第182話 勇者城東 村人A奈落 ②
キャラクター選択画面から切り替わり、中世風の巨大な城と城下町が映し出され、町の入り口付近に俺達のキャラクターが現れる。
それぞれの頭の上には、キャラクターネームとレベル、選択した職業が表示されていて、薄く光っているように見える。
俺のキャラクターは、使用しているVTuberモデルに寄せた姿に、布の服と布のズボン、竹の槍を持たせた格好だ。
そのキャラクターの横には、俺のキャラクターと同じ布装備の、少し城東さんのガワをデフォルメした、城東さんそっくりのキャラクターが立っていた。
一つ、気になる点と言えば、布装備に似合わない程立派なリーゼントが、これでもかと主張している点だろう。大体、50~60㎝ぐらいの長さか?
「・・・・リーゼントにしては長くないですか?」
「これか?いやぁ、髪型を選択する時に見つけたリーゼントだと、これの半分程度の長さしか無くてよ?そしたら、リスナーのアドバイスで『髪型を何もセットせずに、次の欄にある頭の衣装装備の中から、『ダウンロード記念海苔巻き』を選択すれば、さらに長いリーゼントっぽくなりますよ?』って言うコメントがあったから、試してみたら御覧のとおり、これ、結構良くないか?」
〈ツッパリ=リーゼント?wwww〉
〈奈落のキャラ、なんか普通やなwww〉
〈城東のキャラクターって、武器持って無いの?〉
〈のり巻きwwwwww〉
〈海苔巻きwwwwwww〉
〈草〉
〈『このコメントは削除されました』〉
〈竹槍と言うより、物干し竿に見えるwwww〉
〈周り見て!周り!!www〉
〈その視聴者、何処からそんな情報持って来たんだよwww〉
「周り?・・・あっ!それじゃあ、目的地に早く行きましょうか!」
「あ?おいっ!目的地って何処なんだ⁉それより、何でそんなに急いでんだよ!」
「いや、周り見てくださいよ周り!城東さんのリーゼントが目立ち過ぎて、人が集まってましたよ?」
「はあ?うわっ!マジかよ!」
そう、このゲームはオンラインゲーム。
コメント欄に書き込まれていたから気付けたが、俺達以外のプレイやーも数多く居ることを、完全に失念していた。
唯でさえ、俺達の職業は『ネタ職業』と呼ばれ、ゲーム内で見掛けること自体が少ないにもかかわらず、強調の激しいリーゼントの男が、ゲーム開始直後の場所で佇んでいたら注目されるのも当たり前だ。
頭に海苔巻きを乗せた男なんて、イベントキャラクターに間違えられてもおかしくはないだろ。
「取り敢えず、チュートリアルに書かれているように、道具屋に向かいましょうか。」
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