エンリの決意
アルルちゃんがあの攻撃を無傷で受け止めて、最初に放った言葉はいつものより弱い。う~ん普通の人があそこにいたら確実にミンチになるのに···もはや化け物の域だよね。化け物筆頭の私が言うのもなんだけど。
「アルル、やっぱり?」
「う~ん、なんと言うか·······うん、やっぱり弱い!」
『やっぱり魔術は魔法よりも威力が劣るね』
「姉さんもそう思う?」
『うん、同じ攻撃をしたとしても、威力が高くなるのは魔法の方だね。でも、魔術は法則さえ知ってれば魔法よりも範囲の大きい魔術が使えるからなぁ』
「それでも魔法には劣る····と。魔法を使える人は魔術を補助として使う方が良いのかも」
『うん、その方が良いと思うよ』
「エンリとベル様がそう言うってことはそうなんだろ!」
「アルルはもうちょっと頭使いなよ·······」
「私は難しいことはわからん!!」
『そういえば、アルルちゃんはあの技できるようになったの?』
「あ、はい!できました!」
「私が手伝ったお陰で完成したんだから少しは感謝してほしいんだけど」
「エンリにはいつも感謝してるぞ!!」
「そ、そっか···///」
エンリちゃんが照れてる·······アルルちゃんは素直だからなぁ。言葉に嘘とか淀みが無いからすごく伝わりやすいんだよねぇ。
そう、ものすんごく真っ直ぐ。私も前に心を削られた。
もの凄く純粋な瞳で「なるほど!
一切の悪意がない純粋な言葉·······私はこれ以上被害を出さないように、私以外傷つかないようにアルルちゃんにあまり年齢のこととかお婆ちゃん、お爺ちゃんとかおばさん、おじさんとかは言わない方が良いと教えといた。ちなみに、すでにアルルちゃんの近所の人は被害にあってた。安心してください、まだ若いですよ。
まぁ、削れたって言っても爪楊枝でダイヤモンド引っ掻いた程度だったけど。そもそも私、あまり年齢気にしてないし。正直、2億年も生きてるんだし今さらだよね。
そんなことは置いといて。早速あの技を見せて貰おうか。
『じゃあアルルちゃん、早速見せてよ』
「わかりました!」
アルルちゃんはそう言うとオーラを全身に纏い始めた。そして全身にオーラを巡らせるとオーラの色が濃くなり始めた。普段のオーラは可視化できる程度の不透明度で、オーラはうっすらとしか見えない。だけどアルルちゃんが今纏っているオーラは純白に染まっていてオーラに完全に色が付いてる。
アルルちゃん曰く、なんか···やってみたらできたらしい。感覚派だったかぁ、なんとなくわかってたけど!感覚派だったのかぁ!
説明できないんならしょうがないよね!だってできちゃったんだから!·······神よアルルちゃんに語彙力を授けたまえ。
いや私も一応神だけどさ。神じゃないけど···神だもんなぁ。
私、村の守り神からいろいろと増えたしなぁ。
原因は私だけどさ!
けんけんぱとかジャンケンとか○×ゲームとか教えたから遊戯の神って言われるし。
雪とか出してたから冬の神って言われるし。
雨の日とかに天候を操って晴れにしたり、逆に曇らせたり雨を降らせたりしてたら、天気の神とか大気の神だって言われたし!
効率的な体の動かしかたとか強いパンチ、蹴りのやりかた教えたら戦いの神って言われたし!
多いよ!称号が渋滞してるよ!!!
そんな風に考えてるとアルルちゃんの技が完成した。
「できた!」
「うん、問題は無さそうだね。」
アルルちゃんを見ると、下半身が四足歩行する動物の後ろ足、まるで狼の後ろ足のようになっていて、腕は二の腕から先が獣の腕のようになっており爪が5つ鋭く生えていた。そして、頭に狼の耳によく似た物が生えていて、もちろん尻尾のような物も生えていた。
そう、アルルちゃんはオーラを操って姿を変化したのだ。
本当に意味がわからない。いや、狼に近い姿なのは私を意識してるからだろうけどさ。普通、オーラで姿って変わるものなの?
「いやぁ、ここまで長かったな!全身をこれにするのはなかなか大変だったぞ!」
「うん、村の人たちも一応、部分的にならできてたけど全身はできなかったもんね。頑張ったねアルル」
「だろ!私めっちゃ頑張った!」
そう、これをできるのアルルちゃんだけじゃないんだよね。なんか、村の人たちもなんとなくできちゃった。本当の本当に意味がわからない。
それと、どういう仕組みかアルルちゃんの感情にあわせて、尻尾が物凄い勢いでブンブン振られてる。
『じゃあアルルちゃん、ここに結界張ったからおもいっきり殴ってくれない?』
「わかっt··わかりました!!」
今、嬉しさで敬語じゃなくなりかけたね。別に敬語じゃなくても良いのに。
アルルちゃんは足を肩幅に開いて脱力した。
そして、
「シッ!!」
パキッ·······パキパキバキバキバキ··············バリン!!
