あまりに残酷な世界

※読む前に注意

人によっては胸糞の可能性あります。もしくは残酷な描写があります。そのような描写がどうしても苦手な人は読まない事を推奨します。

この話を読まなくとも、さほど影響はありません。読んだらベルが関わらない人から見た世界観がわかります。

読む人は自己判断でお願いします。

(訳:文句は言わないでね。誤字報告は受け取るよ)


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「はぁ! はぁ……っ!! くっ! 逃げろ、逃げろ! もっと遠くに! クソ!」


男が森の中を走っている。

その男の形相は、何かから必死に……まるで恐ろしいものから逃げるかのように凄まじい形相をしていた。

自身の腕や足に傷が付こうと、気にせず必死に足を動かしている。


「クソ! クソクソクソクソクソ!!

みんな……親父、母さん、ガルにトト!!

……クソっ!! なんで、なんでこんな目に! うっ……」


男の脳内には自身の両親、友の姿が次々と浮かんでは消えていた。そして、浮かんでは血塗れの両親の姿と友の姿に変わっていた。


それと同時に、自身がこんなことになる前。

平和だった数時間前の事が思い浮かんでいた。



─数時間前─



その村は川沿いにあり、とても長閑のどかな雰囲気の村だった。

そんな村の一角の家から、どこかで聞いたことがあるような言語で話し声が聞こえてきた。


「ちょっと! なんで狩りに行ってないのよ!  今日は貴方達が狩りの当番でしょ! ココにコト!」


若い女が、無精髭の生えた男と年端も行かない男に怒鳴っていた。

無精髭の男はこの時代にしては長く生きているように見える。


「え? あぁ、そういやそうだったな。コト、槍持ってこい。狩り行くぞ」


「はぁ? しょうがねぇなぁ」


無精髭の男、ココがそう言うと年端も行かない男、コトは渋々ながらも狩りのための道具を取りに外に出た。


コトが槍を取ってくると、すぐにココは歩きだした。足取りに迷いがないことから、何度もしてきたことだとわかる。


そのまま2時間ほど歩き続けると草原が見えてきた。そして、そのまま草原に踏み入ってしばらくすると、ココが兎に似た獲物を目で捕らえた。


「コト、いつものようにやるぞ。わかったな?」


コトは音を立てないようにココと目を合わせると頷いた。

ココが静かに遠回りをしながら、獲物の向こう側に回っていく。獲物は草を食べることに集中しながらも辺りの警戒をしていた。


そして、ココは完全に獲物をコトと挟むような位置に動くと、突然立ち上がり大きな声を出しながら獲物の方へ走った。

所謂、追い込み漁の陸上版のようなものである。


獲物は音に気が付いたのか顔を上げ周りを見渡すと、すぐに自身に向かってくる人間の姿を見つけた。

格上の相手が自身を追いかけてくるのなら、逃げるというものが道理だろう。

自ら捕食者に向かっていく愚か者は、何かを守る者以外には存在しない。

獲物は守るものは自身以外無いため、すぐさま反対の方向を向くと急いで走り出した。


だが、走っていると目の前にもう1人の人間が現れた。それなりの速さが出ているため、急には止まれないし曲がることもできない。


コトは獲物が目の前に飛び出してくるのをハッキリと捉え、そのチャンスを逃すまいと手に持っている槍を獲物に突き刺した。

突き刺した後、足で獲物を踏みながら槍を引き抜くと、首にしっかりと突き刺し直し止めを指した。


「ふむ、こいつは大きいな。これならあと2匹で良いな」


「じゃあ、今日は早く終われるな」


コトは友と森を探索したいと考えていたため、狩りが早く終わることに喜んでいた。


その後も順調に狩りが進み。

村に帰るとコトの母が迎え入れてくれた。



~コトside~



今日はいつもより大きな獲物が取れたお陰で早く帰ることができた。


ったく、親父も狩りの日忘れるなよな。

自分まで怒られたじゃねぇか。


まぁ、早く終われたし良いか。


そんなことよりも、早くガルとトトを誘って森に探索に行こう!


ガルを探して歩いていると、地面に寝転がって寝ているガルを見つけた。


「おい、ガル起きろって! なに寝てるんだよ! 森に行くぞ!」


「ん~? ……あ、コト。なんでここにいるんだ?」


「だから! 森に行くって前に言ってただろ!」


「……あ~! 思い出した! そういえばそんなことも言ってたような……言ってないような」


「言ってたんだよ! さっさと起きて、トトも誘いに行くぞ!」



「りょーか~い」と後ろから聞こえてきたが少しだけ眠そうだった。


まったく。ガルはハッキリするときはハッキリとしてるのに、なんで起きた時はこんなにもボケッとしてるだ。


まぁ良い! 次はトトだ!

