第77話 逃げ道が無い
女性の横で苦虫を嚙みつぶしたような表情を続けている男の人が気になりながらも、検察官との話し合いは終わった。
「次は10日後に面談がありますので、それまでの間にある程度の話し合いはしておいて下さいね?では。」
そう言い終わると、机の上にある書類を素早くカバンにしまうと、席を立った。それを見た横の男も慌てて席を立つと、女性の後ろに続いて部屋を出て行った。
慌ただしいななんて感想を持ちながら、これからの予定を頭の中で組み立てる。
まずは、伸二さんと話あって何をすれば良いのか纏めて、10日後に備えないとな。ああ、少年院にはどれくらいの間入るのかも聞かないとな。
扉が開き、警察官に誘導されながら部屋から出ると、先程まで話していた検察官と警察官の会話が廊下に響いている。どうやら、男性警察官の方が突っ掛かっているようだ。
『流石にあのやり方は無いんじゃないのか!!』
『検察官として間違ったことはしていませんが?』
『だからって、あそこまで冷たくする必要はあったのか?せめて言い方ぐらい優しく出来ただろうに!!相手はまだ未成年だぞ?』
『未成年と言っても、18歳でしょう?それなら社会の厳しさぐらい分かっているでしょうに。何で私が相手を気に掛けなければいけないのです?増してや、無罪を立証する証拠も無い人を?ありえませんね。』
『それは検察官としてか?個人的な意見も混ざってるんじゃないのか?』
『それはあり得ませんね。どんな相手でも、有罪なら有罪、無罪なら無罪、そこは変わりませんから。残念ながら彼は有罪だっただけですよ。それに、こうゆう事には今の内に慣れておいた方が良さそうですからね。彼が追い込まれるのは、これからですから。』
『それは分かってるさ。だがな、それで彼が人を嫌いになったらどうするんだ?汚い大人の部分だけ見せるのは、やり過ぎだと思うぞ!!』
『人が嫌いにですか。それはもう手遅れかもしれませんけどね。』
俺が留置所に入るまでに聞こえたのはそこまでだった。
「2時間後に夕食を持ってくる、それまで好きなように過ごせ。」
好きに過ごせと言われても、何か暇つぶしになるような物を持っている訳では無いので、黙ってベッドに横になる。と言うか、留置所内に居る間は基本的にずベッドの上に居る。
それにしても、留置所のじめじめとした空気と堅いベッドには慣れないな。他の警察署の留置所がどのような感じなのかは分からないけども、ここの留置場は結構酷いんじゃないのか?蜘蛛の巣と埃が酷いぞ。
約二時間後、言われていた通りに食事が運ばれて来た。
これまでと同じく、茶碗一杯よりも少なく盛られたご飯と納豆、少なめの味噌汁だった。夕食にも納豆って面白いよな。
それほどの量では無い為、ササっと食べ終わると扉の近くに置いておく。こうすれば勝手に持って行ってくれる。
また、やることが無くなったのでベッドの上で横になる。
「内臓脂肪が増えそうだな。」
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