第76話 勾留
午前10時
堅いベッドで寝たことによる、腰と首の痛みに耐えながら取り調べ室に入る。
今日も進展の無い取り調べが行われるのかと愚痴をこぼしていると、部屋の扉が開き、昨日俺の取り調べを担当した男と40代ぐらいの女性が入って来た。
二人は机を挟んで向かい側に座り、女性はカバンの中から複数の書類を取り出し、一枚一枚を俺が見やすいように並べ始めた。
「奈落君おはよう!昨日はよく寝れたかな?彼女は・・・。」
「そこまでで大丈夫です。初めまして、検察官の
女性の方からは、キツそうな目付きと共に抑揚のない言葉遣いで自己紹介が送られる。
これから始まる検察官の報告に諦めな表情を浮かべながらも、机に出された書類を一枚一枚目を向ける。
「単刀直入に話しますが、あなたは勾留されることが決まりました。ある程度の物的証拠、又は証言が取れているのなら勾留されることも無かったのですけどね。」
若干、棘のあるような言い方が気になったが、気にしないことにした。それよりも、目の前のことに集中しないとな。
「こちらの資料に書かれているように、犯行に使用された道具にはあなたの指紋がくっきりと残っています。また、事件当時の状況を見た近隣住民から詳しい話を聞くことは難しい状況です。せめて、事件発生から30分以内に第一発見者が現れてくれれば、証言として有力な物が出て来たかもしれませんが、事件発生から約3時間後の証言ですからね。しかも、実際に犯行が行われた場面を誰も見てはいなかった訳ですからね。」
それから約20分掛けて、事件当時の証言や現場検証を行った結果、被疑者として一番疑わしい人物が俺だと言う事を説明された。
説明を聞いている最中に男の警察官の人が、こちらの方をチラチラと見て来て鬱陶しかったが、俺が多くの人間に被疑者として見られていることは、よく分かった。
「ちなみに、今回の事件による、あなたへの検察官や弁護士を含めた見解ですが、最低でも少年院、又は精神医療等を受けられる少年院が確定しています。その事だけは、覚悟して頂きたいと思います。」
どちらにしろ、少年院は避けられないようだ。
少年院に入ることが確定したと言われたのにも関わらず、俺の心境は至って穏やかだった。いや、変化が無いと言えば良いのか。そんな俺を
「このままだと、刑事裁判の方は分かりませんが、民事裁判の方は『負け』が確定している状態です。あなたの担当弁護士の確か、斎藤さんでしたか?その方とじっくり、お話することをお勧めします。」
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