あいつはどうせ、いつもの所だろ。


しばらくすると川が見えてきた。

そして、岩の上に座り込んで川を覗き込んでいる人影も見えた。


「おーい! トト~!! 約束してた通り森に行くぞ~!」


トトにそう声をかけるとこちらを振り向き、凄まじく嫌そうな顔を向けてきた。


「うへぇ……本当に行くのかい? 君が考え無しなのはわかってたけど。ここまでとは」


「はぁ? なんだよ。トトだって森に行きたいって言ってたくせに!」


「はぁ、確かに行ってみたいとは思ったけども実際に行こうとはしないだろ。親も森は危険だから、入るとしても親と一緒にって言ってるし」


「それじゃあ好きに動けないだろ!」


なんだよ。トトが最初に森に行ってみたいとか言い出したくせに。


「どうせ僕が止めたって行くんだろ?」


「当たり前だ! 森に行かないなんてありえない!」


「はぁ、しょうがないな僕も行くよ。君だけだと不安だしね」


「いや、俺だけじゃないぞ。ガルが俺と一緒に、……」


振り替えるとガルがいなかった。


ガルのバカ野郎! また道の途中で寝たな!




その後ガルを見つけ出して3人で森に入った。

森の中は今まで見たこと無いような物がたくさんあった。

見たこと無いような木の実。

見たこと無いようなキノコ。

見たこと無いような鳥。


自分達はすごいすごいと言いながら森の探索をした。

しばらくしてガルがあることに気づいた。


「なぁ、あれってなんだ?」


ガルが見た方向を自分達も見ると何本の木が倒れていた。


「これってなんだろう。森ってこんな風に木が折れるのか?」


「まるでデカイ生き物が通ったみたいだな」


「そんなわけ無いでしょ。森にこんなに大きな生き物がいる、なんて僕は聞いたこと無いよ」


ふと、見渡していると木の上の方に変な傷があることに気が付いた。


「なぁ、あれってなんだと思う?」


「……爪痕?」


「そ、そんなわけ······無いと思うけど」


その木の上の方には、俺たちが上に3人並んでも届かないような所に4本の傷が付いていた。


「……帰るか」


2人は声を出すこと無く頷いただけだった。


木が倒れていってる方向を見ると村の方に続いているようだった。


大丈夫。……大丈夫だよな。



俺達3人は無事に森から帰ることができた。

家に帰って親父と母さんの顔を見ると、何故かホッとした。


母さんは既に食事を作っていた。


「いつもより遅かったね。早く食べるよ。」


母さんの言葉に親父も反応して、食べ物の前に来た。いつも通りの光景がなぜだか凄く安心する。


森はしばらく行かなくても良いな。


「ちょっと、なにしてるの? 早く食べなさいよ?」


「うん、わかっ「ガアアアアアアアア!!! グルァァアアアアアアア!!!」うわぁ!」



突然、外から今まで聞いたこと無いような音が聞こえてきた。


それと同時に悲鳴も。


「な、なに? 今の音……声?」


「今のはたぶん動物の鳴き声だ。コト、槍持ってこい。持ってきたら母さんとここにいろ」


「な、なん「いいから早く!」っ」


親父が今まで見たこと無いような顔で、怒鳴るように言ってきた。

何かが起こっている。そんなことが自分にもハッキリとわかった。


急いで槍を持ってくると、親父がすぐに受け取った。


「いいか、外には安全だとわかるまで出るんじゃないぞ。いいな」


「お、親父は?」


「俺は危険が無いか見てくる。悲鳴も聞こえたから、多分誰か襲われた。今の音を聞いて他の男も来るだろうから、別に死にはしねぇよ」


安心しな、と親父は言うと音の方向に向かった。


俺と母さんは親父がちゃんと帰ってくることを祈った。

俺と母さんが祈っている間も、今まで聞いたこと無い動物の声がずっと聞こえていた。





どれだけ待っただろうか。

外から足音が聞こえてきた。


「親父!」


俺は我慢できずに外に飛び出した。

そして、目に写ったのは血塗れになり片腕がない親父の姿だった。


「お、親……父?」


「コトっ……母さんを連れてっ! はっ、逃げろ……!」


親父はそう言うと、ドサッという音と共に倒れた。


「親父! 何があったんだよ! しっかりしろよ!」


「いいからっ早く!」


親父は急かすように俺に逃げるように言ってきた。


だけど……親父を置いてなんて行けるわけ無いだろ!


「コト……? どうしたの? ココ!? どうしたのその傷!!」


「いいか……っ、よく聞け。ハァ、ハァっ、2人とも逃げろっ! アレはどうにかできる物じゃない! くっ……! 早く!」


「で、でも。……! コト!!」


ふと、母さんが振り替えると俺を横に突き飛ばしてきた。



な、なんだ?


