第5話②
私は朝いつも通りの時間に起きました。それでも髪を整える時間は必要ないのでその時間を使ってりゅー君とのことを考えました。
「…はぁ。明日からはゴールデンウィークか。りゅー君と会えないのはヤダな」
私はりゅー君が来るような時間に学校に着くように登校しました。そして、教室に入るとりゅー君は自分の席に座っていました。
「お、おはよう。楠木さん」
「あ、ああ。おはよう。…どうしたの?」
私はいつも通りにしているつもりだったけど、りゅー君は違和感を持っているみたい。…もしかして、すぐ変化に気づくくらいりゅー君も私のことを見てくれてるのかな?
私が昨日と同じように髪を押さえていると、どうやらりゅー君の友達が話しかけてきたみたいだった。…名前はたしか、よくあるものだったはず。佐藤さん、だっけ?田中さん、だったかも?…まぁ、どうでもいいや。
私はその人が少し嫌いです。私の大好きなりゅー君の側にいて、仲良さそうに話していてすごく羨ましいな。醜い嫉妬だし、りゅー君に嫌われちゃったのは私のせいだということは分かっているけど、溢れてくる自分の気持ちを抑えきれません。
「…そうだ。拓磨が整えてやれよ。白鳥さんの髪」
「…俺はやり方知らないし」
「俺が教えるから!」
「チッ」
「…えっと。白鳥さん?」
「…なんでもない!…バカ」
私が考え込んでいたらいつの間にかモブ夫さん(りゅー君の友達。りゅー君は名前で呼んでるけど私は呼びたくない)が私の髪に触れる雰囲気になっていました。…私はりゅー君以外の人に触られたくないのに。
「ほら、拓磨。こっち来て」
「いやいや!竜一がやるべきだ!」
「いいから!」
「触らないで!」
「あっ。…ごめん」
…りゅー君は私の髪に触りたくないの?それならそれでいいから、せめてそう言ってよ!それならもう諦めるから!
「…上の方から下の方に向かって優しく梳いてあげて」
「〜ッ!もういい!りゅー君なんて嫌い!」
私はもうそこにいたくなくて飛び出してしまいました。…本当は素直にやってほしいと言えない私が悪いのは分かっています。それでも少しでも私の気持ちに気づいてほしい、って望んじゃダメですか?
私は独りになるためにトイレに向かいました。そして、個室に入ったすぐ後に涙が頬を伝うのを感じました。
「エグッ、…ヒック。…りゅー君。…グスッ。…胸が苦しいよ。…昔みたいに助けてよ」
私はチャイムにも気付かずにしばらく啜り泣きました。…私から拒絶したんだから当然だけど、りゅー君からは何の連絡もありませんでした。いつまでもトイレに籠っているわけにはいかないので、私は髪を整えました。…私は何をやってるんだろう?こんなところで。
私が髪を整えているといつの間にか一時間目の授業が終わってしまいました。気が重いけどこのままサボるわけにはいかないから、急いで教室に戻りました。
「朝はごめん!」
教室に入るとりゅー君が私に謝ってきました。本当なら私が謝らないといけなかったのに彼に先を越されてしまいました。私も謝らなくちゃと口を開いて出てきた言葉に私自身が一番驚きました。
「…明日からのゴールデンウィークで一回でもデートしてくれたら許す」
「!もちろんいいよ」
「ありがとう!」
そんな上から目線な言葉を言いたかった訳じゃありません。すぐに訂正しようとしましたが、それより早くりゅー君が応えてくれました。私は無意識のうちに感謝を伝えていました。これで謝る機会は失われてしまったけど、これで良かったんじゃないかと思います。
「…ねぇ。迷惑だったらいいんだけど、今度から俺が髪を整えようか?」
「〜!うん!お願いします!」
りゅー君はどうして私のほしい言葉をほしい時にくれるんでしょうか?昔から全く変わっていない彼の姿に胸の奥が暖かくなりました。…私ばっかりりゅー君を好きになっていくのは苦しいです。
話し合って明後日にしたデートでりゅー君との距離を詰めてみせる!そう思った私は友達の
「春花〜、助けて〜」
「白亜?どうしたの?」
春花は小学校から一緒な私の一番の親友で、私がりゅー君のことを好きなことも知っています。
「デートってどうすればいいの…?」
「デート!もしかして楠木君と?」
私は恥ずかしくて、小さく一度頷いた。
「きゃ〜!いついつ?」
「…明後日」
「じゃあじゃあ、明日!買い物行こ?」
「うん」
私は春花に手伝ってもらうことにしました。そういうことに疎い私にとって、春花はすごく頼りになる友達です。私たちは明日の待ち合わせだけして別れました。
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