たとえ世界が貴女を傷つけても
おはよう世界!!
まだエンリちゃんは寝てるみたいだね。
今日からエンリちゃんに生きる術を教えていく訳だけど·······いっそのこと、どんな場所でも生きていけるように鍛えてあげようか!たとえ私と離れたとしても無事に過ごせるように、世界最強にしてあげよう!
とりあえず、エンリちゃんの心と体をきちんと健康的な状態にしないといけない。
まずは、みんな大好きお風呂を作ろう!
私は早速、神殿内部に新しく部屋を作った。
そこに穴をぶち開けて湯船を作り、地面は大理石のように研磨していく。お金持ちのお風呂みたいになっちゃったけど、まぁ良いや!
次に湯船にお湯を入れていき、回復力を高める魔素が馴染んだ薬草を粉末状にしたものを入れていく。この薬草はいろいろ実験したときに偶然生まれた物だ。純粋な回復薬って訳じゃないんだけどね。
よし!お風呂の準備とエンリちゃんの治療の準備ができた!
とりあえずエンリちゃんの様子を見に行くか。
私がエンリちゃんの寝ているところに行くと私の気配を感じたのか、エンリちゃんが目を覚ました。
「ここは·······」
『おはようエンリちゃん、昨日のことは覚えてる?』
「はい·······覚えています」
『よし、じゃあ昨日私が言ったように今日からエンリちゃんを鍛えていくんだけど·······まずはボロボロのエンリちゃんの体を治していく事から始めようか。起きたばっかりで申し訳ないけど着いてきてね』
「は、はい!」
私が風呂場に移動すると後ろから小走りでエンリちゃんが着いてきた。
「ここは·······?」
『エンリちゃん、服脱いでくれる?』
「··············え?」
『服が邪魔だから脱いで欲しいんだよ』
「え·······えぇぇぇ!?!?いや!えっとその!そういうことはなんというか、大人になってからというか、仲が良い人とするべきというか、そもそも私とベル様は人と狼で種族が違うと言うか·······!いや、でもベル様は神様だから関係ない?!」
『?·····なんのこと言ってるの?今からエンリちゃんの体を洗うから、服を脱いで欲しいんだけど』
私がそういうとエンリちゃんは、え?という顔をした後すぐに茹でダコのように顔を真っ赤にした。
「そそそそそそうですよね!わかってましたよ!体を清めるためですよね!はい···脱ぎます·······」
私はエンリちゃんが服を脱いでる間に新しく魔法を作ることにした。今回は前世で会社の同僚がものすんごい勢いで薦めてきた、マイクロナノバブルシャワー?という物を再現しようと思う。というわけで魔法発動!
ベルの!3秒魔法クッキング!
まず魔法で水を出します。そしてその中に風魔法を突っ込んで、水の中でめっっっっっちゃ小さく泡を作ってそれを大量に増やします。
完成!
え?早すぎるって?しょうがないじゃん思ったよりも簡単だったんだから。多分これでマイクロナノバブルとやらになったと思う。
一旦自分で試してみるか·······
私は土で自分の前脚を汚して、その中に脚を突っ込んで引き抜いてみた。すると驚くほど綺麗になった前脚が出てきた。どうやら無事成功したみたいだね。
私が実験しているとエンリちゃんも服を脱ぎ終わったようだった。
「あの、ベル様····脱ぎ終わりました」
『うん、そうみたいだね。じゃあ早速洗っていくね』
私は複数個水球を作り出して、中に泡を生み出していった。
しかし、改めてエンリちゃんの体を見ると、お腹や足、腕に痣や傷跡が付いていて、とても見ていられない痛々しい姿をしていた。あの国の連中は、とてもじゃないけど許すことはできないね。私は絶対に何かしらの罰を与えようと決めた。
とにかく今は目の前のことに集中しよう。水球·······もうバブルボールで良いや、私はバブルボールでエンリちゃんの体を丁寧に洗っていく。相当水浴びなどをしていなかったのか、一瞬で水が茶色く濁っていく。
私は、一通り汚れを落としてエンリちゃんに湯船に入るように言った。
「えっと·······ここですか?」
『そうそこ、そのお湯はね体の傷を癒す効果があるから、入ったら回復するのが早くなるんだよ』
「すごいですね·······!」
エンリちゃんはそう言うと恐る恐る湯船の中に入っていった。