起き上がって母さんの方に顔を向けた。



!!!


真っ先に写ったのは母さんが血塗れになり倒れている姿だった。


そして、その後ろに巨大な。

そう、あまりに巨大な熊がいた。


グルァァァア!!!


熊が凄まじい大きさの声で咆哮を放った。




一度だけ熊を見たことがある。

親父達が森に入って狩ってきたのだ。

その時の大きさは親父より半分ほど大きいくらいの大きさだった。


だけど今目の前にいる熊はどうだ。

親父が3人いても届かないような巨大な熊が目の前にいる。


恐怖で息が荒くなる。

胸がドクドクとうるさい。


怖さのあまり立ちすくんでいると、親父が無理矢理立ち上がり叫んだ。


「早く逃げろ!! そして、化物熊!! 俺にかかってこい! コト! 早く逃げろ!! お前は逃げるんだ!!!」


その言葉で反射的にその場から逃げ出した。


「逃げきれ……愛していたぞ」



その言葉だけが鮮明に聞こえ一瞬立ち止まりそうになったが、無理矢理足を動かして走りだした。


とにかく遠くに!


ふと、ガルとトトの姿が思い浮かんだ。


この先にちょうどガルとトトの家がある!

大丈夫なはずだ! 大丈夫だ!


走っているとガルの家が見えてきた。


だが、家が潰れていた。



嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ!!


近づいていくと見覚えのある姿が見えた。

倒れた家の柱にもたれ掛かるようにして座り込んでいた。


良かった! ガルだ!


どんどんと近づくとガルの姿がハッキリと見えた。



「嘘……だよな。おい、嘘だよな」


ガルは死んでいた。

胸を爪で裂かれて血が溢れ出して死んでいた。

嘘だ。


っトトは!!


急いでトトの家に向かう。

トトの家も崩れ落ちていた。


そして、家の残骸からトトの顔が見えた。

まだ、大丈夫なはずだ!


近づくと家の残骸で隠れていた体が見えた。


トトの姿を見て俺は。





吐いた。



食べたものが全部出てくるほどに吐いてしまった。



ないのだ。

トトの胸から下が。

それと、右腕が引き千切られたように横に放られていた。



「あ、あぁ……あああ!! 嘘だ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁ!! ……なんで、なんでだよぉ!」


悲観に暮れていると、後ろからあの熊の鳴き声が聞こえてきた。


親父の声が頭の中に浮かんできた。



「っクソ!」



俺は逃げた。

泣きながら逃げた。

転ぼうと腕や足が傷ついても逃げた。

逃げて、逃げて逃げて逃げた。


気付けば辺りが暗くなっていた。


「クソっ! クソっ! クソクソクソクソ! クソぉ!!!」


自分が情けなくて仕方がなかった。

その場に座り込んで止まらない涙を拭った。



なんで、なんでこんなことになったんだろう。


考える。


考えて、考えて……


考えてもわからなかった。


もう、寝てしまおうと目を瞑ろうとしたその時、音が聞こえてきた。



ァァァ!



すぐにわかった、あの熊だと。


「ハハ、なんだよ。なんだよもぉ。どっかいけよぉ……! なんで親父を殺したんだよぉ!なんで母さんを殺したんだよぉ! なんで、なんでガルもトトも、村のみんなも殺したんだよ! なんで村に来たんだよ!!! なぁ!」


だんだんと熊の声が近づいてくるのがわかる。


「お前はなんなんだよ! なんで生きてるんだよ! ……もう、やめてくれよ」


バキバキという木をなぎ倒しながら、こちらに向かってくるのがわかる。

ふと、色々な記憶が蘇ってきた。

初めて親父と狩りをした時。

初めてガルとトトと仲良くなった時。

初めて母さんに料理を作った時。

初めて親父と母さんに誉められた時。


とうとう目の前に熊が現れた。


ふと、あることを思い出した。

村に伝わる神様の事を。


熊が腕を振り上げるのが見える。


「助けてくれよぉ……







神狼フェンリル様よぉ……」



グチャ!!!


次の瞬間目の前が真っ暗になった。












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救済? 無いですよ? オオキャミーです。


ちょい裏話。

この村を作った最初の人は言わずもがなあの村の人です。

最初に聞いたことのあるような言語と言ってるのはこれの影響です。

ただし!

普通の人を引き連れてこの地に移住してきて、子供は残さなかったので、ただの一般人しかこの村には産まれなかったのです。いやぁ子を残していれば、この惨劇は無かったかもしれませんね。

まぁ、それもこれも全てifの話なんですけども。


次に熊ですけど。

あれは魔物ではなく魔獣です。

魔物は必ず身体にわかるような変化が出るんですけど。熊は筋肉が異常発達しただけなので。


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