飛ぶ斬撃は出そうとすれば案外出る

私の剣が完成してから数日が経った。

折角剣を貰ったのに使えないっていうのはあんまりだと思うんだよね。

だから剣を振る修行をしようと思います。


話は変わるような気もしてさほど変わらないけど、私は狼だ。

狼は4足歩行···人間みたいに手がないから、口に咥えるしかない。

だから、どう修行すれば良いのかがわからない!というか修行方法の正解がわからない!

人間のように手があるんだったら、アニメで見たように愚直に真っ直ぐ振り下ろしたりして素振りをすれば良いんだろうけど。

私はそんな風に振り下ろしたりなんて出来ない。


あ、いやでも素振りは別にできるか。

この前適当にブンブン振り回した時に木も切れたし、修行の方向性としてはきちんと刃先を切る方向に合われせるようにしようかな。

剣の側面を当てたって切れるわけないし。

私は咥えて振るから尚更切るのが難しいしね。


とりあえず、ドルフに報告だけして修行に移ろう。


────────────

────


棒がポツンと立った、それ以外は真っ白な空間。そんな空間に一匹の狼·······

そう、私だ。


私は、ドルフに報告をしたあと素振りを始めた、

今は素振りというか、地面に刺して立ててある木の棒に剣を当てる訓練をして、しばらく時間が経過してるんだけど·······


ブン!


ボキ!


スカ!


スカ!


当たったとしても切れるんじゃなくて折れるし、そもそも慣れない感覚だから当たらないなんてことも結構ある。


あ、ちなみにこの空間は新しく作った神域で、大体一辺5mくらいの立方体の空間になってる。

さらにこの空間は地球時間の10倍時間が進むから、こっちで10年修行しても向こうでは1年しか経ってないって言う状況になる。


空間は別に広げることはできるけど今は縮んでるし、この大きさでも十分広いからこのままにしておく。

それと、剣がいつ折れるかわかんないから、できるだけ折れないように気力でコーティングして剣の強度を上げてる。

多分固さだけならダイヤモンドを超えてるよ。

よし、木の棒を刺し終わったし素振り再開!


ブン!


ボキ!



──────────────

────

ひたすら振る、振り続ける。

斬れなかったらまた振り直し、斬れたらその感覚を覚える。

ただそれの繰り返し。

少しずつ、少しずつではあるけど最初と比べると良くなっているのがわかる。


ブン!


スカッ!


ブン!


ボキッ!


ふぅ、あれからどれくらい経ったんだろう。

何にせよ結構な時間は経ったと思う。


1日とか3日とかそのくらいの時間ひたすら剣を振り続けたお陰か、刃先が棒に当たるようになってきた。

しかも前までは棒を叩き折る感じだったんだけど、今は叩き切るって感じに変わってきてる。

3回に1回はきちんと叩き切る事ができるようになったんだよね。


継続はチワワなり、私狼だけど。


とりあえずこの修行方法は間違ってはないみたいだね。

この調子でどんどん剣を扱えるようになろう! って言いたいところだけど頭を振りすぎて少しふらつくんだよね。

ちょっと休憩一休み。

おやすみ~


──────────────

────


ブン!


こうやって剣を振ってると心が研ぎ澄まされるような気がする。

···甘いものが食べたいなショートケーキとか。


気がしただけだった。


ボキッ!


段々とコツがわかってきた。

自分が顔を振る時どっちの方向に振るのか。少し斜めになっていないか。きちんと水平に振っているのかも考慮して剣の向きを変えないと棒をへし折ることになってしまう。

そして、その全てが揃って力が加わるのが完璧な状態になった時·······そう今だ。

これで100回目!


スパッ!


叩き折るでもなく、叩き切るのでもなく。


綺麗に斬る事ができる。


ふぅ、100回斬るまで永遠素振りやっと終わったぁ。

壁の上の方に表示してある時間を見てみる。


154y 126d 16h 46m


あれから大体150年くらいが経過した。

素振りをしてる途中、ふと時間がわからないことに気づいて有り余る魔力で魔法を使ったんだよ。

時間を観測する魔法をね。

このお陰でどれくらいのペースで上達してるかがわかった。


あ、ちなみに大体というのは、この時間は魔法を発動したときからしか表示してないんだよ。だから、実際はもっと経っているかもしれない。

そんなことよりもやっと剣がまともに使えるようになってきたんだよね。

ようやく剣が使えるようになって気づいたんだけど、最初にブンブン適当に振り回した時に斬れたのって奇跡だったね。


さて、今度は左側でも振れるようにならないとなぁ·······


そう、今まで私は右の方に剣を構えていた。

今度は左側でも斬れるようにならないと、剣が扱えるようになったとは言えないだろうし。

がんばるかぁ·······


────────────

───


1084y 56d 14h 34m


ほっほっほっと、回転斬り、左斜め切り上げ、持ち変えからの縦回転斬り!


最後は十字斬り!


ふぅ、こんなもんかな?

あれから1000年が経ちました。どうも。

いや~今はもう、叩き折ったり、叩き切ったりするんじゃなくて、全部斬れるようになったね。

しかも見た? さっきの綺麗な流れるような連撃。

修行のお陰でここまでできるようになったよ。

流石に技術で岩とか斬ったり出来ないけど。

ただ愚直に頭と剣を振り続けて、なんとかここまで来ることが出来た。

剣聖とか武人とか言われてる人たちとは、ほど遠いだろうけども······ここまでこれたんだ。

ちなみに、剣聖とか武人とか言われてる人たちには多分負けるだろうけど、私ならではの剣が出来た。

例えばこんな風に。


シュッ!


