第5話 初夜 お風呂で二人に弄ばれる。

 重い重い、苦しい苦しい、上を見ると遠くに水面のようなものが見える。

 息がしたい、水面に向かって必死に泳ぐ。

 水面から顔を出す。

 空気をむさぼり吸う。


 ガハァガハァ・・・・・・


 呼吸が落ち着いてくると全身が痛い、重い。

 強い光の中に包まれ、まぶしくて周りは全く確認できない、音もない。

 全身がものすごく痛いが、だんだん良くなってくるのを感じる。

 激痛の中、暖かな春の日差しに包まれているような、そんな感覚だ。

 薬が効いてきて体が楽になってくる感じともいえる。


 ドラゴンが爆発して俺は死んだのか?

 かと言って、異世界神が降臨するような感じでもない。

 死んだとしたら、全身の痛みはおかしい。

 死にたくない、このまま死ねない。

 俺には心残りがある。

 生き残れば、ヴィーとシェリは俺の物だ。

 性欲は全く感じないが、所有欲がある。

 あんなに美人な子、あんなに可愛い子を手に入れたのに、何もしないで終われるか?

 ない、断じてない。

 お預けのまま終わりとか許さん。

 目を閉じ、耳を澄ませ、心で感じるんだ、俺。

 ツーという音の中にノイズを感じる。

 ノイズに集中する「さま!・・・さま!」俺を呼んでいるのか、ノイズに耳を寄せる。

 シェリの声か?

 「・・・さま、ご主人様」

 お、シェリだ!

 急速に現実感が戻ってくる。

 体の痛みが更に100倍になる。

 ぐぅぅぅぅ。

 喉の渇きが激しい。

 「シェリ、水」と言ってみたが、口がうまく動かん。というか痛みで分からん。

 「み、水ですね」とシェリが離れていくのが分かる。

 痛い、全身が痛い。

 シェリが戻ってきて、水を口に注いでいるようだが、全く飲めん。

 視力も戻ってきていない、真っ暗だ。

 集中だ! 集中。

 シェリが口移しで、水を飲ませてくれていると想像するんだ。

 美女の口移しを俺が飲まないだと!? そんなことは俺の人生の汚点だ!

 これはシェリの唾液だと思え。

 一滴たりとも、粗相をするんじゃない、俺。

 痛みに負けるな、集中だ、イメージだ、イマジナリーだ!

 口から注がれ、体の中に染み込んでいく。

 これは聖水、生娘聖水!

 俺は勝つ! 痛みに勝ってやる!


 体感的に1時間くらい生娘聖水を飲んだ。

 痛みは和らいできたが、それでも全身に針が刺さってるくらいには痛い。

 痛みによる頭痛は収まってきて、腹が減ってきた。

 目はまだ見えないが、耳はだいぶ聞き取れるようになってきた。

 ヴィーが側にいるのが分かる。

 回路も正常化してきたようだ。

 「シェリ、ドラゴン討伐どうなった?」うまく発音できなかったが、伝わるくらいには発音できたと思う。

 「ど、ドラゴンは爆発して死にました。ご主人様は爆発に巻き込まれ、体の厚みが半分でした。普通なら死んでいます。ステータスが『瀕死』になっていましたので、連れて帰ってまいりました。まさか、生きて会話ができるようになるとは・・・・・・」シェリは涙声だ。

 「俺は勝った! シェリは俺のもんだ! 今すぐに契約を」と俺。

 シェリの値段がいくらになろうとも、シェリは絶対に俺の物にする!

 「はい、回路を繋いで回復ですね。すぐに手配いたします」とシェリ。

 シェリは都合よく解釈してくれたようだ。

 シェリとも奴隷契約をすれば入力回路からシェリの魔力が入ってくるはずだ。

 性欲も、たっぷり戻ってきたぜ!

 ヴィー、シェリ、今夜は離さん!

 「あんたもしぶといね、死んでくれたら丸儲けだったのにね」

 この声は絹江婆さん。

 「そんなうまい商売、この世にねーよ」

 俺も今、思い知らされている。

 「八枚」と絹江婆さん。

 がめついな、賞金全部持っていくのかよ。

 今までの鈴木商店への支払いトータル11枚、賞金と先代からの金貨まで丸々持っていきやがった。

 まあ、シェリが手に入るし、いいか。

 「値段はそれでいいが、シェリの契約料とか賞金の受け取りとか今後の後処理とか丸っと込み込みで頼む」

 「合い、分かった。すべて鈴木商店の絹江が賜った!」なぜ時代劇風?

