第190話 丼の力


 「はぁぁぁ⁉何で二人とも、似たような物を作るのよ!!!そこはせめて、配信的にも彩がある料理か、作り方が難しい料理にしなさいよ!!」


 「そう言ってもよ、俺に出来るのは簡単な料理か、キャラ弁ぐらいだぜ?ちなみに、OンOンOンとジャOおじさんが一番得意だぜ?」


 「私も、普段作る料理は、あまりお見せ出来るほど綺麗な物では無いですし、キャラ的には、豚丼が一番良いと思ったんですよ!!」


 〈wwwww〉

 〈漢と言ったら丼物だよな!!〉

 〈豚丼苦手〉

 〈オーソドックスな牛丼を選んでないだけ、褒めてくれ!www〉

 〈料理と言ったって、普段から作る方が珍しい気がするww〉

 〈基本、一気に作って溜め込むもんな!ww〉

 〈独身なら普通よな!ww〉

 〈重い!ww見てるだけで胃もたれしそう!!〉

 〈米炊いてるだけマシだな!ww〉

 〈弁当と軽いサラダで済む話〉

 〈キャラ弁wwww〉


 なんだかんだと文句を受け流しながら、手際よく作業を進めていく二人の様子からは、手慣れている感じもする。

 端の方では、本来、嬢ノ内さんが担当する筈だった、城東さんと腹一さんが料理している状況を、視聴者に逐一伝える仕事を肩代わりしており、上手く視聴者に伝えようと頑張っている姿が見えるのだが、城東さんと腹一さんの調理スピードが思ったよりも速く、処理に追いついていない。


 「ああ、もう!ご飯の上に乗っけるだけの料理なんて、面白みに欠けるでしょ?もうちょっと工夫してよ!工夫を!!」


 「「ピキンッ」」


 気付けば、ご飯の盛られたどんぶりを取り出していた二人は、いつの間にか作り終えていた唐揚げと生姜焼きを、ご飯の上に乗せる作業に映っていた。

 確かに、ここから見た感じだと、どちらも上に茶色一色で代り映えはしないが、嬢ノ内さんの言い方だと、誤解を招くのでは?


 「おい!『ご飯の上に乗っけるだけの料理』だって?ふざけんな!!どんぶりってのはなぁ?手頃且つ、自分好みの物を自由に乗せることが出来る楽しさと、忙しい日々を生きる中で、時間短縮に大いに役立っている丼ものを馬鹿にするなよ!!」


 「そうですよ!!お金が無い時は、格安のベーコンや鮭フレーク、卵を買って、卵はスクランブルエッグにした後、それぞれをちょっとずつ乗っけて食べる有難さを知らないんですか?一食の合計が100円以内で満腹になれる最高のどんぶりでしょうが!!!」


 「えっ⁉いや、馬鹿にしたかった訳じゃなくて!えっと、ごめんなさいぃぃ!」


 城東さんと腹一さんの丼もの愛に敗れた(?)嬢ノ内さんが、端っこの方で落ち込んでいる演技をしている内に、どんぶりのメインにしていた食材の他にも、バランス良く盛りつけられた『唐揚げ丼』と『豚丼』が、調理スペースから少し離れた机の上にある、カメラの前にまで運ばれていく。


 「唐揚げ丼には、福神漬けと甘めに味付けしたレモン汁、白髪ネギが一番よ!!!」


 「豚丼なら、小さく切った豆腐にポン酢、後は同じく白髪ネギを乗せれば完璧ですね!!」


 若干、丼ものにしては異色にも見える食材を乗せたどんぶりを持ち、自信満々に答える二人を見て、不安を覚えるしかなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る