2の4 ダミス軍団との闘い、偉そうな女神様
《7月21日の早朝、東から太陽が顔を覗かせる前に仮小屋から出発した蒼空達はブルーホースで空高く飛ぶと、DK18Pに集まっているダミス軍団を迂し回り込みその西側の位置へと到着した。
西側だと影を隠せて暗がりは見つかりにくく、風は東から西へ吹いていて第一特察隊は匂いと気配が消しやすくて、気温は温かい晴れだと気象条件は完璧だ。》
黒団子の群れから距離を取って下馬した彼らは、武器を構えて身を屈めるとブルーホースを残したまま慎重に前進。荒野を歩いて敵から30m程離れた所で地に伏せた第1特察隊は、戦いを挑む前にまず相手を確認していく。
「トイレに行ってきていいか隊長?」
「ここでしろ」
「俺はこんな所で死ねない家族を養わなきゃならんのだが……」
「戦場で死ねたらダリアンは2階級特進して家族は退職金、遺族年金、賞じゅつ金でがっぽりだから心配しなくていい」
いやだーーーーーーーーー
やりたくないーーーーーーーーーーーと言う
部下達の意見を躱しながら隊長は粛々と戦闘準備を進めて行く。
小型も居るが前方にいるダミスの平均サイズは人型以上で、それはベヒーモスと呼ばれる巨牛だったり鎧らしき物を着た兵士がウジャウジャと彼らの前に居たりする。
《【ダークエーテルの固まりある彼らの腕力と瞬発力は、物理法則に囚われないのでのでワーウルフ以上と強いて速い!】
【疲れ知らずな上に魔法や呪いに猛毒まで使えてしまう!】
【酸欠・溶岩・強酸を浴びても全然平気!】(寒いのはちょっと苦手)
【ドラゴンが真っ青になる狂暴性をもち学習して成長する!】
と言うそれはそれは恐ろしい相手がダミスなのである。》
「始めるぞお前らテレムを装備するんだ」
《【精神感応通信具(テレパスアイテム)⦅テレム⦆とは?】
その名の通りにテレパスで相手と精神会話ができる魔法道具の事。
蒼空達が腰袋から取り出したミスリルの瞳型チェーンペンダントには、ルーン呪文が彫り込まれていて自分と相手の血を使って契約し、魔力を送ると頭の中で会話ができるようになる便利な魔術道具だ。
頭で考えた事がそのまま筒抜けになってしまうので、日常生活で此れを使うのは余りお勧めされていない。通信相手の人数分ペンダントが必要になり、3人の第1特察隊だと各人2個ずつの合計6個をそれぞれの首へ掛ける事になる。》
〔聞こえるか蒼空、マグレー?〕
〔問題ない聞こえてる〕
〔俺もだ、戦うのを止めないか隊長?〕
〔マグレーが責任を取るなら逃げてやってもいいぞ〕
〔愛しい大隊長様に叱って頂けるなら本望だよなぁ〕
〔告白してデートしたら借金塗れにされてポイだ。あの女には二度と近付かん〕
〔じゃぁダリアンが謝れ〕
〔隊長の仕事だろうが〕
〔隊長をダリアンに代わってやろうか? クロフェン大隊長は恐いんだよ〕
〔俺は現状で満足してるし隊長なんて面倒な仕事はしたくないんだ〕
逃げ道なんてないしこんな会話を続けても疲れるだけ。
やれやれと溜息を吐いた2人が漸く諦めたら、蒼空達は静かに地面から立ってそれぞれの武器を構えていく。
《着ている鎧はミスリルの軽装で3人とも同じ。
ダリアンは2本のミドルソード、
マグレーは魔術の杖にある柄の部分が剣になったソードロッド、
蒼空の武器は体の正面に掛けてある弦のないマボウで此れもミスリル製。》
⦅外部説明4:魔法の発動には二種類の方法がある⦆
〔スーパーMAXトルネードの準備が出来たら教えろよマグレー〕
〔分かってる少し待ってくれ〕
マグレーに指示を出しながら蒼空は魔術弓(マボウ)を引いた。
《弦のないマボウを体の前から外して構えた蒼空は、腰や胸に巻き付けてある四角い矢筒から同時に3本の魔弾を引き抜いて弓に掛ける。
魔弾を引くのに力はいらない、魔力を注ぎつつ矢じりを弓に引っかけて矢の後ろ半分を引き抜くと、マジックラインと呼ばれる魔力の線が先端から伸び出して魔法を弓矢を撃つように構えられるのだ。》
2本の剣を抜いたダリアンはマグレーの横で敵を警戒する。
魔力を溜めるのに時間がかかる大型魔術は乱戦になると使いにくいので最初の一撃はマグレーでなければならない。
〔まだなのか?〕
〔もう少しだよもう少し〕
〔ダミスが動いたぞ〕
〔マグレーの魔力に反応したんだな〕
太陽はまだ昇り掛けで青空達の立っている場所は薄暗く、蜜へ群がる黒蟻のようにダミスはDMCへ群がっている。そのダミス軍団の西側にいる一部がマグレーの動きに気付い体の向きを変えると、他のダミスも半分ほどが蒼空達の方へと振り返った。
黒くユラユラした魔力で作られるダミスが発する殺気は、ナイフのように鋭くて慣れている蒼空達でも数が揃うと気圧されそうになる。
〔3人だけでは無理だろ隊長!〕
〔逃げたいなぁーーーーーーーーーーーーー〕
〔あーーー聞こえない、聞こえないぞーーーーーーっと〕
《鞘からソードロッドを鞘から抜いたマグレーは、刃を下に向けて両手で構えつつ柄頭に付いた大きい魔宝石に魔力を注いでいる。
