ダ、ダル?ビル?ギ、ギ、ギル?ガメッシュってなんか聞いたことある気がする···


カン!


『はいよ! 良いよ! 良い感じだよ!』


カン!


『そう、その調子! 君はもっといける!』


カン!


『そこ! そこ良いね! その一撃凄く良いよ!』


カン!


『ナイス一発! 流石ドルフ!』


今まで鉄を叩いていたドルフが鎚を置いて息を吐いた。そして······


「なぁ、フェンリルよ。それやめてくれねぇか?」


『え? 何で? 別に影響はないでしょ?』


「いや、うん。影響は別に無いんだがな? なんか嫌だ」


精一杯の応援をしていたのに、ドルフから止めてくれと言われてしまった。

解せぬ。


あの剣の修行から帰ってきて随分と時間が経った。剣の修行から帰った私はドルフとあれからひたすら鍛冶をしまくった。

鉄を叩いて、叩いて、叩きまくって。

失敗作はまた溶かして叩いて、叩いて、叩きまくった。数えきれないほど、鉄を叩いては溶かした。


戦斧、戦鎚、ロングソードモドキ、刀モドキと色々な武器を作った。

今は全部アイテムボックスの中に閉まってる。


私達が鍛冶にのめり込んでる間にもこの洞窟の村に変化があった。

まず1つ、また洞窟を移動した。

今回の洞窟は、今までの洞窟とは比べ物にならない程大きいらしい。

まだ私自身探索してないから、どのくらい大きいのかは知らないけどね。


2つ目は、洞窟に住む人と森に住む人に別れた。

どうやら森で少し暮らしてみて洞窟と比べたときに、森の方が合っていた人がいたらしい。

今までの洞窟の暮らしを捨てるほど森の暮らしは魅力的だったらしいね。


最初に森に住み始めた本人に聞いたけど、木の実は美味しいし、森の空気は洞窟よりも澄んでいて素晴らしい等々森の良さを語られた。


8時間くらい。


いやぁ、あのマシンガントークはビックリしたね。ほぼほぼノンストップで森の良さを語られるとは思わなかったよ。

ちなみに今では森に住んでる人も20人ほどに増えたらしい。

噂では、なんでも最初に住み始めた人が積極的に森の良さを布教してるのも一因だとか。

まぁ、うん。

あの熱意は伝わってくるし、それに感化される人もいるんでしょ。

知らんけど。


まぁ、変化があったのは洞窟の人たちだけじゃない。

まずあの村の人達に変化があった。

私が旅に出た目的は世界中の言語を集める為だから、定期的にあの村に帰って言語の塔に集めた言語を突っ込んでるんだよね。


で、洞窟の人達の言葉を言語の塔に納めに行った時に、あの村の人達と会ったんだけど······。


なんか翼が生えてた。


いや、正確には翼をようになってたんだけど。

アルルちゃんが自分の身体の一部を狼のような身体にしたように、あの謎オーラで翼を作ったらしい。


やっぱり、あの村の人達は意味がわからない。


ちなみに翼だけじゃなくてアルルちゃんみたいに、結構な人が狼の一部を身体に纏えるようになってた。······あの村の人達は一体どこを目指してるんだろうか。


村の人達の変化は置いとくとして。

それよりも重大な変化がエレスに起きた。


エレスが亡くなって神になった。


もう······うん、何なんだろうね。

こんなにポンポン神って生まれるものなの?

やっぱり信仰心ってのが大事なのかな?

一応エレスも神の1人って数えられてたし。

エレスは「私がベル様やエンリ様アルル様と並ぶなんて烏滸おこがましい」って嫌がってたけどね。

別にそんなこと無いのに。

エレスって国を作って、エンリちゃんとアルルちゃんが神になれた要因の宗教を作って、って色々と凄いことしてるからね?

エレスが2人を神にしたって言っても過言じゃないよ。

まぁ、そんなエレスだけど何故か学園には行ってないらしい。

セカイにも別に会ってないし、そもそも祝福されてないらしい。


だから今は、国のめっちゃ地下に空間を作ってそこで暮らしてる。

地下に作った理由は、地下に行けば行くほど魔法が使いやすいからだとか。

まぁ、そりゃそうだろうね。

なんてったって龍脈に近づいてるんだから。


そんなこんなでエレスがいなくなった国はエレスが亡くなる前に色々と指示を出していたらしく。

国を治めるのはエレスが死ぬ前に。

エレスの葬儀モドキは手際良く。

国で暮らしてるあの村の人達も混乱せず。

国の人達も一切混乱しなかったらしい。


どちらかというと、あの年まで生きたことに驚かれてた。

そりゃぁ······ね?

