万能の金属
~ドルフside~
儂はベルに出会ったとき……あの瞬間が一番今まで生きた中で運が良かったのだろう。
あの時あやつに出会わなければ今儂は生きていなかっただろう。鍛冶にも出会わなかった。
本当に……儂は幸運だな。
さて、次はどの金属をどのくらいの量で組み合わせるか……銅とベルから渡されたスズは上手くいった。だが儂の必要とする金属ではない。
「ピ!」
「おお、つくね。どうした?」
儂が次の合金について考えているとつくねが儂の膝に乗ってきた。
「ピピピ!」
「ガハハ! そうか! ただ乗りたかっただけか!」
つくねが何を言っているのかは詳しくはわからん。だが、感情が伝わってくる。
儂には子供がいないが孫のようなものだと思っている。エルスは別だがな。
つくねは賢いし見た目の割に力が強い。
よく鍛冶の手伝いをしてくれるしな。可愛いものだ。
この前なんか自分の体より大きい鉄鉱石をわざわざ鍛冶部屋に運んでくれた。
可愛いやつよ。
それに、火もわざわざ儂のために出してくれる。そんなことしなくとも儂が火を起こすと言うのに……可愛いやつよ。
さて、そろそろ鍛冶を始めるか。
「つくね、今から鍛冶をするが今日もくるか?」
「ピピピーピ!」
「ガハハ! そうだよな! じゃあ鍛冶場に行くか」
「ピ!」
早く儂の理想の合金を見つけなければ。
まったく。可愛いやつよ。
◇ ◇ ◇
~ベルside~
ドルフはお酒を飲んだ次の日から狂ったように様々な金属を合わせはじめた。
今日は見たことない金属が欲しいって言われたから探しに来た。頑張ろっと。
この前来た、つくね達を拾った未来でアメリカ大陸と呼ばれる場所にやって来た。
やっぱり今の時代は自然で溢れてて良い景色がたくさんだ。
私のいた時代じゃ北アメリカは6割が消滅してたし、南なんて8割が砂漠化して全土が嵐に覆われてたしね。
自然は良いものだ、守っていかねば(使命感)。
さて、北アメリカ大陸の北の端の端にやって来た。ここから地面を掘り進んでいく。
ではレッツゴー。
ホリホリホリホリホリホリ
ホリホリホリホリ───
お、早速金属発見!
これは……鉄鉱石か。
よ~しこの調子で金属見つけていこっと。
鉄! 次!
銅! 次!
石炭! 次!
また鉄! 次ぃ!
──────────
───
─
あれから一日中掘りまくって鑑定しまくったけど……新しい金属は見つからなかった。
ダイヤモンドとか金、白金、鉄、銅、スズ、アダマンタイトしか見つからなかったよ。
こうなったら……さらに深度を下げる?
それしかないよねぇ。
うぉぉぉぉぉりやぁぁぁぁ!!!
ドドドドドド!
あ、また崩落した。
そもそも、新しい金属ってあるのかなぁ?
アダマンタイトだけだったりしない?
案外作れたりしないかな?
私は崩落して僅かにできた空間のなかで色々な鉱石を取り出すと、魔素を染み込ませ始めた。
これでできたら良いなぁ~。
最初に反応したのは金だった。次に銅、鉄の順番で反応した。
おぉ~……でもただ魔素が定着しただけで変化はないなぁ。
あ、さっきの崩落したときに舞った粉塵が鼻に……っ!
ふぇ、ふぇ、ふぇ、ぶうぇぇっくしょい!!
ふぅ、スッキリした。ちょっと雷と冷気漏れちゃったけどしょうがない。
ん? おやおや?
さっき、くしゃみの衝撃で漏れた雷と氷の魔力に触れたのか金属が変化していた。
そんなすぐに変わるものなんだ。
金が雷をパチパチと纏い、銅が冷気を放ち、鉄も雷を纏っていた。
おぉ~これは成功なのでは?
これって、他の魔力でも成功するのかな?
さらに鉄を増やし、魔素を定着させた。
じゃあ、火、水、風、大地、闇、光の魔力を全部試そうか。
まず火。
なんか温かくなった。あと炎で燃えなくなったし、魔力でグニョグニョ操作できるようになった。
次に水。
湿ってる。ただただ湿ってる。あとこれも魔力でグニョグニョ操作できるけど炎と比べてとても動かしやすい。流体としての魔力が宿ってるからかな?
