第125話 反撃の一歩


午前7時

 会社員としては早過ぎる時間に、俺は社長室を訪ねた。


 「どうやら上手くいったみたいですね、高太郎さん。」


 「いやー、まさかこれほどまで上手くいくとはねぇ!お陰様で、後続が活動しやすくなったよ!!」


 この約一週間、俺達一期生はあの手この手を使って、『スペースオペラ』に害を与える視聴者を粗方絞り終わり、ブラックリストを作ることが出来た。

 これは、デビュー配信をする前に行われた全体会議の議題に挙がった『初見の方を引き込むには環境が整っていない』『配信を観ていて不快を感じさせるコメント欄の改善』などを目的とした計画だった。その為に、嬢ノ内さんと腹一さんの配信でヘイトを集めた後、城東さんが体の傷を見せて同情を誘い、それでもアンチ活動を続けり奴らを俺の配信で引っ張った後に、叩き潰すことになった。また、DM等に送られて来た、セクハラや猥褻な写真を行った視聴者は緒恋さんの配信に現れた為、そこでも叩き潰した。勿論、コメント欄でセクハラした視聴者と共に。


 「恐らく、アカウントを変えてまで再び犯行をしてくる奴等も居るでしょうし、ブラックリストに関しては、他の企業にも提示した方が良いでしょうね。」


 「・・なるほど。確かに他の会社にも手伝って貰った方が効率が良いか。まぁ、その辺はこっちで対応しておくよ!そうだった!奈落君から他のライバーの人に、『!!』って伝えといて!」


 「えっ⁉俺からですか?まぁ、良いですけど、高太郎さんもしっかり休んで下さいね?社長が倒れちゃ会社も共倒れするかもしれないんですから。」


 「大丈夫大丈夫!!そこんところは、前職で見極めて来たから!!」


 それは喜んで良い物では無いと思うが。取り敢えず、高太郎さんを休ませる為にも、話は早く切り上げた方が良いと考え、高太郎さんに軽く頭を下げた後、部屋から退室する。


 「ふぅ、やっとひと段落ってとこか。はぁ、全員に報告を済ませた後は、伸二さんにも色々と説明しないとなぁ。」


 これからの活動に支障をきたさない程度まで、社内が落ち着けることに安堵しながら、個人的な問題がいくつか残っていることを考えると、憂鬱な気分にもなる。


 「それにしても、ブラックハッカーの奴等が落ち着き始めたのにも、何か理由があるのか?既に炎上してる人は標的外、又は、情報を集めている最中か。・・・もし情報を集めている最中なら、一人くらいは特定出来そうだけどな。」


 自分なりに今後の動きを考えながら、待合室に向かった。


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