2の5 戦闘後の処理

「……凄い戦いだったがお前達はいつもあんな事をしてるのか?」

「ダミスと戦うのは通称【掃除屋】と呼ばれる、世界巡回討伐軍の仕事で俺たちの本業じゃない。集団戦闘が基本なのにウルズの所為で4人だけでやらされたんだよ」

 ダミス軍団を掃討した蒼空達は、DK18Pから仮小屋へ戻ると装備を脱いで椅子に座りお茶を飲みながら休憩・雑談をしている。

「私が何をしたと言うんだ」

「つまりだな……」

「部下に責任を押しつけるとは酷い女だな」

「クロフェン大隊長は素晴らしいお方だ」

「そうだそうだ俺達は幸せなんだぞ」

「大の男が揃って言いなりとは、第1特察隊は腰抜けの集まりなのか?」

「「「腰抜けって言うな!」」」

 7月21日の昼前、ただ働きをさせられた男達は気分が悪くウルズに言われると余計に思うがその通りなのでこれ以上は騒がない。

 ダミス軍団を倒し終えて仮小屋に戻って来た第一特察隊は、お腹が空いたのでダリアンに軽食を作って貰いつつ、その間に残りは隅に置かれた【魔力通信装置(マジフォン)】を立ち上げる。

 《この魔法道具は高価なので限られた場所にしか置いてないが、自分の魔力を使って遠く離れた場所と通信できる魔導機械。

 ミスリルで作られた四角柱の台座は。洗面台のように魔法鏡とセットになっている。その上部には魔法陣が描いてあり、中心部の穴へキースフィアを差し込んで魔力を送ると台座が光りだして鏡が揺らぎ、鏡に映りだした相手と会話が出来る。

 マジフォンの横に置かれたキースフィアは緊急時の通信用で、魔力がない人でも使えるように供給用の魔法石がちゃんと用意されている。》


 蒼空は専用のキースフィアを持っているので据え置きの物を使わず、内ポケットから出した四角い棒を差し込んでマジフォンを起動させた。

蒼空が連絡を取っているのは、

【3ヶ国統合政府・情報管理局のクエスト課】。

 《情報管理局とは、界中から様々な情報やら技術を集めて管理運用する組織。

クエスト課とはその名の通りに、様々な場所から出される依頼を管理する部署。》

マジフォンからベルがリンリン鳴り始めると少しして応答があり、魔法鏡にうら若き受付嬢の姿が浮かび上がる。

「はいこちらは3ヶ国統合政府・情報管理局のクエスト課です。蒼空隊長じゃないですかどうかしたんですか?」

「ディナちゃーん今度デートしない?」

「しません。下らない用事なら切りますよ」

 魔法鏡に映った机に座るのは、統合軍内で人気上昇中なウンディーネの新人。彼女は蒼空の横から手を振って話し掛けるマグレーを軽くあしらうと用件を聞いてくる。

「釣れないなぁ」

「ダミス討伐の依頼を達成したから監察官を近くの仮小屋に派遣して欲しい」

「了解しましたえーっと……」

 机の上に置かれた書類の束を持ったディナは捲りつつ依頼の登録番号を聞いてくるので蒼空は答えて行った。

「番号は……だ」

「えーーーっと依頼内容はDMHの掃除ですね、何人で達成されたのでしょうか?」

 書類の束を捲って依頼を見つけたディナは続けて質問をしていく。

「俺を含めた4人だけでDMHの掃除をしたんだ」

「嘘をつかないで下さいよ蒼空隊長、調べたら直ぐに分かる事なんですからね」

「本当の話なんだぞ、クロフェン大隊長にやらされたんだからな」

「本当の本当ですか?」

「連絡は来てないのか? 疑うなら大隊長に聞いてみてくれ」

 そんな無茶が出来るわけ無いとディナは蒼空を疑うが、改めて書類を確認すると「えーーーーうそーーーーーーーーーー」と彼女は大仰に驚いて、ひっくり返りかけた椅子を戻しながら頭を下げる。

「疑って申し訳ありません、書類にちゃんと3人でやるって書いてありました。後からウルズさんが参戦なされされたのですね?」

「そうなる」

「ふつうは瞬殺されると思うんですけど、数百体ものダミスを僅か4人でとか皆さんは体どうやって倒されたのでしょうか? 」

「聞いてどうする?」

「単なる興味です、聞かせて頂けると面白いかなぁなんて」

「武勇伝ならマグレーに聞いてくれ」

「あっ結構です。じゃあ手続きに移りますね」

「ディナちゃん豪華なレストランで夜景を楽しみながら俺と……」

「現在位置を教えて下さい」

「DK18Pから西行った場所にある仮小屋の中だ。仮小屋の番号は……」

 色男を無視したディナは蒼空と話ながら別の書類に必要なことを書き込み、話が終わって通信を切ったらマグレーは落ち込みウルズが侮蔑の視線を送っていく。

「噂通りの色狂いだなフラれて当然だ」

「煩いほっとけ」

 それから軽食を食べつつ監査官が来るのを待った4人は、彼らと一緒にダミス軍団と戦った場所に行って確認。そしてダミスが一掃された場所を見た監査官は、さすが第1特察隊にヴァルキュリア等と4人を大いに褒めて、みんな揃って特察隊の基地に帰るのだった。

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