マジカルな鉱石にはマジカルな鍛冶だ!

助ける、というか仲間にするということを伝えたら、ものすごい安堵の感情が伝わってきた。



『つくね、プロテウス。今から私の神界に招待しよう』


「ピ?」


「グラゥァァ?」



あ~、いきなり神界って言ってもわかんないよね。

エンリちゃんの時も最初はわからなかったし。この子達に伝わるように言うとするなら……



『え~っと。私の縄張り? テリトリー? みたいなところかな?』


「ピ!」


「グルァァ!」



おおー良かった伝わった。

いちいち色んなこと説明するの面倒くさいし、私が今使ってる思念伝達の魔法教えようかな。

あ、そうだ。


え~っとここをこうして、こうすれば良いか。



『つくね、プロテウスこっち来て!』



2人? 2匹? を呼んで、今作ったものを渡した。



『えっとね。今渡したのは手紙なんだけど。神域にいる蛇みたいな子達と馬みたいな子にこれを渡してくれる?』


「ピ? ピッ!」


「グラァァ!」



今渡した手紙には日本語で2人のことを書いてある。

神界にいるあの子達には日本語を教えてるからなんとかなるでしょ。



「ピ……」



ん? つくねから思念が伝わってきた。


どうやら私といたいらしい。


謎である。あれだけ切り刻んどいてなんだけど。私と一緒にいようとするなんて、なかなか精神が図太いね。



『しょうがないなぁ。つくね、100年だけだよ? それ以降は神界に行ってもらうからね? プロテウス。ごめんけど先に君だけ神界に行っててくれない?』


「ピッ! ピピピピ!


「グルァァ……」



プロテウスは渋々ながらOKしてくれた。

つくねはと言うと。

なんか面白いダンスを踊ってる。


多分喜びの舞い的なあれだと思う。



『プロテウス、今から神界に移動させるから動かないでね。……よし、じゃあまた今度!』


「グルァァ!」



プロテウスを神域の草原に狙いを定めて転移させた。

流石にあの巨体を森に転移させるわけにはいかないしね。



『さてと。つくね、今から移動するから私の頭に……って、もう乗ってる』



一体いつの間に……まぁいいや。

アダマンタイトもアイテムボックスに入れたしドルフのところに向かおう。


じゃあつくねにも魔力を絡ませてっと。


転移。



─────────

──


転移したあと洞窟が見つからなくて。しばらくうろちょろしてしまった。

まったく。洞窟が迷子にならないでほしいな! 探すのに時間がかかっちゃったよ!


さてと。



『つくね。今から会うのは私の知り合いだから怖がったりしないでね。もしくは攻撃したりとか。ドルフ顔が怖いからねぇ』


「ピッ!……ピ、ピィ!」



ここに来る途中でわかったけど。つくね女の子だった。いや~男でも女でも違和感ない名前で良かった~!

もしアレキサンドグラディウスみたいな、イカつい名前つけてたら目も当てられなかったね。


洞窟の中に入ると相も変わらず其処彼処そこかしこでカンカンという音が聞こえる。

う~んやっぱり少し苦手だなぁ。

毎回ここにいる時魔素で耳栓モドキ作ってるからなぁ。もちろん透明のやつ。

私、多分音響兵器とか使われたら数秒動けなくなりそうだね。



『ドルフ! 君は完全に包囲されている! 大人しく出てきなさい! 早く出てきた方が身のためだぞ!』


「うるせぇ! フゥン!!」



ガコン!


いてっ! 痛くないけど!

全く。ふざけただけなのに殴ってくるなんて暴力的だなぁ。



「お前さんが洞窟全部に響くように言うからだろ!」



あ、思念が乗ってしまったらしい。

これは失敬失敬。

ドルフ少し怒りぎみだね。あんまりカッカしてたらシワ増えるよ?

まぁ、私はこの状態のドルフの怒りを沈めることができるアイテムを2つも持っている!

早速渡していこう。



『ドルフドルフ。落ち着いて? お土産持ってきたからさ。機嫌直してよ』


「フンッ……お前さんのせいで儂が周りから鍛冶狂いと思われてるんだがな?」


『え? それは事実でしょ。なに言ってるの?』


「む?」


『まぁ、そんなことは置いといて! はい、お土産一つ目! ドルフって鍛冶するとき、腰に巻いてる布以外何もつけてないでしょ。てか、そもそも腰布以外来たことないでしょ』


「なんだと? これは普通じゃないのか?」



oh……なんてこったい。ドルフは鍛冶をしすぎてるあまり、周りの変化に気づいてないみたいだ。

ドルフよ、周りを見てごらんなさい。腰布はドルフだけだよ……。

みんな上も着てるよ! なんなら森に住んでる人達はお洒落の概念も芽生えてきたからね!

