もう人を育てると言う点では最高峰と言っても過言······だったね。
はい。
もう2年経ったよ。瞬きをしてる間に2年経ったよ。いや本当に。
最初、エルキルとはそこまで会話が続かなくて、気まずい空気とかに良くなったけど。
動物が好きってことが途中でわかったから、私が今まで見てきた動物や恐竜を幻影で再現してあげたんだよね。
そしたら、今までの気まずい空気は何だったんだろうってくらいに一気に距離が縮まった。
仲良くなった後は本格的にエルキルを鍛え始めた。最初は魔法を教えようかなって思ったんだけど······。
エルキルは魔法の才能がなかった。まぁ、そもそも魔臓器が存在しなかったんだけどね。
この村の人達に魔臓器が生成されてるところ見たことがないんだけど。
まぁ、魔法は使えないから代わりに謎オーラと近接格闘をひたすらに鍛えた。
謎オーラ、村の人はフェンリルオーラって呼んでたんだけど。フェンリルオーラは基本的に誰にでも視認できる気で、白く発光してるんだよね。
そのフェンリルオーラ。
この2年間で白色以外の色に変えることができるようになったのだ!!!
いや、私も最初は使えないなぁって思ったけど。これ結構使えるからね?
例えば森の中で迷彩柄の色にされると、目視だとマッッッジで見つけづらい。
エルキルは魔法とか魔術は使えないけど、どうやらこのフェンリルオーラと近接格闘の天才だったらしい。
近接格闘の方はアルルちゃん程とは言えないけど、フェンリルオーラの方はアルルちゃんを越えるくらい才能があった。
なんとエルキル。
殴ってくるときに腕にフェンリルオーラを纏って、色を変えて攻撃を視認しづらくしてくるんだよ。
さらに!! アルルちゃんでも四肢と他の部位に纏うのがやっとだったのに、エルキルは完全に本当の意味で全身にフェンリルオーラを纏うことができたんだよ!
このおかげで森の中だと完全に目視で確認することが難しくなった。
あ、ちなみにこれは初期の頃だから。
今は、完全に周りの景色に合わせてオーラの色を変えて、光学迷彩みたいになってる。
どうして私が物を教える子には天才が多いんだろうか。
で、今私の目の前に熊がいるんだけど······
これエルキルなんだよね。
─遡ること2時間前─
「ハッ! フッ!」
『そうそう、その調子だよ。出来る限り隙を見せずに相手の攻撃を避けて、攻撃の瞬間が来たら重い一撃を当てる。これの繰り返し!』
「わかって···っ! ます! ハッ、だけどっ! ベル様の攻撃が早すぎますって!!! 毎日毎日っ攻撃できる瞬間なんて、うわっ! 1度も無いんですけど!?」
今はエルキルに近接格闘の手解きをしてる真っ最中だ。
私の戦闘スタイルは『当たらなければどうと言うことはない!! 全て避ければ良かろうなのだ!!』が教訓だから。全ての攻撃を避けて、自分の攻撃だけを相手に当てるって言うのが理想なんだよね。
だから私は最初に、攻撃を避ける訓練をエルキルにさせ始めた。
最初は、エルキルでも簡単に着いていけるくらいのスピードで、手加減した攻撃をしてたんだけど。
エルキルは近接格闘の方も才能があったようで、私が攻撃速度を上げる度に食らいつくように耐えてきたんだよね。
そんなこんなで、その訓練が1年半以上続いちゃってさ。
エルキルは気づいてないようだけど。
村の人達だと絶対に避けれないような攻撃も、軽々避けれるようになったんだよね。
移動方法も私が教えたから分身······って訳でもないけど、残像を残せるくらいの速さで移動できるんだよ。
まぁ、流石にその時は全身にオーラを纏わないといけないんだけど。
『よし。とりあえずここまで! 休憩を挟んだら、今度はオーラの訓練を始めるよ』
「は、はい······!」
私が中止の合図を出すとエルキルはその場に倒れこむように寝転がって深呼吸を始めた。
ふと、私の頭の中に1つの考えが思い浮かんだ。
『エルキルはオーラの色を変えられるけど。無色透明にはできないの?』
「はい?透明ですか? ······考えたこと無かった。確かに無色透明にできれば、相手にフェンリルオーラを使っていると気づかれずに騙すことができる! あ、でも村の人達以外の普通の人はそもそもオーラを使えないんだっけ。それなら無色透明にする必要もない······? ブツブツ······」
『おーい。また一人の世界に入ってるよ~! お~い!!』
あちゃ~完全に一人の世界に入っちゃった。
エルキルは物事を考えるときに深く考えすぎちゃうと、周りの音が聞こえないくらい集中しちゃう癖があるんだよねぇ。
こういう時はエルキルの中で結論が出るまで放置するのに限る!