 絹江婆さんは外へ出ていくと朗々と何かを喋っている。

 まるで詩吟でも読んでいるかのようだ、内容は分からんが。

 絹江婆さんの詩吟の合間に「おー」とか拍手が入る。

 結構、観衆が居るようだ。

 一段落すると俺も椅子ごと外に出される。

 聴衆が一気に静まっていくのが分かる。

 シェリの言い方から察するに、半分につぶれていた俺は見た目はゾンビじゃね。

 俺自身は見えないからいいけど。

 今度は朗々とした爺さんの声が聞こえてくる。

 これは! ヴィーと契約した時の爺さんの声だ!

 詠唱が終わると、俺の背中の下の方、腰から爽やかなエネルギーが流れ込んでくる。

 エネルギーが流れ込んでくる先には俺の股間がある。

 心地よい、心地よ過ぎて、俺の股間が膨らんでくるのが分かる。

 『これは性欲じゃないんだからね、人間は死にそうになると勃起してしまうのもなんだからね』

 聴衆の面前で恥ずかしい。

 と・に・か・く、これでシェリは俺のもんだ!

 万歳!

 俺は鈴木商店の中に入れられた。

 シェリと繋がったせいか、だんだんと視界がぼんやりと見えてくる。

 「体調はいかがですか、ご主人様」とシェリ。

 『ご主人様』最高。

 「目がぼんやりと見えてきた。手足はじんじんして感覚がない。体は比較的大丈夫だ。それより腹が減った。肉が食べたい」と俺。

 「こりゃもう大丈夫さね」と吐き捨てるように絹江婆さんは言い、誰かに抱えられるようにして部屋を出て行った。

 直ぐに食事が用意され、シェリが箸を使って、俺の口に運んでくれる。

 「ご主人様は何であんな戦い方を? 自殺するおつもりだったんですか?」

シェリ、俺の口は肉でふさがっている。

 「シェリもヴィーも可愛がってないのに死ぬわけがない」と俺。

 シェリは「炎の反魔晶石は燃やしてもほとんど熱は出ません。だから明かりに使われるくらいです。それをドラゴンに食べさせたところで、ドラゴンブレスが弱くなる程度です! それに光の魔晶石持ちだったらどうしたのですか? 回復特化の光の魔晶石だったら、ドラゴンの首を落としたくらいでは死なないのですよ! 魔晶石を体から引き抜かなければ死にません。引き抜かれるまで死なないので、暴れるドラゴンから魔晶石を引き抜くなんて不可能です!」と興奮と怒りとが混ざっている。

 「それ、どうやって倒すの?」と俺。

 「国を超えて冒険者と魔術師が集まって、町が吹き飛ぶほどの爆裂魔法を放って、ドラゴンが爆散したところで、光の魔晶石を回収したそうです」

 「そ、そう・・・・・・、もしドラゴンのジョブが巫女だったらやばいのかなぁ・・・・・」と俺。

 「ドラゴンが巫女だった場合は更に危険です。巫女は回復特化なので、傷つきにくいドラゴンが、どんどん回復していきます。当然、冒険者が戦うのは無理です。軍隊が攻城兵器を数か月使用して、弱ったところを首を刎ねます、今回も有名な冒険者が来て、移動魔法で飛ばそうとしていたので、その可能性があります。近づいて『ステータス』を見れば、巫女かどうかは分かりますから」とシェリ。

 「へ、へぇ・・・・・・、ドラゴンが光の魔晶石で巫女だったらどう倒すの?」

 「倒せません。暗黒時代の到来です。歴史上に一匹確認されましたが、ドラゴンの寿命が来るまで倒せませんでした。その間、獣人たちの町はことごとく襲われ、食べつくされたそうです。森や山に散り散りに逃げて生き残ったのが、私たちの祖先です」

