。
そして、叩く部分からほんの少し電気が漏れだしているハンマーだった。
「さすがにこいつらを常に持ち歩くわけにはいかねぇからな。ベル、こいつら作ったときにできた合金まだあるだろ? それ使うぞ」
ドルフはそう言うと金床の前に行って合金を熱し始めた。
「今回の合金は弾力を持たせなくて良い。だから、ただただ輪を作る」
ドルフはそう言い金槌で熱した合金を叩き始めた。
今ドルフが加工してる合金はこの1年間作り出してで発見した新しい合金だ。
ドルフが「こいつら」と呼んでいた道具も全部合金でできてる。
ただの金属なわけはなく、全部マジカルな金属だ。
一つ一つ、どれ程マジカルで凄いのか説明しよう。
まず、赤っぽい金槌は燃えないし溶けないという性質がある。
魔力がある炎なら燃えはする。でも絶対に溶けない。
この金槌が形を変えるには卓越した魔力操作の技術が必要になる。
エンリちゃんや私レベルのね。
この金槌の凄いところはさっき言った形を変えられるってところかな。
この金槌、武器にもなる。
魔力操作で槍にも戦鎚や戦斧、剣にでもなれる。しかも、全部が相手に火傷させることができるしね。
武器じゃなくても盾にもスコップにもなるから便利だよね。
この金槌はちょっと魔力の効果で圧縮されてるから見た目より重いし、この金槌よりも少しだけ大きいものにも変えられる。
変形させても魔力操作をやめれば、グニョグニョと形を変えて元の形に戻るし本当に便利だ。
ちなみに私のちょっとした攻撃に耐えれるほどには頑丈だ。
次のは叩く部分から電気が漏れ出てるハンマー。これは金槌と違って完全に攻撃用だね。
効果はさっきの金槌よりも単純。
雷が出る。
ただそれだけだ。でも、単純だからこそ超強い。
古い時代……まぁ、これから先に起こるちょっとした戦争にこれさえあれば、一瞬で相手を殲滅することができるほどに強い。
このハンマーには空間認識と空間接続の魔術陣が織り込まれていて。
このハンマーを持った者が自身より離れた場所に雷を落とせるようになってる。
あと大きさが変わる。
ちなみに、これも私のちょっとした攻撃に耐えれるほどには頑丈だ。
最後に、黒いけどよくよく見ると表面が綺麗な虹色に見える黒い球体。
これはヤバイ。
さっきの2つのように派手な効果はないけど。
あの2つを凌駕するほど、とんでもない物だ。
この球体。第一前提に魔力操作が使えないと使い物にならない。
それも、あの金槌とは比べ物にならないほど卓越した魔力操作……私ほどの魔力操作ができないと、ただの無用の長物だ。
玄関とかに飾っておけば良いんじゃないかな。
この球体は魔力の効果で、これまた金槌とは比べ物にならないほど金属が圧縮されてる。
さらにこの金属、合金なんだけど。この合金の効果でさらに圧縮された金属が圧縮されてる。
この2つの圧縮の効果を解いたらここら一体、直径5kmほどの範囲が金属で溢れ変えるよ。
もちろん洞窟の民も森の民も金属に潰されて圧死するけどね。
ドルフは……なんか耐えそう。
まぁ、それは置いといて。
この球体のことを一言でまとめるなら。
"万能"……かな。
その気になれば剣や槍といった武器から盾や鎧。さらには、要塞まで一瞬で形成することができるからね。
ちなみにこの球体が持つ特性は、物体をコピーできる。ただそれだけだよ。
コピーしておいた形状に魔力操作で形を近づけると、自然とその形状に変化して形状が固定される。
でも、驚くべきことに。
いや、この合金の材料から考えれば自然なことなのかもれないけど。
炎が出る剣をコピーすれば、コピーした剣からも炎が発生し。風を纏う剣をコピーすれば、やはりコピーした剣も風を纏う。
ヤバイでしょ?
箇条書きでまとめると。
・黒い球体
・必要な魔力操作の基準からして私しか扱えない。
・魔力操作的な問題から私でも気を抜くと一瞬で球体に戻る。
・剣、銃、盾、鎧、要塞。想像できる全てになることができる。
・武器の形状を記憶しておくことができる
・正体は様々な手段で圧縮された金属であり。圧縮を解放するとその場から直径約5kmの範囲が金属により破壊される。
うん、ヤバイね。
でも、唯一救いとも言えるのが私のちょっとした攻撃には耐えられないってことかな。
まぁ、壊れたら金属が流体になって集まって元の姿に戻るんだけども。
救いはなかったよ。
ちなみに、魔術陣を織り込んだこと以外全部ドルフ1人で作ってる。
だから。この効果もドルフが望んでつけたってことだよ。
なんてものを作っちゃってるのドルフ……
「ベル、とりあえず完成したぞ」
『お、じゃあ魔術陣刻み込むね』
「あぁベル、この輪はスコルに真似させろ。その方が良いだろう」
ドルフが1つの輪と黒い球体……スコルを渡してきた。
ちなみに命名は私。
スコルは私が
進化するときの説明文で別世界で太陽を喰らった狼って書いてあったからね。
ちょうど黒い球体が日食みたいだったし。
その説明からもらってスコルって名付けた。
輪をスコルに近づけ、魔力操作でスコルを操作した。輪をスコルに取り込ませるとより一層私の魔力を込めた。
すると、表面の虹色の光沢が強まり。
形を変え、取り込んだ輪と色以外そっくりな見た目に変わった。
よし、オッケー。
あとは2つの輪に魔術陣を刻んで……っと。
よし。これでオーケー!
「できたか。これで……これで本当の意味で儂の仕事はなくなったな。ベル……あの時、儂を助けてくれたことを。今一度ここに感謝しよう。ありがとう……!」
『え、どうしたの急に』
急にドルフが今まで見たことないような顔で私に感謝の言葉を口にした。
「ガハハ……何でも……いや。…………ベル、儂はもう……この先長くないだろう。今の儂は衰えていくばかりだ。衰える早さは日に日に早くなっている。……今でこそ鍛冶ができているが。恐らくそれも、もう少しで不可能になる」
『……ドルフ?』
「いやはや、すまんな……少しの間、眠る。儂も限界だ」
ドサッ
『ど、ドルフ!?』
ドルフがフラフラと倒れた。
急いで駆け寄って脈や顔色と言った容態を確認した。
少しだけ脈拍が早く。
呼吸も浅い。
まずい。
エンリちゃんが老衰で倒れたときに似たようなことになっていた。
ドルフ!
◇ ◇ ◇
実に、実に、幸せな人生だった。
思い残すことはない。
まぁ、強いて言うなればつくねとベルの反応だがな。
時間はまだ少し残っている。
残る時間であやつらと、沢山話しをするとするか。
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