ソードロッドとはその名の通り魔力を増幅する杖と剣が一体になった物で、汗ばむ程にマグレーが武器へ魔力を集中させていると、攻撃の意思を感じ取ったダミスの一部が蒼空達の方へと走り寄ってきた。
その数は8体で象並の巨躯に角が生えた猛牛を先頭にして人型もいる。
〔魔法を撃つんだマグレー〕
〔畜生が、どうにでもなりやがれ〕
《マグレーの前では小さめの風が渦を巻いて留まっている、【この状態で維持するのをMアイドリング】といい、低出力で維持している魔法へ合図に合わせて貯めていた魔力を一気に解き放つとその真価が発揮される。》
「スーパーMAXトルネード! お前ら纏めて消し去ってやるーーーーーー」
マグレーが魔力を解放すると小さかった竜巻が、一気に成長してまず8体のダミスを飲み込んだ。直径15m、高さはその倍以上という大竜巻に変化した魔法は、ソードロットが指し示す方向に向かって猛スピードで走って行く。
ベヒーモスを真似ている黒い塊は対応が間に合わずに即時粉砕、だがその後ろにいた兵士タイプの前には黒い盾のようなものが発生した。
《【エーテル(E)シールド】呼ばれるこの現象は、MSPで基軸魔法とセットで霊体に刻まれるもので透明な魔力の盾を作り出せる魔法の一種。この魔法は当人の能力次第だが初級魔法以上を防ぐことが可能になる。
【マジック(M)シールド】は魔法道具から発生する盾で一般人でも使える。》
「そんなもんで防げる訳ないだろ!」
ゴーーーっと突き進む大竜巻はEシールドごとダミス達を細切れにし、逃げようとしたダミスを引き込んでこれも粉々にする。だがそれだけでは駄目だ【例え1㎜以下になろうとも液体モンスターは集まり直して再生する】ので、もうひと手間が必要になるのだ。
〔隊長の出番だぞ〕
〔任せとけ〕
スーパーMAXトルネードがダミスを飲み込むのに合わせて蒼空は射撃開始。
《蒼空が矢箱から彼が取り出す魔弾は【クリアボム】、浄化弾とも呼ばれるラグナロク後に開発された魔弾で命中すると、光の球体が発生してダミスを構成するダークエーテルを消し去ることができる。
クリアボムは炎魔法などよりも安全かつ効果的なので、〘一般人にも使用が強く推奨されている〙対ダミス・ゴースト用の攻撃魔法だ。》
「ダミスを全て刈り取るんだマグレー」
「うぉぉぉぉぉぉ」
スーパーMAXトルネードが光っている、一度に3発ずつ定期的に蒼空が撃ち込んでいるクリアボムの力で前方にいたダミスを浄化しつつ、群れに突入した大魔法は逃げ回るそれらを追って前後左右へと激しく動き回って行った。
「頑張れマグレー」
「まだまだだぁーーー」
高位魔導師らしく褐色肌の男が使える魔力はかなりある、出来るだけ多く倒しておかないと次が大変なので、マグレーは歯を食い縛って大魔法を使い続けるのだった。
「はぁはぁはぁ……」
暫くして魔力を使い果たして脱力し地面にへたり込んだマグレーは、肩で大きく息をしながら自分が出した成果について隊長に聞いてみる。
〔少し待ってくれ準備しとけよダリアン〕
〔嫌だなぁ、本当に嫌だなーーーーーーーーーーーーーー〕
〔上出来だぞマグレー今の一撃だけで73体も倒せたじゃないか〕
いい所を強調するのは隊長だから。
〔まだ269体も居るんだな……〕とすかさず抗議する第2弾の主役。
〔逃げないか隊長?〕
〔逃げない。マグレーはHEPを飲んで回復しろ次はダリアンだ〕
〔ちゃんと援護しろよお前ら〕
〔分かってるから早くしろダリアン〕
〔くそーーーーーーーー〕
〘よくもやってくれたなお前ら!〙とダミス軍団の反撃が始まっている。混乱しているダミス軍団の中で体制を整えられた者から順番に、特察隊へ攻撃魔法を次々に撃ち出していくがそれらは蒼空の力で命中しなかった。
「俺はミラス伯爵を恨むぞ! ワォォォォーーーーーーン」
《斜め前へ駆け出しつつら魔力を込めたダリアンは【魔獸の咆吼(ハウリングソウル)】を使う。ワーウルフの特技になるこの遠吠えは数㎞先まで声が届き、至近距離では重厚な魔力の波動によって相手の腰を抜かさせたり出来る補助魔法。》
この魔法でダミスは怯まないが敵を引きつけるには十分で、ダリアンはそれらを掻き集めるように弧を描きながら疾走し始めた。
《神に作り出されたワーウルフは俊敏さを売りにする魔獣で、風の魔法石が付いた籠手や脛当て使った時の彼らは、100m5~4秒台というブルーホースにも引けを取らない猛スピードで走れるようになる。》
〔さっさとダミスを片付けてくれよーーーーーーーー〕
〔分かってる〕
〔そんなに急かすなって〕
蒼空とマグレーに心の中で訴えたダリアンは、追いつかれると魔法の集中砲火を浴びるので必死に逃げ回っていた。一方で彼のように速くない蒼空とマグレーはテレムと同じ要領で、魔法契約をしたブルーホースを呼びつけるとそれぞれ騎乗する。
〔ダリアンを追ってる集団の後方から順番にだな隊長?〕
〔その通りだがまずあれらからだ〕