「気持ち良い·······」
『そうでしょそうでしょお風呂は気持ち良いよね!』
「あ、傷が塞がっていく·······!」
どうやら薬草が効果を出し始めたようだ。エンリちゃんの体にあった傷跡や痣がだんだんと薄くなっていき10分も経つと一切目立たなくなっていた。
「すごい·······本当に傷がなくなった·······!」
『よし、体も綺麗になったし傷もなくなった、これ以上湯船に浸かっててものぼせるだけだし、昨日からご飯も食べてないからお腹空いたでしょ?』
「えっ、いやそこまでお腹が空いてるわけでは··············」
エンリちゃんがそう言うとエンリちゃんのお腹からグーーっと大きな音が鳴った
「えっとその空いてます·······」
『別に隠さなくて良いのに、お腹が空くのは当然なんだから!じゃあお風呂から出てご飯にしようか』
私はエンリちゃんをお風呂から上がらせると、もう一度バブルボールで体を洗い魔法で体と髪を乾かした。服はないから今は魔素で作った、色を付けた布を巻いてもらってる。
朝ごはんはとりあえず果物とかで良いかな。
世界を見て回って色々な野菜や果物を食べまくったこの私が選ぶ、最高の果物を食べさせて上げよう。
美味しい果物No.1!
なんかほんのりと甘くて美味しい果物!
No.2!!
めちゃくちゃ甘いけど、くどくない果物!!
No.3!!!
見た目めっちゃ毒々しいけど、その見た目に反してちょっとした酸味とほんのりとした甘さで滅茶苦茶美味しい果物!!!
以上3つが私が食べて美味しいと思った果物だ。エンリちゃん·······気に入ってくれるかな?
『エンリちゃん、口に合うかどうかわからないけどこれ食べて』
「あの、1つだけ毒がありそうなんですけど·······大丈夫ですか?」
『安心して!それは見た目はちょっとあれだけど、もの凄く美味しい果物だから!最後に食べなよ!』
「あ、はいわかりました。じゃあ食べてみます」
エンリちゃんは少し匂いを嗅ぎ思いっきりかぶりついた。
「おいしい·····」
『良かった。口に合ったようでなによりだね』
ふと私はエンリちゃんの目に涙が浮かんでるのが見えた。そして、その涙が頬を伝い地面にポツリと落ちた。
「あれ?私·······泣いてるの?」
『エンリちゃん·······泣きたいときは思いっきり泣いて良いんだよ?人はそういうのをずっと溜め込んでたら壊れちゃうから·······悲しいときは泣いちゃいなよ』
「あれ?涙が留まらない·······ヒグッ·······うぅ、わ"だじは·······本当に"生ぎでで·····良い"んでずか?こごにいでも良いんでずか?うぐ、ヒッグ·······」
そうか·······エンリちゃんは心がもう壊れかけてたんだ、あの国の連中にずっと生きていたらダメだと言われ続けて死ねや消えろと暴言を吐かれ、そしてなにより·······大好きだった親を殺されたから。
自分のことをダメな存在だと思ってしまって心が傷ついて·······普通だったら心が壊れてもおかしくないのに。でもギリギリで壊れなかった·······多分、お母さんの言葉のお陰だと思う。
エンリちゃんのお母さんの
私よりも先に死んでも貴女はお母さんよりもさらに長生きしなさい
この言葉がきっとエンリちゃんの心をギリギリ繋ぎ止めていたんだと思う。
『·······エンリちゃんは生きていたくないの?私に言ったあの言葉は嘘だったの?』
「私は生ぎだいです·······でも私以外の人達は生ぎでちゃダメだって!」
はぁまったく
『エンリちゃん!周りの人が生きてちゃダメと言う?私はそんなことは言わない!思ってもいない!君のお母さんだってそんなこと言ってない!周りの人が言うから?そんなの気にしなければ良い!もし、それでも気になるなら、私や君のお母さんを思い出せ!私や君のお母さんのように、君に生きて欲しいと思う人がいることを忘れないで!もし悲しくなったり辛くなったら泣いても良い···私が貴女を·······エンリちゃんを慰めて上げるから』
私がそう言うとエンリちゃんは大きな声を上げて泣いた。
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