さて、エルキルを放置してる間に私もやることをやろう。
今からするのはドルフのお土産作りだ。
まぁ、作ると言っても数分で終わるけども。
私を崇めてるこの村には特産品と言える物がある。
私の抜け毛だ。
嘘じゃないよ?
定期的にブラッシングしてもらってるんだけど。その時に抜けた毛が1ヶ所に保存してあるんだよね。換毛期は凄いよ? 私の体がもう1つできるくらいには毛が抜ける。
で、その抜けた毛。
どうやら熟成されたのか、何なのかよくわからないけど。凄まじい神狼気を放ってるんだよね。
衣服に少しでも混ぜれば、神狼気で防御力が上がるくらいには。
だから私はその凄い抜け毛でドルフに何か作ってあげようと考えたってわけ。
~お土産作成中~
よし!こんなもんで良いでしょ!
とりあえずアイテムボックスに入れておこう。
あれから1時間くらい経ったけど、エルキルは考えがまとまったかな?
チラッとエルキルの方を見てみる。
エルキルの方を見るとエルキルの頭が生えた熊が見えた。
????
あれ?見間違いかな?
チラッ。
?????????
エルキルが消えて、完全に熊になったんだけど???
???
『はい!?!?!?』
『エルキル!? エルキルだよね!? え? 何その姿!! どういう結論でそうなったの!? 戻れるの!? 戻れるんだよね!』
いや、一応大丈夫なのはわかるけども! 急に目の前の人······しかも自分が教えてる子が人間辞めちゃったらビックリするでしょ。
私が少し焦って呼び掛けると、熊の姿が溶けるように消えてエルキルが出てきた。
「えっと、オーラを無色透明にするのってそこまで意味が無いよなぁって思って。それなら逆に全身をオーラで覆って、動物に擬態すれば良いんじゃないかなぁって思ったんです。弱いはずの動物がいきなり襲いかかってきたら、奇襲としては大成功じゃないですか!」
『なるほど。何がなるほどなのかはわからないけど。とりあえず、私に何か言ってから行動してほしかったな。ビックリしちゃうし』
「あ、それはごめんなさい。でも! これって結構良くないですか!」
『······あのね、熊がいたら普通の人は逃げちゃんうんだよ。君達村の人が異常なだけで、普通は撫でになんて行かないから。熊って普通の人からしたら命の危機だから』
「え!? 撫でないんですか!?」
そう、この村の人達。ちょっと······いや、結構ヤバイのだ。
普通であれば、熊がいる=撤退or死なのに。
この村の人達の場合。
熊がいる=撫でるor食うなんだよね。
う~ん、これを異常と言わずして何と言うのか。
誰かこの村の人達をナーフしてくれないかな。
まぁ、こんなに強くなった原因は私なんだけども!