2人がブルーホースに乗って走り出すと、ダミス軍団の一部が分かれて自分達の方へ向かって来るのだった。ダリアンの進行方向をよく見ながら反対方向へ、今の状態で攻撃するのは蒼空が中心になり彼はクリアボムを撃って撃って撃ちまくる。
《弦を引くのに力が要らない魔弾は上手い人だと、普通の矢を構えて射る間に2~3回も撃つことが可能だ。これで一度の射撃につき3発ずつ、常人では扱えない大量の魔弾をばら撒く蒼空はウラノスアイの力で100%確実に命中させられる。》
地面を走ると衝撃やら何やらで疲れるからブルーホースは空中を移動中。
後ろ向きに乗りながら⦅この馬は精神操作ができる⦆、攻防に渡ってウラノスアイで戦場を支配しつつ適度な距離を保ち、ダミスを次々に浄化していく隊長の後ろでマグレーは腰袋から取り出したHEPを飲んでいくのだった。
〔EPって不味いんだよな〕
〔早くしろってマグレー〕
《EP、エーテルポーションは美味しくない。粘性があるし乱用を避ける為に匂いが悪くて雑草味とか態と不味く作られている。マグレーの体がぼうっと光るのは飲んだEPが彼の霊体に干渉しているからだ。》
魔術を撃ちながら追って来るダミスは30体に減っていた。
人型とか陸戦型だったダミスは2人を追うために飛行型へ変身し、危険だがHEPを一気飲みして魔力を回復したマグレーも戦闘に参加する。
「ファイヤートルネード!」
テレムを使ってどのダミスを狙うのか、蒼空と相談しつつマグレーは1発目を撃つ。鷲の頭に虎の体を持ったグリフォンに、風魔法だけでは足りないと炎を足したトルネードが襲いかかると、その体が燃え上って段々小さくなりやがて消滅した。
《マグレーは炎魔法を使えないので足りない炎属性は、腰袋から取り出して魔力を込めつつ投げた魔法石をトルネードで砕いて合体魔法にしている。》
マグレーが1発撃つ間に蒼空は12発を撃ってダミス4体を消し去るが、敵はまだ24体もいて全てを倒すのはかなり大変。
〔もたもたせずに撃ちまくれマグレー〕
〔こんなの風魔導師の仕事じゃねぇよ!〕
普通に魔法を使うよりましだが数が重なるとマボウも消費量は大きく、そこへウラノスアイの分が加わると蒼空の魔力はどんどん減っていく。彼が魔力切れを起こすとダミスの遠距離魔法に抵抗できなくなるので、この戦いは時間との勝負でもある。
〔無理すぎだぁーーーー逃げようぜ隊長〕
〔やかましい!〕
ダミスはモンスターだがただのモンスターではなく、厄介な人型だと中~高位魔導師並みに強いやつもいる。空中に人型はいないがワイバーンやペガサス擬き見たいな敵が居たりして、マグレーが撃つ上級魔法に匹敵する魔法を撃って来たりもした。
それは大樽程もある火炎弾とか高出力の雷魔法だったりする。
〔まだなのか隊長ーーーーーーーーー〕
〔こっちは残り7体だもう少し時間をくれダリアン〕
走るのに疲れたダリアンは呼びつけたブルーホースに乗っている。彼はダミスの攻撃魔法をどうにか躱しつつ逃げていて、蒼空が守るとはいえ段々と苛烈さが増していくそれにいつ当たってしまうか分からない。
〔……片付いたぞ戻って来いダリアン〕
〔やっとかよ〕
浄化弾を数発使って黒いグリフォンを倒した蒼空は、ダリアンに指示をだすと自分達もその方向へブルーホースを走らせる。
蒼空が倒したダミスは30体、マグレーは8体。ダリアンと合流する前に準備をすることにした蒼空は肩と腰に巻いた皮ベルトの内、腰ベルトを外して捨てると機械馬の後ろに積んだ革袋から同サイズの物を取り出して巻きつけた。
腰ベルトには矢箱が3つずつ付き、それぞれの箱には数十発の魔弾が縦向きに並べて収められていてる。
〔抜かるなよマグレー〕
〔俺ならできる、俺は優秀で死なないんだ〕
逃げるだけの先程とは状況が逆。
側面からだが敵に向かって行くので、マグレーはソードロッド向きを逆にして剣のように構えつつ魔力を注いだ。《柄頭に付いている魔法石は魔力増幅用の無属性なのだが、鍔の部分に嵌っている赤い魔宝石からは炎が発生する。》
右手にファイヤートルネードを宿したミスリル製の魔法剣、左手にはトルネード。高位魔導士らしく2つの上級魔法をMアイドリングで構えつつ、ダリアンが前を通り過ぎるのを待ったマグレーはその後方にいるダミスの集団へ突撃を敢行。
〔賞じゅつ金で俺の墓を建ててくれよ隊長ーーーーーーーー〕
〔縁起の悪いことを言うな!〕
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
地上の群れを2つに割る勇気がないマグレーは、予定通りの5分の1位目を見計って空中から下のダミス軍団へ斬りかかった。ダミスの残りは231体、一度に大体40体位ずつを群れから切り分けて順番に倒していくのである。
その端にいる群れからはみ出たした1体、《グロウと呼ばれる翼を広げると2mを超えるカラス型の怪鳥》へ魔導機械馬に乗っているマグレーが接近すると、これに気づいたグロウは向きを変えて攻撃を仕掛けてくる。
ボウッと怪鳥の体が燃え上がった。
〘グロウは特攻用に作られたキメラ〙である!