次々、風。
風が吹いてるぜぇ……そよ風が金属から吹いてる。魔力で操作でき(ry
つぅぅぅぎ! 大地!
固い! 以上! 強いて言うなら魔力でグニョグニョしづらい。
最後に光と闇。
光は輝いて闇は禍々しくなった。
光はなんか落ち着くかんじで闇は不安になる感覚がした。
魔力でグニョグニョできた。
どうやら魔素が馴染んだ金属は魔力に馴染みやすくなるらしい。
しかも、銅と鉄で比べたら銅は1種類の魔力が、鉄は2種類の魔力が馴染んだ。
どうやら金属によって馴染ませれる魔力の種類が変わるらしい。
ちなみにアダマンタイトは7種類全部馴染んだ。ゲーミング金属が誕生した。
アダマンタイトは万能なのかもしれない。
一応ドルフに持っていこうかな。
さて、掘っていこう。
ホリホリホリホリホリホリホリホリ
おや? この金属は?
しばらく地上に向けて崩落を繰り返しながら掘っていると見たことない金属が出てきた。
こういうときは神狼眼だね。
名称:ミスリル
わぁ、ここに来て新しい金属かぁ。
大きさは小さいけどドルフに持って帰ってあげよっか。
──────────
──
─
鍛冶部屋から金属の音が聞こえてきた。
いつも通りドルフは鍛冶をしてるらしい。やっぱり体力無限なのかもしれない。
『ドルフ~新しいの金属見つけてきたよ~!』
「なに!? 本当か!」
『とりあえず、自分で作り出せた金属が何個かあるから。それから試そうか』
「ほほう、新たな金属を作り出せたのか!」
ドルフが興奮してるのを横目に色々な魔力の金属を地面に出していく。
ゲーミング金属を出した瞬間「おー!」と興奮してたドルフが微妙な顔になった。
「なぁ……儂の見間違いじゃなければ気持ちの悪い光り方をしてる気がするのだが。なんだ、この……なんだ?」
『いや、私にも何でこんな光り方になってるのかわからない。でも、効果は凄いよ!』
「ほう? この赤い金属……ん? これは鉄? じゃあこっちの冷たい金属も……鉄か。で、この気持ちの悪い光り方をしてるやつは……アダマンタイトか」
『おぉ~すごぉ。よくわかったね』
「ふんっ。儂がどれだけ金属に触れてきたと思ってるんだ」
私もドルフと同じくらい金属に触れてるつもりだけど一切わからないね。
キングオブ鍛冶狂いの称号とキングオブスーパー凄い鍛冶職人の称号をあげよう。
『この温かくて赤い金属はね魔力がある炎でも溶けないんだよね。まぁ、柔らかくはなったけど液状にならないってことね。で、次にこの熱いなか湿ってるこの金属は「ちょっと待て」ん? どうしたの?』
「この赤いやつは溶けないのか?」
『う、うん。柔らかくなるだけだよ。ゴムみたい……って言ってもわかんないか。でも加工はできるよ』
「もっと詳しく」
『えっとね魔力を込めた炎で触れたら、その魔力を通して金属を自在に操ったりできるよ。他にも炎で溶けないから武器にしたら炎でも攻撃できたりするんじゃないかな。あと炎とか魔力操作をやめたら元の形に戻ったよ』
「そうか……そうか!」
うわぁ怖ぁ……ドルフの顔が今まで見たことないほど険しくなって目がギラついてるんだけど。
つくねがここにいなくて良かったね。
ん? そういえばつくねが……いや、いるね。炎の中でドルフの顔に涙目になってる。
哀れドルフ。
「見つけた。見つけたぞ。こんなに、都合の良いことがあるのか! ガハハハ! ベル! その金属は鉄だけか?」
『いや、アダマンタイトでもできるよ』
「ガハハハハハ! そうか! そうなのか!」
ドルフ……おかしくなっちゃった。
可哀想に、いつかはボケると思ってたけど……うぅ(涙)
「ボケとらんわ!」
『ありゃ、漏れちゃってたか。とりあえずアダマンタイトに魔素馴染ませれば良い?』
「いや、先に加工する。そのあとにそれはしてくれ。それに、その火に強い金属をさらに合金にする」
『了解~』
その日からドルフと一緒に新たな合金を作り始めた。種類、比率、全てを変えて試しまくった。
そして……
1年が経過した。
「間に合ったか……準備はできた。あやつらにも……置き土産はできた」
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