『でも、確かに動物に擬態するのはアリだね。普通の人なら人が動物になってるなんて予想できるわけ無いし』
「ですよね! 動物に擬態するなんてこの村じゃ自分くらいですし! やっぱり有効ですよね!」
『まぁ、じゃあ今回のオーラの訓練はどこまで動物に変身できるかやろうか』
「わかりました!」
──────────
───
─
で、冒頭に戻るってわけ。
とりあえず、わかったのは自分の大きさの半分より小さい動物には変身できないっていうのと。
最大のサイズは自分がオーラを操れる範囲の大きさまでっていうのがわかった。
エルキルはオーラを操る才能が天元突破してるから、自身を中心にした半径15mの球の中に収まればどんな動物にもなれることが出来る。
つまり、エルキルが変身することができない動物は小動物だけってことになった。
2人で話し合った結果、これからは動物に変身する早さなんかも鍛えていくことにした。
これでエルキルの鍛える方向性がだいぶ決まったね。
~時はさらに飛び1年後~
現在私はエルキルとかくれんぼをしている。
卒業試験として私がエルキルに課題を出したのだ。
私は普通の視覚と聴覚だけを用いてエルキルを探すんだけど。
エルキルは私にバレないように攻撃を一撃当てるか、日没までにバレないように隠れるか。
このどちらかを満たしたらエルキルは卒業試験を合格ってことになる。
で、今その卒業試験中なんだけど。
日没まで残り少ないんだよね1時間くらいで完全に日が沈む。
この卒業試験を始めてすでに2ヶ月くらいは経ってるんだけど。いまだにエルキルは卒業することができていない。
最初の頃なんて1時間も経たずに見つけたし、一撃当てに来ようとしても私の方が先に気づいてエルキルの負けになる。
そもそも、こんなに早く卒業試験をするつもりじゃ無かったんだよね。
エルキルの成長スピードが思ったよりも早かったから、もう教えることが無くなっちゃって卒業試験をすることになったんだよ。
いや~天才は困るね。
私の想像を遥かに越えてくる。
そして、今もまさに私の予想を越えようとしてる。
私はいまだにエルキルを発見できてない。
だんだんと隠れることを覚えて、足跡を消したり。体に泥を塗ったりして匂いを消したり。
今ではオーラの応用とか言って、オーラを体に纏って匂いを消したりしてくる。
視覚的には完全に見えなくて、嗅覚的には匂いがなく、聴覚的には息の音1つ聞こえない。
いやぁ~参った参った。
どうしようかな。一応隠れる範囲は限られてるから見落としはなかったと思うんだけど。
でも実際にはエルキルを発見できてないわけだしねぇ。
あぁ、日がどんどん沈んでいく。
『エルキル~死んでないよね~』
息の音も聞こえないから思わず、出てくるはずもないのに呼び掛けてしまう。
「大丈夫ですよ、ちゃんと生きてます!」
?
今、背後から声が聞こえてきた?
後ろを振り向いてみる。
だけどエルキルの姿はない。匂いもしない。
??
「ベル様~ここですよ~!背中背中~!」
ん?背中?
背中を見てみるとエルキルがまるでずっと最初からそこに存在していたかのように私の背中に跨がっていた。
わぁお······まじぃ?
「これで、一撃当てたってことで良いですよね!」
『え?あ、うん』
私は今混乱の最中にいる。
え?いつから?でも、え?
確かに手加減してたとはいえ、背中に跨がっているのに気づかないなんてある??
「フフフ、混乱してますね?そりゃそうですよ! ずっと自分だけの秘密にしてた技ですからね! ベル様が知るわけないですよ!」
『えっと······いつからそこに居たの?』
エルキルから語られたのは驚きの内容だった。
どうやら一定のポイントの木の上に息を殺して潜んでいて。
私が下を通ったときに背中に飛び降りてオーラで板1枚分の隙間を作ってひたすら背中に張り付いていたらしい。
そして、エルキルが私に秘密にしていた技というのが、オーラによって完全に音を遮断する技だった。
エルキルは音、匂い、見た目、全てを誤魔化すことが出来るようになっていた。
なるほどね、それは気づかないわけだ。
全てが0の存在をどうやって見つけだせと?
神狼眼や気配察知を使えたら見つけだせただろうけど。
普通の目や耳、鼻をした人間には絶対に見つけ出すことは出来ないだろうね。
ふむ、これは······
『エルキル、今まで良く頑張ったね。いや、本当に。私の想像を遥かに越えて強くなったよ。これなら、その······キ、ギ、「ギルガメッシュです!」そう! ギルガメッシュっていう王にも勝てるよ! これは私が保証しよう!』
「ありがとうございます! 必ずやこの使命を果たして見せます!」
いや、そこまで大きなことではないんだけども。水は指さないでおこう。
こうして私は1つの仕事を終えた。
この後きちんとそのギ、ギ、え~っとそうだ! ギルガメッシュとかいう王を大人しくさせるかはエルキルと他の人達次第だ。
まぁエルキルが負けるとは思わないけど。
最悪の場合、村のアルルちゃんの武術を受け継いでる人に任せるのも手だね。
ま、エルキルが負けるわけ無いけどね!!