ダークエーテルの固まりであるグロウは、自らを巨大な炎の爆弾へ変えるとマグレーに体当たりをして来るのだが、「上等だ! このヤローーーーー」とマグレーは魔法剣を振り上げながらダミスへ向かって行く。
ブルーホースとグロウを衝突させないように進んで、魔法剣とグロウがぶつかり合うと押し合いになるが両手持ちにしたマグレーはそのまま敵を両断。敵を切り抜けたマグレーの後方で大爆発が発生すると、それに引きつけられた数十体のダミスが彼を追い始めて蒼空はその集団に浄化弾を乱射して倒す。
(あの数を相手に中々頑張るじゃないか、さすが第1特察隊と言った所か)
蒼空達とダミス軍団がいる場所のはるか上空、彼らに見つからないように高い位置から戦いを見下ろしている1人の女性がいた。
背中に白鳥を思わせる白い翼、装備は取られた物の代わりに貰った量産品のミスリル軽鎧に長剣と、安物に不満はあるが彼女はダミスと戦うための準備が出来ている。出来ているのだがあんな男達を助ける義理はないとウルズは不機嫌だった。
統合政府と話がついて主神フレイヤに命じられたヴァルキュリアは、第1特察隊の援護に来ているのだが彼らの実力を見定めようと考えて動かずにいる。
(面倒だし私が助けなくても大丈夫そうだな、このまま眺めていよう……)
「死ねやオラーーーーーーー」
マグレーまで逃げ回るとダミスを倒すのは蒼空だけになるので、彼は危険でも敵に向かって行かなければならない。
まず全速でブルーホースを走らせたマグレーは、ダミスの群れを引き離し気味にして急旋回したら接近攻撃を試みる。軍団の側面を削り取るようにしつつ切り抜け、一旦距離を取っったらまた斬り掛かると彼はヒット&アウェイをしているのだ。
その彼が敵に囲まれないように援護するのは蒼空の役目で、遠目にダリアンを心配しつつ胸の辺りに吊り下げてある箱から、閃光弾を取り出して目眩ましをしたりスタンアローを撃って敵を足止めしていく。
〘クリアボムを乱射しながら援護も同時にするのは、さすが隊長といった所。〙
〔スタンアローは思ったより効果あるな隊長〕
〔そうだなもっと貰ってくればよかった〕
《相手によって変わるが蒼空が時々撃っているスタンアローは、直径6m程の範囲にいるダミスを纏めて20秒位痺れさせられる。集まった所へ撃てば複数のダミス一度に封じる事ができて、マグレーには絶好の攻撃チャンスになった。》
〔範囲魔法によるダミスの一掃を試してみたい、上手く合わせてくれ〕
〔了解した、最初と同じようにやるぞ側に来い〕
9体目の敵を倒した後にこう決めた蒼空は、ダミスの群れを連れてきたマグレーと併走しながら逃げて準備が整うと3発のスタンアローを集団に撃ち込んだ。
マジックアローは魔法なので任意のタイミングで起爆させられる。ウラノスアイに誘導されたスタンアローは、攻撃魔法を撃ってくる黒い霧のモンスターの頭上へ広がって、発動すると高圧電流をそれぞれ10m四方へバラ撒く。
苦悶のうめき声を上げつつ痺れた数十隊のダミス。痺れなかった残りは前にいる邪魔なダミスを左右に迂回しつつ、攻撃してきて蒼空がそれを迎撃し動けない集団の真上へにマグレーは移動して行った。
右手でソードロッドを逆さに構えた彼は魔力を集中させつつ、残った左手で革袋から赤と緑の魔宝石を5つ取り出すとそれにも魔力を与えて操作し、敵を囲むように移動させて五芒星の魔術陣を作りだす。
「スーパーファイヤーサイクロン!」
上下へ渦を巻いて火災旋風が発生すると、その圧倒的な火力によってダミス達は切刻まれ燃やされ尽くし、残った敵を倒しながら蒼空はマグレーを褒めていく。
〔この手は使えるぞマグレー、連続でやればダミスなんか楽に一掃できる〕
〔俺の魔力が続けばの話だがな、今ので何体倒せた?〕
〔35体だな、お前は1人で118体も倒してるぞ〕
〔残ってるダミスは?〕
〔179体だが、スーパーファイヤーサイクロンは後何発撃てる?〕
〔今のなら満タンから2発撃てる〕
〔つまり残りは3発か〕
〔そうなるな。魔力が尽きたら俺は逃げるからそのつもりでいろよ〕
〔HEPの連続飲みは危ないんだけどなーーー〕⦅外部説明5:EP中毒について⦆
〔マグレーなら耐えられる自分を信じろ。2連続で行くからなお前が撃ち終わったら俺が前にでる。3発目は温存しとけ〕
〔連続なんて嫌なんだが……〕
