でっっっっっか!! 説明不要!
次の魔物を対処すべく私は走っていた。
生き残ったもう一体。
私のあの攻撃を受けて生きているということは、何らかの特殊能力があると考えた方がいいね。
やっぱり再生能力とかかな?
ピーピー! ピヨピヨピー!!
もしかしたら、攻撃を無効化する能力とかを持ってる可能性もある。
そうなると、だ~~いぶ面倒くさいなぁ。
まぁ、何もわからないうちに文句垂らしてもどうしようもないけどさ。
一応魔物にも草食とか肉食があるから、草食性の魔物だったり、大人しい魔物だったら神域に連れていくという手もある。
ピピピピ!!!!
ココココ!!!!!
『痛い! 痛くないけど! でも痛い! 頭つつくな!』
ズボッ!
「ピ!」
私がそう言うと、私の頭の上からモフモフの毛を掻き分けて小さな鳥が出てきた。
そう、あの不死身の焼き鳥だ。
何故このような状況になっているのかというと。
あのあと、灰の中から出てきたヒヨコ状態の鳥を近くで見ようと顔を近づけたんだよね。
そしたら次の瞬間、凄い速度で私の頭の上に駆け登って頭の上を陣取ったんだよ。
で、振り落とそうと頭を振ったりしたんだけど。
私のモフモフの毛の中に潜り込んで、落とされまいと私の頭にしがみついちゃってさ。
そんなこんなで、別に害があるわけでもないから頭にヒヨコを乗せたまま次の魔物の所に向かってるって訳。
ついでに魔物の所に向かってるときに振り落とされないかなぁ……とか考えてたり。
なんだか段々情が湧いてきちゃった。
今のところ危険性は見られないし、
まぁ、だから次の魔物も安全そうだったら殺さずに神域に連れていこうかなって考えてたりする。
しばらくすると岩山が見えてきた。
とりあえず岩山の天辺から探そう。
さて、ここら辺のはずなんだけど?
う~ん見当たらないなぁ。もう移動しちゃった? もしかしたら凄く速い魔物で、私の攻撃を躱したから生きていたとか?
「ピー! ピヨッ!」
『あ、ちょっと急に降りようとしないで! 危ないよ! 結構高さあるんだから!』
急に元焼き鳥、もうヒヨコで良いや。
ヒヨコが私の頭から飛び降りた。
「ピ! ピピピピ!!」
ココココ!!
わぁ、急に地面つつきだしたよ。餌でも落ちてるのかな?
地面をつついては私の方を見て、またつついたと思ったら私の方を見てくる。
ん? 何か伝えたい?
今はヒヨコ状態だからなのか、それとも鳥だからなのかはわからないけど。あの虎みたいにはっきりとした意志が伝わらないから、ヒヨコの伝えたいことがよくわからない。
う~ん……地面をつつく、私を見る、地面をつつく、私を見る。
あ、ちょっと怒りだした。
しかも、イライラしてるからなのか私の前足をつつき始めた。
うん! さっぱりわかんない!
とりあえずこの岩山の周りを見て回ろうかな。
念動力を鍛えるついでに、ヒヨコを捕まえて私の頭の上に乗せた。
さて、とことこ岩山の周りを歩いてみるけど小鳥の一匹すら見つからない。ヒヨコを除いて。
バキバキバキッ!
そんな風に考えていると岩山の反対側で木々が倒れるような音が聞こえてきた。
魔物か!? と急いで反対側に走る。
『あれ? 何もない?』
「ピ!」
音がしたらしき所に来たけど、魔物どころか倒れた木すら存在しなかった。
ん~? あれ? 気のせい?
いや、でも実際に聞こえたしなぁ。
バキバキバキッ!
すると、また岩山の反対から木々が倒れる音がした。
えぇ……まさか反対側から向こう側に行っちゃった?
今度こそ!
いない!!
木も倒れてない! 変化無し!
もう、なんなの!?
今も反対側から木が倒れる音がしてるし!
怪奇現象? 怪奇現象なの!?
「ピィィィ!! ピッ!」
『あ、ちょっと! どこ行くの?』
ヒヨコがまた、急に私の頭から飛び降りたと思ったら岩山に向かって走り出した。
ん? また岩山をつついてる。
もしかして、岩山に何かある? だからさっきから岩山をつついてるとか?
私が気づかないで、ヒヨコが気づくなんてあるの?
ジー
うん、さっぱりわかんない。
どこからどう見ても岩山だね。来た時と同じで、見るたびに右側が大きな山が見える。
ん?
見るたびに右側が大きい???
私は3回くらい岩山を反対から見たり正面から見たりしてる。
その時も……
右側が大きな山のシルエットだった。
あれれれれれ????
おかしくない? 普通正面から見たときに右側が大きかったら、反対から見たときは左側が大きくなるはずだよね?
何? どういうこと? もしかして錯視的なあれ? トリックアートなの?
混乱しているとヒヨコが走ってきた。
「ピピピピピピ!!! ピーーー!!」
その表情は怒りに満ちていて、走る走る。
怒りの
そして、とうとう私の目の前に来ると。
跳んだ!
瞬間スローになる世界。
私の瞳にはヒヨコが足をこちらに向け跳んでくる姿がゆっくりと写る。
「ピーー!!」
『ギャーー!? 目がぁぁぁぁ!!!』
ヒヨコは驚きの跳躍を見せて私の顔面に飛びかかると、目に蹴りを入れてきた。
今回はちゃんと痛い! 別にダメージはないけど痛みはあるよ! 痛い!