結界を破壊した。
う~ん、強くなりすぎだね。この結界エンリちゃんも破壊するのは少し苦労するのに·······パンチで破壊しちゃったよ。多分だけど身体強化よりも強いね。
『うん、アルルちゃん·······』
「はい!なんですか!」
『それ、よほどのことがない限り封印ね。』
「ええぇぇ!?なんでですか!?」
「いや、それはアルルが強すぎるからでしょ」
「エンリまで·······そんなぁ」
『アルルちゃん、自分が勝てないって判断したときには使って良いよ』
「本当ですか!」
『うん、それに·····最後の切り札ってかっこよくない?相手が頑張って追い詰めた!って思ったらそれより強くなるんだよ?最高にかっこいいでしょ?』
「かっこ、いい·······確かに!かっこいい!」
『でしょ?だから普段はいつものオーラにしときなよ』
「はい!わかりました!!」
「姉さん···アルルをうまく誘導したね。」
エンリちゃんがジトーとした目で見てきてるけど気にしない!
『それじゃあその技を定着させるために名前決めようか』
「うん、そうだね早めに決めてた方が良いし、これで定着したらあれも確定ってことになるし」
「わかった!じゃあなんて名前にする?私は狼っていれたい!」
「うーん人が狼の姿になるんでしょ?本にでてくる人狼みたいだね」
『人狼かぁ確かにそう言われればそうだね。でもそこまで露骨なのもねぇ、そもそも弱くしてたと言っても私の結界破壊したしなぁ』
それから3人?であれでもないこれでもないと唸りながら考えた。
そして、ようやく決まった。
オーラを纏って、
その技の名前は
"【神狼降ろし】衣"
アルルちゃんが早速名前を言って発動する。
「【神狼降ろし】衣!!」
すると先程よりも早く技が発動した。
うん、やっぱりこれは確定かな。
「アルル、どんな感じ?」
「さっきより全然楽だ!」
『やっぱりあの仮説は正しかったみたいだね。魔法とかを発動するときに、名前を言うとそれが扱いやすくなる現象···"
「やっぱりすごいね、言霊って」
『うん、そうだね。言霊の存在も確定したし、あれも試してみよう』
私はそう言うと普段火を起こす時に使う程度の魔力を作り出した。
『じゃあ最初は"火"』
ポッ
『次は"火よ"』
ボゥ
『じゃあ"炎"』
ボゥ
『"炎よ"』
ボォッ!
『うん、これは·······詠唱が作れそうだよ。』
「同じ魔力量でも言葉によってここまで違うんだ·······」
「おお!すごい!火がどんどん大きくなってた!」
『まぁ今日は日も暮れてきたしもっとちゃんとした検証は明日にしようか』
「うん、その方が良いね」
「あ!本当だ村がもう火をつけてる!」
ここにいる私とエンリちゃんとアルルちゃんは全員目が良すぎるせいで、暗くても見えるんだよね。
『じゃあアルルちゃん、また明日ね!』
「はい!また明日!」
「じゃあねアルル」
「おう!エンリもまた明日な!」
そう言うと私達はワープゲートを開いて神域に戻った。
その日の夜、エンリちゃんが私の所に来た。普段だったら寝てるのに珍しい。
「姉さん·······」
『どうしたの?エンリちゃん」
「私、ずっと迷ってきたのお母さんがあの国の人達に殺されて、あの国の人達に本当になにもしなくて良いのか·······ずっと悩んできた。
でも、今日決めた。私、あの国の人達に·····いやあの連中に!復讐したい!復讐が何も生まないことくらいわかってる!でも!なにもしないまま生きていくなんて私にはできない!だから、せめてお母さんの仇をとりたいの!」
『エンリちゃん·······そっか、そうだよね。·
······わかった。あの国の連中に復讐するのは良いよ。でも、私も手伝うからね?』
「じゃ、じゃあ!」
『うん、これから忙しくなるよ?』
「ありがとう·······っ本当·······本当に·······ありがとうございます··············!」
エンリちゃんは今までずーっと悩んできてたんだ。その決心が付いたなら手伝ってあげないとね。まぁ今回、丁度良いことに魔法という素晴らしく、便利なものがあるわけだし。
それにしても·······
『すでにあの国には結構嫌がらせしてたから大分弱くなってるよ』
「え?そんなことを?」
『うん、エンリちゃんを助けたあと1年に3回くらいの頻度で嫌がらせしてたよ』
「そ、そうだったんだ」
まぁ、今日は魔術とか言霊をだいぶ物にしたからこれからもっと効率化して、あの国にはエンリちゃんの実験台になってもらおう。
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近況ノートにエンリちゃんのイラストあるので気になる方は見てみてください。
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