第4話②
私は一人で自分の家に帰ってきました。もともとは両親と三人で暮らしていた家です。しかし、今この家を使っているのは私だけです。三年ほど前に両親は海外へ出張に行きました。私も一緒に行くこともできたけど、無理を言ってりゅー君が近くにいるこの家に残らしてもらいました。そのため中は真っ暗です。
私は帰宅した直後のこの時間が嫌いです。どうしても癖で「ただいま」と言ってしまいます。でも、それは暗闇の中に消えてしまいます。そこで私は一人を実感するんです。
家の中に入った私はベッドの上に寝転がりました。そしてりゅー君を振り向かせる方法を考えました。しかし、何一つ思い浮かびませんでした。
今の私があるのはりゅー君のおかげです。私が悲しんでいるといつも助けてくれました。私にとって彼はヒーローなんです。
あれはたしか小学生のころ、私は工作の時間に粘土で竜を作りました。お題はたしか、自分の好きなもの、だったと思います。それを見たクラスのみんなは蛇だと笑いました。私は不器用だったけど、心を込めて一生懸命作りました。それを笑われて、作品と一緒に私のりゅー君が好きという気持ちまで否定されたような気がしました。それでも、りゅー君だけは褒めてくれたんです。
『カッコいい竜だね。…実は俺は白鳥にしたんだ。隣に並べてもいいかな?』
『グスッ。でも、私のは下手くそだよ。みんなもそう言ってるもん』
『そうか?俺ははーちゃんの作った竜をすごいと思うぞ。だって、はーちゃんの心が伝わってくると思うからな』
『…でも』
『あー、もう!他の人のことなんて関係ない!それでも気になるなら、はーちゃんができないことは俺が代わりにやる!だからこれからは、困ったら俺を頼れ!絶対に守ってあげるから!』
『…うん。じゃあ、もしりゅー君が困ったら私が助けてあげる。だから、りゅー君も私を頼ってね』
『おう!もし協力し合えたらいいな』
『うん!私、頑張る。だから、もしりゅー君を支えられるようになったら、私と結婚して!』
『〜ッ!またはーちゃんはそういうことを簡単に言う!』
『…私がこう言うのは、りゅー君だけ、だよ』
『…分かったよ。じゃあ、約束な』
『…うん!約束!』
彼はもう覚えてないかもしれないけど、私ははっきりと覚えています。その後でした指切りの温もりを支えに努力を重ねました。みんなより不器用な私はより多くの時間が必要でした。毎日同じことを繰り返して、ようやく人並みになれました。
その努力のおかげか、いつの間にか私の周りには人が集まるようになりました。…しかし、まるでそれと引き換えにするかのようにりゅー君と話す時間は少なくなってしまいました。彼と一番多く話していたのは私が困っていたときです。それでも、私は彼と付き合いたい一心でがむしゃらに努力を重ねました。
ようやく私自身がりゅー君と釣り合えたかな、と納得できたとき、私たちは既に会話すらしなくなっていました。私はどうにかりゅー君と話す機会を伺いました。
しかし、最も簡単な趣味の話はできません。なぜなら、この家には娯楽というものが全くないからです。ゲームなどはもちろん、テレビや雑誌なんかもありません。それは私の努力の賜物?ではありますが、それらを話題にすることはできません。なので、今日は思い切ってりゅー君を呼び出しました。結果はあまり良くなかったけど、しっかりりゅー君と話すことができました。それでも話し足りなかった私は彼にメッセージを送りました。
【おやすみ】
するとすぐにりゅー君から返信がきました。同じように【おやすみ】ときただけだったけど、私はそれだけで天にも昇る気持ちでした。私は布団の中で今日一日の感想をそうまとめました。そして、彼を振り向かせるという決意と、明日も髪は整えずに登校しようという気持ちを抱いたまま眠りにつきました。
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