私が剣を振ると剣先から気力の塊が飛んでいき、遠くにある棒を真っ二つに切り裂いた。

所謂いわゆる、一般的に飛ぶ斬撃って呼ばれてるやつだね。


私は剣技だけで飛ばせないから、気力でその技を再現した。

私は剣技だけだと剣の長さが少し伸びる程度にしか剣を鍛えることが出来なかったよ。


あ、そうそう。

そういえば最近剣がなんかキラキラし始めたんだよね。

剣に目を向けるとそこには、少しだけキラキラと光りうっすら気を纏う剣が存在した。

しかも、ただの気ではなく私の特性が乗ってるようで···まぁ、言うなれば神狼気。

あの村の人たちが纏うオーラをめっっっちゃ濃くしたやつが纏わりついてるんだよね。


·······見なかったことにしよう。


そろそろ地球に戻ろうと思う。

あーもしかしたらドルフ死んじゃったかなぁ? 

とりあえず戻ろう。




フッ


──────────

───


っとぉただいま地球。

我が故郷。


ふと辺りを見渡してみる。


森、森、森、森·······


う~ん、100年前はちょっとした広場だったのに、すっかり森に飲まれちゃって。


洞窟があった方向を神狼眼で見てみる。


おー、ほとんど森だね~······ん?


しばらく見てみると洞窟を発見した。

したんだけど様子がおかしい。

誰も居ないのだ。

あーでもそうか、100年も経ったんだから同じところに居るわけないよね。


まぁ、だとしたら1万年以上あの地に住み着いてたあの村の人達は何なんだって話になるけど。


ん? あれ、良く見たら洞窟の前にでっかい矢印みたいなの立ってる?

矢印の向いている方向を神狼眼で見てみる。

すると、また洞窟があった。

そして、矢印も。


おお!!これはあれだ!ドルフがきっと私のために残しててくれたのかも!

というか絶対にそうでしょ!


矢印の方向を辿っていくと·······

洞窟だ! しかも人も居る!!

やった! 早速行こう、今すぐ行こう!


"神狼脚"

+

神魔力体透過モード


全地形無視形態、発動!


この状態は神狼脚の圧倒的加速力と自身を透過させることによって、木や岩が目の前にあっても通り抜ける事が可能になる形態だ。


じゃあ行こう! 方向確認ヨシ!


1歩


たった1歩で世界が一瞬で後ろに流れる。


2歩


2歩目にして音速の壁を突破


3歩


そして、3歩目で目的地を小爆発させ到着した。

踏ん張る瞬間だけ実体化しないとだし、小爆発するのはしょうがないよ。


お、爆発の音で洞窟の奥からゾロゾロ人が出てきた。

すると洞窟の奥から一際大きな人影が出てきた。肩には大きな鎚を担いでいてもう片方の手には大きな剣···所謂大剣と呼ばれるような剣が握られていた。


あれは! ドルフ!


ドルフもこちらに気づいて、驚いたような表情をしたがすぐに口を開いた。


「フェンリル? お前フェンリルなのか? いや、他にこんなバカでかい狼が居てたまるか。フェンリルなんだな?!」


『やっほぉー!! ドルフ! 久しぶり!』


ドルフは俯くと嬉しいのか肩が震えている。


「おめぇら、下がれ。こいつは大丈夫だ」


『お、説得ありがとね!』


ドルフは少し俯いて肩を震わせながらゆっくりこちらに近づいてくる。

そして、段々と歩いてくるスピードが速くなる。


「お前·······お前は、お前さんは·······! お前さんはバカなのか!!! 遅いわ!!!!」


ドゴォン!


『ぐへぇ! 痛くないけど痛い!』


ドルフに鎚で殴られた。

なんでぇ!? そこは感動の再会でしょ!


2人で泣いて抱きあってめでたしめでたし!

─完─


じゃないの!?

ダメージは一切無いけどさ!


「おめぇ! 儂に修行してくるって言って、どのくらい経ったと思ってるんだ!」


『え? 大体冬が108回来たくらいだけど?』


「そんなに経ってたのか···ってそうじゃねぇ! 普通修行って言っても冬が10回来るくらいだろうが! 長いんだよ!」


『え~そんなこと言われてもな~』


あーでもそうか、普通の人間からしたら100年って一生生きるかどうかの長さだもんね。


ん?


ドルフは今もピンピンしてるね。

チラリとドルフを見てみる。

鋼のような筋肉、立派な髭、子供が見たら泣くんじゃないかって程の深い堀の顔。

そして、ギロリと睨んでくる100歳を越えたと思えないほどの眼力。


『·······ドルフ、なんで生きてるの?』


「あ? 儂が生きてちゃ不満か? ってそういうことじゃないよな。儂だって知らん! 儂と同い年のやつは全員のポックリ逝きよったさ」


『そっか、まぁでも知り合いが生きててくれて嬉しいよ。』


「そうだな。久しぶりに2人で鍛冶でもするか」


2人? 1人と1匹の間違いでは?

まぁ良いや、私はドルフが生きててハッピーハッピー! ドルフは昔の知り合い(私)に会えてハッピーハッピー!

しばらくはドルフの言うように一緒に鍛冶でもしようかな。




────────────────────────────

オオッキャミです。

完全にとは言えませんが2回目のコロナから復活しました。

やっぱコロナってくそだわ。


この小説が面白いと感じたら小説のフォローとハートと★★★で応援してください

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る