第84話 欲家族
奴等の予想していた答えとは違ったようで、こちらを見ながら唖然とした表情をしていた。そこまで突拍子もない事を言ったつもりは無い筈だが、何処に驚いたんだ?
「たっ、建て直す⁉何処からそんな金が出せるんだ⁉そんなもったいないことしないで、私に任せなさい!!ついでに、修繕する費用があるなら、それも有効活用してやる!!」
「そんな事あなた達には関係無いことでしょう?それに、建て直しの件についてはもう頼んでありますし。何より、両親の実家を建て直すことの何処にもったいないと感じると?」
こいつの言ってる意味が分からなかったが、金目当てで訪ねて来たことは分かった。毎回毎回訪ねてくるたびに、俺からの印象が悪くなる一家だな。
父親の方が母親の方を向いてコソコソと話し始めた。まぁ、全部聞こえてるんだけどな。
『おいっ、聞いてた話と違うぞ!使い道の無くなった土地ぐらい、簡単に手に入るんじゃなかったのか?これじゃあ、計画が進まないぞ!!』
『知らないわよ!あの社長から聞いたのは、ガキから土地を手に入れてくれば、報酬の半分をくれるって聞いただけよ!!そもそも、あんたが上手くいくってここまで来たんでしょ?』
『チッ、それなら金だけ回収するか?どうせなら、ガキの方も殺して欲しかったぜ!そうすれば、金は全て俺らの物になったかもしれないのによ!保険金は手に入らないしよ!』
クソ親共が好き勝手言っていると、息子の方も割り込んできた。
『父さん、早くしないと面談の時間が無くなってしまいます!何かしら結びつけないと!!』
『そう言うならお前が何か案を出せ!!俺達一家の生活が懸かってんだからな!このガキから金を巻き上げないと、最悪な事態を招き兼ねないんだぞ!!』
『任せてよ父さん!!!こいつが調子に乗ってられるのも今の内だからさ!!それに、裁判で巻き返せるかもしれないでしょ?』
『そうよそうよ!まだ焦らなくても大丈夫だわ!!いざとなったら、あの方法を使いましょう!!』
なんか面倒なことになってきたな。ただ単に俺が、こいつらと話す事に飽きて来ただけかもしれないけど。と言うか、母親の方の眼が血走ってて怖いんだが?よく見ると、目の下に隈が出来てたり、肌荒れが酷かったりしてるしな。本当によく見ないと分からない程、上手く化粧で隠れてるから、他の人には分からないだろうけど。
「そろそろ終了時間なので、もう戻っても良いですか?あなた達と長時間話していても、こちらに対して生産的な内容にはならないでしょうし。それと、もう来ないで貰っても良いですか?あなた達家族に時間を掛けられるほど、俺だって暇じゃないんで。」
そう言い放った後、入口近くに居た警察官と共に部屋から退出する。後ろの方で罵倒する声が聞こえたような気がしたが、気にしなくて良さそうだ。
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