まぁいいや。



『とにかく、今さらだけど。その格好で鍛冶をするのは目茶苦茶危ないからこんなものを作ってみました! じゃん!鍛冶服(エプロン風)!』


「ほう、見たこと無い素材だな。これがあれば安全なのか?」


『うん。その服には私の毛が縫い込まれてて。耐熱、耐火、耐刃、耐酸、思い付く限りのありとあらゆる危険なものから身を守ってくれるんだよ!』


「……は? いや待て待て待て待て待て! なんだそりゃ!? そんなに凄いものなのか!?」


『そりゃあそうよ! なんてったって

私の毛なんだからね!』


「そ、そうか。じゃあありがたく受け取っておこう」


ドルフは鍛冶服を受け取ると着方を聞きながらすぐに身につけた。

うわぁ、なかなかに見た目の破壊力凄いなぁ。

目の前に現れたのは腰布とエプロンだけ身につけた。


ゴリゴリマッチョ髭面強面おじさんだった。


しかも筋肉が凄いからエプロンがミチミチとはち切れんばかりになってる。

頑丈だから千切れることはないと思うけど。

もしかしたらプレゼントするものをミスったのかもしれない。



『えっと、次はこれね』


「これは? 鉄でもねぇな。銅にしちゃ少し光り方が違う」


『これはアダマンタイトっていう鉱石だよ。これで鍛冶をしようと思ってね』


「ほほうほう! 新しい鉱石か!」


私がアダマンタイトのことを説明すると、目にわかるように興奮し始めた。

そりゃそうだドルフは鍛冶狂いだしね。

一体なんでこんな風になったんだろう。鍛冶を教えた人は反省してください。


「ベル! 鍛冶場に行くぞ!」


そういうとドルフはドンドンと洞窟の奥に進んでいった。

こうなったらドルフは誰にも止められない。きっと頭の中には色んな案が思い浮かんでるんだろうね。

ちなみに鍛冶場は私が地下に作った。換気もしっかりしてあるから。

酸欠なんかにもなったりしない。


ドルフを追いかけて鍛冶場に行くと既に準備を始めていた。

そこは、マグマがドロリと流れうっすらと明るくなっていた。

部屋の中央の一番奥にはたくさんの武器が並んでいた。おそらく私がいない間に作ってた武器なんだろうね。

右の方を見ると改良した炉と金床が存在した。いつまでも私の身体を金床代わりにするわけにはいけないからね。きちんと鍛冶を始めて数年で金床を製作した。

私の骨も混ぜてあるから多分半永久的に壊れることはないと思う。


左を向けば大量の鉱石が転がっていた。

私が炭鉱の存在を教えたら、洞窟の民全員が食いついて数年で炭鉱を完成させたんだよね。

村の人達に続いて頭おかし。


そういえばらまだつくねを紹介してなかった……今紹介しちゃおうか。

ちなみに、つくねはさっきから頭の上でプルプル震えて口をポカンと開けてドルフに驚いていた。

まぁ、そりゃね。さっき私をドルフが叩いたところ頭だし。

しかも、ほんの数ミリ横をドルフの攻撃が通っていたんだもんね。

しょうがないしょうがない。


『ドルフ! ちょっと鍛冶を始める前に紹介したいんだけど』


「ああ? 誰をだ」


『この子だよ。つくね出ておいで』


ピッ……


「ん? なんか聞こえたか?」


『つくね、ドルフの顔がどうしようもないほど怖いのはわかるしドルフに殺されないか心配するのもわかるけど。挨拶しとかないとどうにもならないよ』


「おいコラちょっと待て」


ピッ……「ピッ!!」


ズボッ!


つくねは勇気が出たのか私の頭の上から勢いよく出てきた。

かわいいね。


「うをぉぉ! ビックリした。……こいつは鳥の雛か!」


『そうだよ。この子の名前はつくねって言って私の仲間になった子だよ。あ、ちなみにさっきドルフに殺されかけたし、私もこの子を一回殺してるし、さらに言うとあの昔ドルフが襲われてた虎と同じような存在だよ!』


「…………もう何も言わねぇ」


ドルフは額にシワを寄せて険しい顔をさらに険しくさせた。


「ベル、火出してくれ」


『はいよ』


ドルフに言われて炉に火を灯した。

ドルフは私の骨と鉄を混ぜた入れ物に、アダマンタイトを入れて炉に突っ込んだ。

さて、どのくらいの温度で溶けるかな。
















こやつ……溶けないだと!!

いや本当に。私、あれからずっと温度を上げ続けてるんだけど少しも溶ける気配がない!

今はもう周りに熱波がいかないように結界を張って熱し続けてる。


「ベル、一旦止めろ」


『え? わかった』


「こいつ、もしかすると溶けねぇってことはねぇよな」


『そ、それは……あるかも』


どうしよう。

ドルフと2人してうんうん悩んでるとつくねが熱したアダマンタイトに近づいていった。


『つくね、それ熱いから触らないように気を付けてね?』


「ピ? ……ピッ!! ピピピーー!!」


ボゥ!!


つくねがアダマンタイトの前に移動したかと思ったらいきなり口から炎を吹き始めた。


わぁお。

そういえばつくねって火の鳥だったね。

でも、いくら炎に強い鳥だとしてもなんの意味も………は?


アダマンタイトに視線を向けるとアダマンタイトがドロドロと溶け始めた。


「ピ!」


「……おい、ベル。こういう鳥とか虎はお前よりも強いのか?」


『いや……そんなことはないど。それに、つくねが出してる炎も普通の温度だよ……』



一体、どうなってるの?

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