こころ

 音もなくほどけた。それは私の、凝り固まった心でした。

 なんでもない言葉だったのかもしれない。実際、ありふれた言葉なのかもしれない。けれど、あなたの言葉は私の心をほどいたのです。

 きっかけは些細なことでした。講義の時、偶然隣の席に座ったのが、あなたでした。席に着いたあなたは、鞄をごそごそと探った後、顔を青くしたのが見えました。それがあまりにも悲痛な表情で、私は勇気をだして問うたんです。どうかしたんですか、と。あなたはこう言いました。ノートを、忘れたんです。

 講義が始まるまで後数分。今から買いに行くような時間が無いのは明白でした。

 だから、私は自分の持っていたノートを一冊差し出したのです。新品だから、と。

 あなたは、悪いからと断ろうとして、迷って迷って結局とても申し訳なさそうにノートを受け取りました。

 それが、あなたと私の始まりでした。

 ノートのお礼に、とあなたは私を食事に誘いましたね。私は正直、それを少し面倒に思っていたのです。けれど、断るのも悪いと思ったので、誘いに乗りました。

 そうして向かったとあるカフェ。自分一人では中々入らないような意匠の外観で、入る前に少し尻込みしたのを覚えています。

 そこで食事をとって、なんでもないような会話をしました。普段なら煩わしいそれが、どうしてか心地好くて私は内心首を傾げていました。そして話は、いつの間にやら私の身の上話になりました。

 あなたは、とても聞き上手でした。うんうんと私の下手な話を聞いた後、あなたはこう言いましたね。

「今まで、たくさん頑張ってきたんだね」

 その言葉で、私の凝り固まった心はほどけていきました。

 それから、私はずっとあなたの隣に立っています。

 ずっと何かが欲しかったのです。そして、それはきっと親友、とも言えるような気の置けない友人でした。そのために、私に必要なのは勇気でした。


――――

診断メーカー、あなたに書いて欲しい物語(https://shindanmaker.com/801664)より。

「音もなくほどけた」で始まり、「必要なのは勇気でした」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以内でお願いします。

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