 「・・・・・・」絶句。

 倒したドラゴンが光の魔晶石の巫女ドラゴンだったことは伏せておこう。

 「よかったですね普通のドラゴンで。私のご主人様になったからにはこんな戦いは二度と許しません。しばらくはドラゴン戦は禁止です!」

 ごもっとも。

 俺のビギナーズラックが、この世界の命運より幸運だった件。

 シェリはお肉のおかわりを取りに席を外した。

 その間にヴィーが俺の背中に取り付き、一言も発さず俺を感じていた。


 明け方まで肉を食べ続け、体がメキメキと音を立てて治っていったが、腕も足も丸太の様に膨らんで、動かせそうにない。

 その状態で裸にされ、勃起した下半身もしっかり洗われ、紋付き袴を着せられ、人力車に乗せられた。

 右には白無垢を着せられたヴィーが座り、左には同じく白無垢を着たシェリが座った。

 番頭さんが人力車を引きながら大声で「ズギキショーテン」「スズキショーテン」と叫びながら町をゆっくりゆっくり進む。

 人力車の前にきれいな着物を着た女性がゆっくり歩きながら、沿道に出てきた人になんかを撒いている。

 「あれなに?」とシェリに聞くと「飴ですね、甘いものは貴重ですから」と言う。

 「お金かかるんじゃないの?」この代金は払えませんぜ。

 シェリは「絹江様と相談して、賞金の金貨十枚は全て飴で町の人に配ることにしました。賞金なんか持っていても、難癖をつけて取り上げられるか、強盗に狙われるだけですから、こうやって配ってしまう方がいいんです、宣伝にもなりますし」と。

 「戦勝パレードと言うより、結婚式のようだよね、この恰好」と俺。

 「お気づきになられました?! 絹江様が『あんたはドラゴン殺しに嫁ぐんだ、返品した前の持ち主は見る目なかったね』と仰ってくださいまして!」シェリは嬉しそうだ、それはなにより。

 ヴィーは黙ったまま、ピッタリ俺に寄り添っている。

 ヴィーはずーと不安そうだ。

 そりゃ、知り合いが目の前でぺしゃんこになったら引くわなぁ。

 俺は下半身をどうしていいか分からず、ひたすら二人のにおいを嗅いで過ごす。

 早く治ってくれ、俺の体。



 昼過ぎに、鈴木商店に大勢の拍手で出迎えられ中に入る。

 直ぐに納屋に連れていかれ、こちらの世界で標準的なシャツとズボンをはかされ、幌馬車に積み込まれ、運ばれていく。

 ヴィーもシェリもシャツにロングパンツというビジネスルックな服装で乗り込んできた。

 シェリに「どこへ行くの?」と聞いてみた。

 「西の沼の北側ですね。そこには北の山に行く街道とダンジョンに行く道の分岐点があります。そこに冬になると冒険者用に鈴木商店が雑貨屋を出します。町まで戻るには面倒な小物やお弁当などの販売を行います。その雑貨屋の裏に宿直用の家があるので、冬になるまでの間、借りれることになりました」とシェリ。

 確かに、俺たちが鈴木商店に居ても観客が押し寄せて、商売あがったりになりかねん。



 俺たちは幌馬車から降ろされる。

 見渡すと、沼の方に店と言うより物置サイズの小屋、反対の山側にちょっと良くした納屋のような建物がある。日本的に言えば六畳二間くらいのサイズか。

 玄関のカギを開け、中に入ると、すぐにフローリングというか板間に、椅子とテーブル。右側に畳の部屋、奥が台所等の水回りのようだ。

 お風呂があるといいな。

 俺はヴィーによって椅子に置かれヴィーは隣に座る。

 「今、お茶入れますね」とシェリは言って、奥の水回りに消えた。

 お盆を持って、直ぐに戻って来た。

 「お湯が沸くまで時間がありますので、水をお飲みになりますか」と言って俺の前に湯呑を置く。

 俺は両手が使えない。

 直ぐにヴィーが湯呑を持ってそーっと俺に飲ませてくれた。

 甲斐甲斐しいことこの上ない。

 今すぐ押し倒したい。もう、誰も見てないから良いよね? 手足が動かない!

 「時に、生活費はどうなるんだろうね」と俺。

 「絹江様にこれまでのお給金をまとめて頂きましたので、しばらくは大丈夫です」とシェリ。

 ビバ!  異世界ヒモ生活。

 ヴィーが俺の顔を覗き込み、会話が途切れたのを確認した後、ヴィーがシェリに矢継ぎ早に話しかける。シェリはしどろもどろに答えを返す。

 ヴィーの語気が荒くなっていく、シェリは言葉に詰まり、負けましたとばかりに頷く。

 ヴィーは椅子ごと俺を抱え上げ、奥の水回りを奥に向かう、シェリが先行して奥の扉を開けると、でかい桶に水が貼ってあり、桶の下には反魔結晶が燃えているようだ。

 風呂だ!

 基本屋外だが屋根と板の壁に囲われている。

 ヴィーが俺の服を脱がし始める。

 シェリは「ヴィーさんは、いつ可愛がってくれるのかとご立腹です」と。

 俺も今すぐ可愛がりたいです!

 俺は手足が動かないが、だいぶ前から勃起状態です!

 シェリによる、俺を実験台にしたヴィーへの『高度な』指導が始まる!

 西洋の引き締まった体の美女と、東洋のメリハリボディの可愛い子ちゃんの競演、異世界ソープランド!