〔聞いてるなダリアン? 戻ってこい〕
〔分かった〕
ダリアンが戻って来たらまたマグレーが敵軍団を切り崩し、同じ調子のまま3人が戦ってダミスが残り100体を切った2回目。「スーパーファイヤーサイクロン!」とマグレーが景気よく敵を燃やしていたら離れた場所で爆発が起こる。
〔しまった!〕 と心の中で叫んだのはダリアンだ。
〔大丈夫かダリアン!〕
〔返事をしろ!〕
〔ブルーホースを倒されただけだくそっダミスが集まって来やがる〕
倒れる前に馬を蹴って横へ飛び受け身をとった青毛の狼男が立ち上がる。
その姿を見た蒼空とマグレーは安心し、直ぐ数十体のダミスに囲まれてしまう彼を助けてやろうかと戦乙女は考えたが〘もう暫く見守ることにした〙。
〔ダミスは残り92体だ力で押し切るぞ!〕
〔了解したって、大丈夫なんだろうなおい!〕
蒼空はダミスからダリアンを守るために閃光弾やスタンアローで敵を妨害、ワーウルフの俊敏な動きでダミスの包囲網から抜けたダリアンは、左右の腰から2本のミスリルソードを抜いて構えて炎を宿らせた。
《ダリアンの基軸魔法は土系だから攻撃は苦手だが、逆に守るほうは得意なのでダミスの群れを引き連れて逃げ回れる。彼はミスリルソードの鍔に嵌め込まれた赤色の魔宝石を使って炎の魔法剣を作るとそれでダミスを攻撃していく。》
遠距離の攻撃は苦手だがダリアンも高位魔導師。鎧についている魔宝石で加速した彼は目にも止まらない速さで、次々にダミスを斬って燃やすと燃やしきれずに残ったダークエーテルへ剣を振って放った火炎放射で止めを刺す。
しかしダミスとて負けてはおらず騎士タイプのダミスは、ダリアンのスピードに追いつくと彼の剣を止めてしまう。これと押し合いや斬り合いをしたら前後左右から別の攻撃を受けて死ぬので、ダリアンは即その場から離れると蒼空の援護を待った。
そして……ダリアンが斬り合うと撃たれる魔法の数が増え、ウラノスアイによる誘導回避とか援護射撃を同時にする蒼空の負担は上がり、魔力切れしそうなマグレーは動きが鈍くなるとダミスを倒すペースが一気に落ちてくる。
〔もう逃げようぜ隊長3人でこれだけ倒せたら上出来だろ〕
〔その話は済んだ筈だ、ここまで来て無報酬でいいのかお前ら?〕
〔俺が辛いっていうか死ぬダミスに押し負けそうなんだが〕
弾切れしそうな蒼空は補充したいが暇がなく、2人の言い分は尤もなのでならばと隊長はマグレーへこう命令する。
〔上空で戦いを眺めている女神様を呼んでこいマグレー。いいか丁寧に頭を下げて助けて貰うんだぞ〕
〔女神様だ? ……あの女ヴァルキュリアらしく偉そうに見下ろしていやがる!〕
蒼空のウラノスアイはウルズの姿をずっと捉えていたが、フレイヤのヴァルキュリアだしどう動くか分からないので放置していた。しかし事ここに至っては細事に拘る余裕など彼には無く、渋って嫌がるマグレーへ隊長は再び命令をだす。
〔ウルズが俺の頼みを聞いてくれると思うのかよ〕
〔何とかしろこっちは手一杯なんだ〕
弾薬補充の時間が欲しいので蒼空はダリアンに逃げるように指示すると、閃光弾やスタンアローを撃ってから矢箱を捨てて急いで取り替える。それからHEPを飲んだ彼はマグレーが戻るまで防戦気味に戦えとダリアンに命じて射撃を再開した。
「……と言う訳で助けて欲しいんだが、手を貸してくれないかウルズ?」
「この私にムスッペルの頼みで動けだと? 人選を間違えているぞお前ら」
(そうだよなぁ……) 高度200m以上の位置から蒼空達を、見下ろしていた戦乙女にブルーホースへ乗って来た色男が話すと〘明快な敵意を向けられる〙。
「ムスッペルだけでも許せないと言うのに、お前は私が大っ嫌いな女性の敵である色狂いじゃないか。それでも私に助けろと言うんだな?」
(くそーーーー何で俺がこんな女に……)
アース神族なんかにとは特察隊として考えないが、マグレーは面白くない。しかし戦闘中の2人からテレムで急かされた彼は、ブルーホースから降りると風魔法で空中に浮きつつウルズの前に立ち〘体を90度に曲げて助けて下さいとお願いする〙。
「そこまで言うなら助けてやってもいいが、ただでは嫌だな」
(俺が頭を下げてやってるのにまだ言うか)
「お前達は軍人だがこの依頼には報奨金が出るそうだな?」
「そうだが何が言いたい?」
「対価として報奨金を全額貰おうかそれでいいなら助けてやる」
