僕の憧れ

 幻ばかり追いかけていた。

 昔からそうだった。誰かと遊ぶより、一人で遊んでいる方が好きだった。現実よりも、自分の世界に浸っている方が好きだった。

 それは、成長して、高校生になっても変わらなかった。

 

 一人で居るのが好きだった。ノートの端に絵や文章を書くことが好きだった。……それでも、一人の寂しさに、孤独に、完全に耐えられるほど、僕の心は強くなかった。一人が好きだと自分に言い聞かせて、心のどこかで、楽しそうに笑い合うクラスメイト達を羨んで、妬んでいた。

 だから、あの時。君が、修学旅行の班分けであぶれた僕に声を掛けてくれた時、本当に嬉しかったんだ。

 

 バレー部のエースである君。

 常に上から五番の中に入る成績の君。

 そんな君が、「一緒に回ろう」と声をかけてくれたことが、本当に嬉しかった。認めて貰えたんだ、って、そう思えた。

 

 修学旅行中、いろんな話をした。絵を書くのが、文章を書くのが好きな話。テレビドラマを見ているより、空を眺めているのが好きな話。いままで誰にも聞いてもらえなかったそんな話を、君は笑顔で頷いて聞いてくれた。ああ、僕にも、現実に居場所があったんだって思って、心底安心したんだ。

 バレー部のエースである君。

 常に上から五番の中に入る成績の君。

 誰にでも優しい、クラスでいつもひとりぼっちだった僕にも話しかけてくれる君。

 そんな君が、僕のはじめての「友達」になった。

 

 お昼に、お弁当を一緒に食べるようになった。授業の前に、当てられる問題の答え合わせをするようになった。体育の時、一緒に組もうと声をかけてもらえるようになった。

 

 どうしようもなく楽しくて、幸せな日々だった。

 

 でも、知ってしまったから。僕と話していると息が詰まるってぼやく君を。「お前と話してるときが一番気が楽だよ」って、僕が見たことが無いような人並みな笑顔で笑う君を見てしまったから。

 だから、僕は幻を追いかけるのを辞めた。

 願わくば、もう少し君を知りたかった。



――――

診断メーカー、あなたに書いて欲しい物語(https://shindanmaker.com/801664)より。

「幻ばかり追いかけていた」で始まり、「もう少し君を知りたかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば5ツイート(700字)以内でお願いします。

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