この時代の平均寿命20~30くらいでしょ?

実際に結構な頻度であの国の人達亡くなってるし。

それを遥かに越えて90歳以上とか、もう妖怪でしょ。化け物だよBAKE-MONO。


まぁ、そんなエレスがいなくなっても上手く回ってる国なんだけど。

最近、国の人達からあの村の人経由で助けてくれって言われた。

どうやら今の王様か王子かが横暴というか傲慢というかとんでもない人らしい。

しかも強い。

これは手に終えないから、この傍若無人に対抗できるような人を鍛えてくれってさ。


私自身には手を煩わせたくない。

でも何とかしてほしい。

······そうだ!

私自らフェンリル様に王に対抗できる人を鍛えて貰おう!っていう考えらしいね。

鍛えてもらう分には私に何とかしてもらわないといけないけど。

でも、実際にその王か王子をどうにかするのは私が鍛えた人だから、私の負担は減るだろうってさ。


それで今日がその私が鍛える人と会う日なんだよね。どんな人がなんだろう。

筋肉モリモリのマッチョマン?

それとも才能溢れた少年?

とりあえず、あの村に行こう。


あ、ドルフにも伝えないと。


『ドルフ、私しばらくいなくなるから!』


「······は? またか? お前さんはそう言って、平気で10年くらいいなくなるだろ」


『あー······たぶん今回はそんなにいなくならないと思うよ!』


「ふん、まぁ良い。お前さんには余計かもしんねぇが気を付けて行けよ」


『心配ありがとね! じゃ! また今度!』


私はそう言って鍛冶場から出て行った。

誰からも見えない位置に行くと、村の空間と自分の空間を交換した。


─────

──


私は今新しい村の村長と会って話をしてる。


神狼フェンリル様、私が今代こんだいの村長でございます」


『よろしくね! で、今回呼び出した件についてだけど。私が鍛える人はどこにいるの?』


「はい、ご案内します。付いてきてください」


歩き出した村長に付いていく。


お、ここまだあるんだ。


そこは昔、エンリちゃんとアルルちゃんを鍛えてた広場だった。懐かしいなぁ~。

ふと、広場の端っこを見ると座ってる人影が見えた。


「あそこに座っているのが神狼フェンリル様に鍛えていただくエルキルです」


『エルキルって名前なんだ』


「はい、あとは神狼フェンリル様にお任せしてよろしいですか?」


『うん、良いよ。あとは私に任せときなさい! めっちゃ強くしてあげるよ!』


村長にそう言うとエルキルという人に近づいていった。

お?

よくよく見たら、まだ16~17くらいの子供だね。

ちなみにこの村の平均寿命は年々伸びてて、今は90歳くらいになってる。

やっぱりエレスって妖怪だわ。

100歳を越えて元気に過ごしてて106歳の大往生。

何度でも言おうじゃないか、大妖怪だと。


だんだんとエルキルに近づくと、向こうも気づいたらしく少しだけビックリしてた。


『やっほ!君が私が鍛えるエルキルだね』


「えっ、えっと神狼フェンリル様ですよね?(ほ、本当に狼が喋ってる······)」


『そうだよ。君たちが崇めてる神狼フェンリルだよ』


「えっと、知ってるとは思うんですけど。ボクはエルキルです」


『······』


「······え、えっと」


一旦自己紹介をしたんだけど、空気が一瞬で死んでしまった。

どうしよう。

一度エルキルをじっくりと観察してみる。

金髪に近い髪で、瞳は綺麗な明るい茶色。

男の子? 女の子?

う~ん、多分男の子かな? だいぶ中性的な顔立ちをしてる。

そろそろ沈黙が辛くなってきたし、喋りかけよう。


『えっと、エルキルはどこまで知ってるのかな? 私はヤバイ王を倒すための対抗相手、要するにエルキルを鍛えるってことは知ってるんだけど。その王がどんなのかは詳しく知らないから』


「あ、えっと······──────」


私はその王について聞かされた。

金ピカ黄金の剣とか斧を持ってるとか。

鎧も持ってる。

とにかく、めっちゃヤバイヤツってことがわかった。

その王の名は······












ギルガメッシュ       



なんだろう······どこかで聞いたことがある気がする。



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