〔……ふざけんな! 言い返せマグレーーー〕
マグレーからテレムで間接的にその話を聞かされたダリアンは怒りだす。家族の生活が掛かっている彼が怒るのは当然だが、蒼空隊長は判断に悩んでマグレーにお前はどう思うかと心の中で聞いていく。
〔金を渡したくないが戦況は?〕
〔よくない。600万Rは大金だが2人とも我慢してくれないか?〕
〔隊長は渡していいと言うんだな?〕
〔俺はな、ダリアンは?〕
〔此だから神様は……ええい命あっての物種だ、母ちゃんが怖いが我慢してやる〕
〔決まりだな〕
〔早くしろよマグレー〕
「それでいいから助けてくれ」
「いいのか全額だぞ?」
マグレーが頭を下げたまま3人と精神で話し合って、出した答えを言うとウルズは敵意を幾らか緩めながら聞き返す。
「全額を渡すから早く助けて下さい」
「やれやれしようのない奴らだな」
(これでウルズが役立たずだったら絶対に許さん……)
隠してはいるがマグレーから滲みでる怒りをウルズは感じ取っていた。その相手に一瞥をくれてやった彼女は、普段は押さえている魔力を解放しつつ眼下で戦っている2人を見ながら鞘からミスリルのロングソードを抜く。
(なかなかの魔力だがこの程度では……)
ウルズが構える魔術剣は雷系、魔宝石の付いてない安物の剣でも中々の威力を出しているがマグレーを納得させられる程の物ではない。
「私に恐れ戦いて平伏するがいいムスッペル。はぁーーーーーーーーーーー」
「何だと!」
両手で前へ軽く構えた状態からフルパワーへ、剣に注がれる魔力が増すとその威力も上がってマグレーが構える魔法剣より高出力になった。
「魔宝石の増幅なしで此れかさすが運命の三女神だ」
《ヴァルキュリアとは神族らが、魔導機械・錬金・錬命術を駆使して作り出した魔導兵器の総称だ。各神族が女性型を多用したので女性ばかりだと思われがちだがそのような事は決してなく、男性型は戦男士⦅ヴァルキリー⦆と呼ばれている。
ヴァルキュリアは骨が金属だったり普通の生命体や魔獣族にはない、魔力増幅装置を体内に持っているがウルズはその中でも特別製。》
「幾ら褒めても金はまけないからな」
「分かってるよ、さっさと俺達を助けてくれ女神様」
(偉そうに振る舞えるだけの実力がある。ウルズには慎重に話しかけて仲良くなれるようにするべきだった、勿体ない事をしたなぁ)
魔導師らしく素直にその実力を認めたマグレーは、ウルズとやり合うのを止めて方針転換。背中のスィングに魔力を注いで羽ばたかせると、加速しながら彼女は降下し
て行くのだがその速度はブルーホースよりも速い。
「群れに突っ込むな死ぬぞウルズ!」
聞こえるかどうか分からないが、ウルズはテレムを持ってないので蒼空は叫んで彼女に注意をしていった。
ダリアンは蒼空の指示に従って敵に囲まれないように、ダミス集団の端へと移動しながら戦うが叫んだ隊長を無視したウルズは、数十体が集まるダミスの中心部へ空中からまっすぐ斬り込んで行った。
「無茶だと言うんだ従えって!」
彼女が狙うのはダークエーテルを固めて作った剣を構えている騎士タイプ。遠距魔法を躱しながら彼女が近付くと、ダミスは黒い炎を宿しているブロードソード擬きを振って来るがウルズは剣ごと敵を両断する。
〔なんてバカ力だ、ダリアンより強いかも知れんぞあの女〕
〔女性にバカ力はないだろ〕
そう言って驚いたのは蒼空、ウルズが放った一撃は稲妻のように凄まじくそのままダミスを消滅させてしまい、剣を握ってない左手からは上級魔法を撃つ。
「収束雷撃砲(ライトニングバスター)!」
サイズはマグレーのトルネード×1.3、ウルズに突撃しかけた巨牛ベヒーモスは圧倒的?な雷の魔力によって吹き飛ばされ後ろにいた2体も巻き込まれていく。
〔凄げぇじゃねぇか彼奴〕
〔左だ! 余所見するなダリアン〕
ダリアンがウルズに気を取られて止まると、手が鎌になった大蜂キリングビーが飛んできて斬りつけられる。これを空中に作った土の盾で防いだ彼の上空には、体を炎爆弾に変えて攻撃して来るグロウが居たが蒼空に倒される。
続けて3発のスタンアローを構えた蒼空が、ダリアンとウルズの回りへそれぞれを撃って敵を痺れさせると2人は数体のダミスを剣で倒していく。
「もう一度だ蒼空、痺れるやつをもう一度撃ってくれ!」
「どう撃てばいい?」
「色魔と組んでやったように私も範囲魔法を使う」