────────────────────────────
■■■■■所属
歴史神話考古学者へのインタビュー記録
─記録開始─
学者
「あぁ、ギルガメッシュ叙事詩?あの記録はねほとんど改竄がされてない貴重な例なんだよ。
まぁ、いろいろと詳細は変わってるけどね」
インタビュアー
「ほほう。やはりギルガメッシュ王とエルキドゥ、フンババ、聖牛グガランナといった者も存在したということだね!」
学者
「あぁ、そうなんだが······何故君がインタビューをしているんだ? 君も歴史神話考古学者だろ?」
インタビュアー
「いやぁ、確かにそうなんだがね。私の専門はローマ神話とギリシア神話それと中世辺りなんだよ。正直シュメールやメソポタミア神話は専門外でね。まぁ、そんなことはどうでも良いんだ」
学者
「まぁ、確かにな。ええっとそれで、確かギルガメッシュ叙事詩のギルガメッシュとエルキドゥの戦いについてだよな? それと2人の関係性」
「まぁ一度
インタビュアー
「何? それじゃ本当の事実なんてわからないじゃないか」
学者
「まぁ安心してくれ。我らが祖先、エンリ様が創られた《
インタビュアー
「おいおい、まじかよ。あの膨大な量の本をわざわざ探し続けてたのか?
学者「データが無かったから。わざわざ探したんだよ。まぁ結果としてギルガメッシュ叙事詩に記されてることが、殆ど一緒だということがわかったんだが。エルキル······彼女はギルガメッシュ王と戦い、相討ちになった後ギルガメッシュの初めての友になり、更生させてフンババを倒しグガランナの戦いの後死亡した。ギルガメッシュ叙事詩と全て一緒さ。まぁ、死亡した原因が後にグガランナと呼ばれる魔物の能力なんだがね」
インタビュアー
「彼女? まぁ、記録改竄で男が女になったり女が男になったりなんて常だしな。それよりも確か死因は病気だったか?」
学者
「あぁ、我々は今も圧倒的な身体能力を誇るが抗体が出来るまでは普通の人間と変わらない免疫力だ。今でこそ抗体を作る速度も早くなったが、祖先は今の我々ほど抗体生成速度が早くない。詳しいことが知りたいのなら、私が見つけた本を貸してやろう」
インタビュアー
「あー······僕も自分の専門で忙しくてね。別の分野の本を読んでる時間は無いんだ。申し訳ないけど遠慮しておくよ」
学者
「そうか。君も
インタビュアー
「おいおい、やめてくれよ。僕も余計なことは言わないように気を付けてるんだから。まぁ、ご本人自ら率先して語ってくれなきゃその時代を詳しく知るのは難しいよな。本当に気が滅入る。キリシタンの暴走した一部が悪いとはわかっているけど本当に愚痴しか出てこないよ」
学者
「今日は夜暇だろ?久々に酒でも飲みながら愚痴を聞いてやろう」
インタビュアー
「あぁ、ありがとう。そうさせてもらうよ」
─記録はここで終了している─
────────────────────────────
oukyami!!
はい難産でした。
6000文字越えるとは思わんのよ。
歴史神話考古学者は造語です本当は存在しません。
しないよね?
次回予告
「この世界は甘くない」
「何?」
「この世界は常に死が溢れているんだよ」
一般人は弱いのだ!!
さぁ!
ハラハラドキドキで満ちた世界を楽しもう!
次回!
「あまりに過酷な世界だろ。普通の人にとっちゃルナティックハードナイトメアモードなんだよ! ふざけんな!」
次回も見てね!
近況ノートにちょっとした設定を公開しました気になったら見てみてください。
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