第328話


 主人公とミランダさんがカウンター越しに話していると、下層に繋がる階段がある入り口から、右腕と頭の装備の隙間から血を流し、意識を失った男性を決死表情をしながら運び込んで来る一団が現れた。


 『た、大変だぁっ⁉中層の大型モンスターが下層に現れやがったっ!!!おいっ!救護班はまだなのかよっ!!!』


 『クソッ、出血が止まらねぇ!!先に防具を全て脱がせるから、腕と足を抑えてろよ?』


 『そいつはどんな姿をしていた?・・・・そうか、中層に繋がる階段には常駐しているハンター達が居た筈だが、やられたのだろうか・・・。』


 『なぁ、俺は最近ハンターになったばかりだから、こういう事態の時にどう動けばいいのか知らねぇんだけどよ、すぐに討伐隊を派遣したりするのか?』


 『そうだなぁ、ほとんどの上位ハンター達は下の層を探索している筈だし、帰って来るのは早くて二日。遅い場合は一週間近くかかるだろうけれど、その時は下層を通るついでに、今回の異常モンスターも討伐してそうだよな!そう考えると、今俺達に出来るのは、ハンターズ組合に所属しているハンター全員のによる総力戦だろうか。』


 慌ただしく人が動き回り、怪我人の治療、下層に現れたモンスターの情報収集、討伐隊の編成、ハンターズ組合上部への報告等に錯綜する人達に関わらないように、遠目からミランダさんと共に眺める主人公。恐らく、ハンターズ組合に登録したばかりの主人公では、特に何かやる事や出来る事も見つからないのだろう。


 そんなムービーが、状況説明のようにコロコロ切り替わりながら流れていると突然、ハンターズ組合のカウンターの奥にある大きな扉から、身長三メートル程の筋骨隆々なイケメンオヤジが現れ、組合全体に聞こえるような大声で話始めた、


 『よく聞けよ坊主共っ!!今から『斥候』、『討伐』、『補給』の三つに分かれた討伐隊を編成する!!悪いが深刻な人員不足の為、どんな素人だろうと最低でも『補給部隊』に回されるだろう!!それでも、この街を守る為、今回のモンスターが街を蹂躙するのを守る為だと思って、諦めてくれっ!!後、武器屋に居る末爺他、引退したハンター、状況も知らずに飲んだくれいているハンター共も連れて来いっ!!!ハンターはモンスターを狩る者!!!気合い入れろや、野郎共!!!』


 『『『『『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!』』』』』


 おー、序盤とは思えない盛り上がり方だな。ハンターズ組合に登録してすぐ問題が発生する、主人公の運の悪さにツッコミを入れる人も居るだろうけれど、このハンターズ組合の組合長っぽい人の統率力に惚れ惚れする人の方が、多いのかもしれないな。

 そんな呑気な事を考えていると、ゲーム画面の真ん中に”緊急クエストが発生しました”と言う文字と、目の前に居るミランダさんの頭の上部には、緊急クエストに関係のありそうな赤い矢印マークが現れた。


 「そう言えば、強制参加クエストだった。」


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