「了解した」
〔俺が色魔とか会って間もないのに酷い言われようだな……〕
〔誰かに噂を吹き込まれたんじゃねぇか?〕
〔恐らく大隊長だな〕
〔あり得るな〕
〔あの女、余計なことを……〕
蒼空の準備が出来るとウルズは飛び上がり、タイミングを合わせるように3発のスタンアローが撃たれて数十体のダミスが動けなくなる。そして剣を鞘に収めたウルズは両手を上に掲げると、ないにやら青白いボール状の魔力を作り出した。
「プラズマデスボール!」
直径約2mウルズの高魔力で作り出された大魔法は、地面にあたる前の適度な位置で炸裂すると超高圧電流で周辺一帯を焼き尽くしてしまう。
〔魔宝石の増幅なしになんつーー火力だ〕
〔~さすが運命の三女神、その名に恥じない戦いぶりという訳か〕
〔もう彼女を怒らせるんじゃないぞマグレー〕
敵の数は半減し後1回これを撃てばダミスを殲滅できると、蒼空達は勢いづくが攻撃一辺倒だったダミス達の動きが急に変わる。狼タイプが吠えると黒い波が引くようにダミス達は一斉後退して蒼空達から遠ざかろうとした。
「何をする気だあいつら?」
「ダミスが合体するぞ!」
「やらせるな全力で攻撃するんだ!」
こう叫んだ彼らはあの手この手で攻撃し、ダミス達を倒していくが間に合わず30体ほどが一カ所に纏まると黒くてウネウネした液体の固まりになる。
「やらせちまったぜ面倒になるな此れ」
「さっさと倒してしまうか蒼空?」
「情報が欲しいから暫く休憩して待つ。どんな姿になってどんな攻撃をしてくるかよく覚えておけよみんな、後で纏めて大隊長に報告するからな」
「了解した」
「やれやれだ」
ダミスから少し距離を置いて集まった彼らが、普通に話しているのはウルズがテレムを持っていないから。ウルズは早くあれを倒した方がいいと思うが、隊長がそう言うならと従ってHEPを分けて貰ったらそれを飲みつつ静かに待つ。
……約2分後、ウネウネする黒い液体から翼が生えたと思ったら消え、手が生えたと思ったらまた消えてと何を迷うのかダミスの固まりは中々姿を作らない。
「何をやってるんだあれは?」
「気持ち悪いだろ、どんな形で戦うかああやって中で喧嘩してるんだよ」
《ウルズが指さして聞いたダミスは、無料大数の命が混ざり合って作られるダークエーテルの集合体で、纏まった量が多いほど強くなるが知識も増えて判断に迷う。》
「喧嘩をするだと?」
「獣の群れが集まってるんだ、お互いに言い合って意見が纏まらないんだよ」
「なるほどな」
嘴が生えたり尻尾が消えたりしつつ待たされる事さらに数分。ようやく意見を纏められたダミスが一つの形を取り始めると、準備を整えた蒼空達も戦闘態勢になる。
「纏まるのに結構かかったが拙いんじゃないか隊長?」
「それだけ強くなるって事だからな」
「ダミスから凄まじい魔力を感じるぞ蒼空、あれは大丈夫なのか?」
「合体したダミスの数は34体で、それぞれ下位~高位魔導士なみの魔力を持つ。ウルズを高位魔導師2~3人分?として、大体3~10倍になるな」
「あれを倒すにはフル装備の小隊が2~3以上は必要になる」
「……」
「そんなに睨まないでくれよ、ウルズの戦闘力には期待させて貰うからな」
ウルズのフルフェイス?から顔を反らした蒼空が見上げるのは、身長6m近い体に鎧を着て筋骨隆々の強そうな巨人だった。4人とも高位魔導士なので平然としていられるのだが、それ未満だと腰を抜かして逃げだしそうな圧力を敵は放っている。
「角が生えて牙のある顔に4本の腕のモンスターか。あれは大戦後期に作られたオーガキングで、確か上級ドラゴンより強い筈だがどう戦うんだ蒼空?」
「ひたすら殴ってダークエーテルを削ればいい簡単だろ?」
「いい作戦だな」
「よく見るダミスか、わざわざ待ってやる必要はなかったな」
「そういう時もある」
4本の手足に持つのは体格に合わせた長剣とグラブが2本ずつ。わざわざ敵の間合いで戦う事もないという蒼空の指示に従った他の3人は、ブルーホースやスィングで敵から距離を開くと遠距離魔術主体で戦うことにした。
近接戦闘をやらないのでダリアンは暫く様子見、大地を揺るがすような咆吼をあげつつオーガキングが斬り込んで来ると戦いが開始される。
「速いぞこいつ!」