痛覚無効化しとくべきかな?
『ぬえぇぇい!! 離れぬか痴れ者めぃ! 私はこれでも職業は神であるぞ!!! あ、痛いごめんって!』
1分ほど格闘して、なんとかヒヨコを顔から離すことができた。
「ピー……。ピーー!! ピ!」
ヒヨコの方を見ると小さな翼を器用に動かして岩山の方を指差し……指? 翼指し? してとにかく岩山に注意を向けようとする。
まったく、私もちゃんとさっき気づいたってば。
相変わらず岩山ってことはわからないし山の天辺は左側だし。
…………?
左?
もう一度山に目を向けると左側に天辺が存在する岩山があった。
もう意味わからない。
ここで悩んでいても仕方がないから岩山に向かう。
私の前の方をヒヨコが肩? で風を切るように堂々と歩いていく。
まぁ、歩幅が小さいから私は一歩進んでは止まるを繰り返してるんだけど。
前に行ったら怒るんだよね。
なんか、こう可愛く思えてきたよ。
このヒヨコ、どれだけ威勢が良くても目が少し怖がってるからね。実際のその態度の裏腹に真反対の感情を抱いてるから可愛く思える。
イラつきなんかも起こらないよ。
それにしても、怒りながら怖がるってなかなかに器用だなぁこのヒヨコ。
そんなこんなで長々と時間をかけて岩山にたどり着いた。
ヒヨコ、歩くんじゃなくて走れば良かったのに。そしたらもっと早く着いてた。
さて、どうしよう。
「ピー! ピピピ!」
ヒヨコの言ってることがわかれば良いんだけどね。
ヒヨコが今までよりも大きな声で鳴き始めた。
自身の出せるだけの大きな声を出そうとするかのように。
「グルァァァァァァア」
「ピー! ピー! ピピッ!」
ん? 何? 今の大きな地の底から響いてくるような音は。
音のした方向に目をやる。
岩山に目と口ができていた。
ん"!?
嘘ぉ……音しなかったんだけど!?
てか何? ヒヨコはこれに気づいてたってこと?
さっきの大きな鳴き声は、もしかして私に言ってたんじゃなくてこの大きな岩山に言ってたのかな?
しばらく岩山とヒヨコが話し続けていると岩山が形を変え始めた。
ゴゴゴゴゴ
変わるの!? てっきりあれが体なのかと思ってたけど。いやまぁたしかに、あんな体はあり得ないか。
ゴゴゴゴゴガラガラ!!
ちょっ!まっ……!
岩山が形を変え始めたと思ったら、大小様々な岩が大量に降ってきた。
あっぶな!? 今真横を通っていったけど!?
危ないから急いでヒヨコを私の下に潜り込ませた。
グヘェ! 頭にクリティカルヒットしたって! 痛っ! 痛くないけど!
あ、砂ぼこりが喉に……!
ゲッホゲホゲホ!!
砂煙がだんだんと晴れていき岩山の正体が全貌を現した。
でっっっっっっか!!
亀じゃん! しかもなんか顔が鎧みたいで格好いい亀! 甲羅も端っこがトゲトゲしてて格好いい亀!
岩山の正体は巨大な亀の魔物だった。
その大きさは私の最大サイズ(約50m)よりも少し大きいくらいと言えばわかるだろうか。とにかく、デカかった。
それと同時にどうして気づかなかったのかもわかった。
巨大すぎて近くにいると逆に気配がわかりにくかったのと、この大きさであり得ないほど隠密に優れているといことだ。
先程から亀が首を伸ばしたり足を上げたりしてるんだけど。
一切音がしない。
匂いも獣の匂いじゃなくて自然の香りがする。
唯一聞こえるのは、この亀の呼吸音だけだった。
「グルァァァァア!」
亀から意志が伝わってきた。
やっぱりヒヨコと会話してたらしい。
スッゴい恐怖の感情と、命乞いと、自分の有用さが一気に意思として伝わってきた。
この亀、なかなかに頭が良いね。
「ピ!」
いつの間にか亀の頭の上に移動していたヒヨコが私に対して頼むような、ついでに自分を助けて欲しいと言う意思が伝わってきた。
『ぐぅぅぅ。まぁ、いや……う~ん。えぇぇぇい! どうにでもなれ! 良いよ! 神域に連れていくから!』
思考加速諸々大量に使ってたっぷり1週間分の時間感覚で悩んだ結果、神域に連れていくことに決めた。
ちなみに2日分の時間は名前で迷った。
『決めたよ、君達を神域に連れていくにあたって名前を付けてあげる。まずヒヨコ。』
「ピ!」
『君の名前はつくねで!』
「ぴ!!」
ちなみに1秒で決まった。
命名理由? 黙秘させてもらおうか。
『次に亀! だいぶ迷ったけど君はプロテウスで!』
この名前は、私がやってたゲームでお世話になった金属。
この亀、私の切断攻撃を無効化したんだよね。
プロテウスは切断能力無効化の能力を持ってて防具とかによく使ってた。
それにしても、こういう知識は覚えてるけどそのゲームが、どんなゲームなのかは覚えて無いんだよなぁ。
会社の後輩に教えてもらった話も覚えてるけど後輩の姿も声もわからない。自分の姿も覚えてない。
まぁ、そんなことはどうでも良い。
『つくね、プロテウス。これからよろしくね。できる限り長生きしてよ』
「ピ!」
「グルァァゥ!」
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