オーガキングがまず狙うのは、叩きやすそうなマボウを構えている蒼空。その速さはダリアン並みであり一足飛びで殴りかかってきた敵のファイヤークラブを、躱した蒼空はブルーホースを全速で走らせて空中に逃げた。
「危ない!」
こう叫んだのはウルズで、逃げる蒼空に向けて牙の生えた口を開いたオーガキングは重火炎弾を発射する。それに込められた魔力はなんとウルズのプラズマデスボールと同等であり、命中すると蒼空は一瞬で灰になるがその前に向きを変えて彼から逸れた重火炎弾は地面に当たって爆発する。
何度も繰り返されるこの異常な光景について、ウルズは蒼空に説明を求めたいが後回しにし、空中からライトニングバスターを両手で撃つ。収束された2発の雷が当たるとダミスの胴体が少し無くなるも直ぐに再生してウルズに撃ち返す。
「これがダミスの特性か確かに削るしかないな」
《【ダークエーテルが尽きないとダミスは倒せない。】
【構造を理解すればどんな物にも変身可能、それこそ神であっても……】
【体の負荷を考えずに上級魔法を乱射できる怖い相手。】》
「こんなのとよく戦い続けていられるなお前ら」
「ははははは」
「ダミスとは戦い方があるんだよ頭をつかえ頭をーーーーーーーー」
やれやれと思いながらウルズは攻撃を続け、近接攻撃を受けないように飛び回りつつ皆で遠距離攻撃をしているとオーガキングの姿がまた変わる。
「オーガキングに翼さが生えるだと!」
「新しいパターンか」
「姿を変えるまで待った甲斐があるなぁ」
「俺は戦わなくてもいいのか隊長?」
「ダリアンは走り回って疲れただろそのまま休んでいるんだ」
驚いたウルズだったが此もダミスかと自分で納得し、空中に飛び上がったオーガキングは誰を狙うかを考えて手近のウルズを選択。
「私を選ぶとはな後悔させてやろう」
攻撃を受けながらも速度を上げて迫りくる敵に対して、力負けしないように両手で長剣を握ったウルズも応じる。
勝てる訳がないと蒼空は叫んで止めるが、気の強いウルズは聞き流すとオークキングへ魔法剣を振った。高圧電流が宿った剣と左手のファイヤークラブ、巨人に力負けしないウルズはさすがだが相手には4本の腕と武器がある。
「そうだったくそ!」
長剣を軸にして体を回し振られた他の3本を慌てて避けた彼女は、逃げるが後ろからオーガキングに追れるので蒼空は閃光弾を撃って目眩ましをしていく。
〔これって拙くないか隊長?〕
〔翼のあるウルズだから避けられたんだ空中戦では分が悪い〕
〔あの巨体でチートだよなほんと〕
〔魔力はどうだマグレー?〕
〔殆ど無くて体が重いがウルズと隊長だけでは辛いだろ〕
〔ならダリアンとウルズで前衛2人にするか、地上戦だな〕
〔やっと俺の出番か任せとけ〕
〔マグレーはもういいぞ、ウルズにこう伝えてくれ……〕
閃光弾でオーガキングの目が眩んでいる間に3人は話を纏めると、マグレーをウルズ元へ行かせつつ蒼空がオーガキングを挑発する。オーガキングが動き出すのに合わせて叫んだ蒼空はブルーホースへ逆向きに乗りつつ、ダミスと適度に撃ち合いながら攻撃魔法を準備するダリアンがいる地上へと誘導して行く。
大型ダミスが目前に来るとワーウルフはその横から攻撃開始。
「ビッグアースロック!」
ダリアンが両手で掲げるのは土魔術で作った大岩。魔力で宙に浮いている此れは1t程の重さがあり飛行中にタイミング良く、背中へ乗せられたオーガキングはその重みで潰されるように地面へ落ちた。
〘魔法なのでいちおう攻撃になるが土魔法はダミスに余り効果がない。〙
腕を曲げて背中の大岩を除けながら立つオーガキングは怒って叫び、ダリアンも同じ様に叫び返して二刀流 VS 四刀流の斬り合いが開始された。
魔力や腕力がどれだけ強くても当たらなければ効果なし。手足についた風の魔法石で加速しつつ自慢の俊足でオーガキングに迫った彼は、振られた4本の武器を横にずれて躱すと炎を宿したダミスの臑部分を切り抜ける。
【頭を狙うや腕を落とすとかは考えない、ダミスはどこを斬っても与えるダメージは同じなので狙いやすい場所を攻撃すればいいのだ。】
速さが同等でも俊敏性はダリアンの方がずっと上。
敵の周囲を回りながらダリアンはオーガキングを切り刻み、そこへウルズが参加して上空から蒼空が攻撃すると、時間を掛けつつも3人はオーガキングを削りきった。
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