 二人に散々もてあそばれ、俺は醜態を晒しまくった。

 ・・・・・・・人生最高の一時でした。




 夕方になるとヴィーは畳で寝ており、シェリは食事を作り始めた。

 俺は右肘が動くようになり何とかARコントローラーは動かせた。

 ようやく、シェリのステータスが覗ける!



〈ステータス〉

種族:鹿人(メス)

名前:シェリ

年齢:17歳

職業:奴隷(所有者トキ・スズキ)

ジョブ:薬師



〈状態〉

体力:■■■

魔力:■■■

状態:ワクワク



〈能力値〉

知力:3

計算力:5

記憶力:2

想像力:2

語力:2



運動神経:1

筋力:1

魔力適正:1

回復力:1



〈装備〉

頭□

右腕□

左腕□

銅□

足□

足首□



〈入力回路〉

〈アイテムボックス〉

風の生魔晶石(小)

□□□□



〈総合戦闘力〉

物理攻撃:1

魔法攻撃:1

物理防御:1

魔法防御:1



 うーん? 微妙。

 鍛えてなければすべて1なのか?

 ただアイテムボックスがヴィーより多い。

 俺の予想だと、このアイテムボックスに生魔晶石か魔結晶を差し込めば、そこから入力回路を通り魔力が供給され、その魔力が奴隷契約により俺に流れ込んでくると考えられる。

 となれば、シェリの伸び幅は大きいのかも。

 次は俺のステータスだ。ヴィーが先だと喜べない気がする。



〈ステータス〉

種族:人間(オス)

名前:トキ・スズキ

年齢:16-1歳

職業:ドラゴンを狩る者

ジョブ:獣人使い



〈状態〉

体力:□□□

魔力:■■■

状態:ボロ



〈能力値〉

知力:5

計算力:2

記憶力:5

想像力:5

語力:1



運動神経:12

筋力:1

魔法適性:42

回復力:108



〈装備〉

頭□

右腕□

左腕□

銅□

足□

足首□



〈入力回路〉

ヴィー(炎)

ヴィー(光)

シェリ(風)

□□



〈アイテムボックス〉

□□□□□



〈総合戦闘力〉

物理攻撃:1

魔法攻撃:42

物理防御:1

魔法防御:42



 うおおおおおおおお!? 回復力が3桁だ。

 これがなければ死んでたのか? いや死んでただろ。

 光の魔晶石のドラゴンの生命力をもろに受け継いだな。

 ビー玉サイズの炎の魔晶石さえ無くなっている。

 俺を守って砕け散ったのだろう。

 体力が未だにゼロ。

 入力回路が途切れたら死ぬんだな、きっと。

 魔法適性も40台って普通に大魔法使いでは?

 魔法防御も40台なら、ほぼ魔法攻撃無効じゃね? ドラゴンとかじゃなければ。

 地味に運動神経12は嬉しいな、オリンピック選手並みか?

 体を魔法で回復しているから、運動神経もつくりかえられてるのかもしれん。

 地味に職業が『ドラゴンを狩る者』は嫌だな。

 絹江婆さんが書き換えられそうなので、後で頼もう『鈴木商店の宣伝係』くらいに。

 ジョブの『獣人使い』もその通りだが、これ社会的に抹殺されるやつじゃね?


 最後にヴィーだ。



〈ステータス〉

種族:火竜人(メス)特異種

名前:ヴィー

年齢:15歳

職業:奴隷(所有者トキ・スズキ)

ジョブ:学士



〈状態〉

体力:■■■

魔力:■■■

状態:至福



〈能力値〉

知力:10

計算力:1

記憶力:10

想像力:1

語力:10



運動神経:9

筋力:10

魔法適性:41

回復力:106



〈装備〉

頭□

右腕□

左腕□

銅□

足□

足首□



〈入力回路〉

〈アイテムボックス〉

炎の生魔晶石(小)

光の生魔結晶(特大)



〈総合戦闘力〉

物理攻撃:10

魔法攻撃:41

物理防御:1

魔法防御:41



 うーん、ヴィーも微妙だ。

 これも光の生魔結晶を挿しただけの数値になっている。

 そして魔法能力は奴隷の値が主人にそのまま乗るようだ。

 奴隷契約を他の奴隷と付け替えたりすれば、数値的には有利に運用できそうだが、ヴィーとシェリは解除しない。しないと言ったらしないぞ!

 俺は最大あと二人、奴隷と繋がれるようだ。

 繋がらなくても、奴隷契約は出来そうだが。

 絹江婆さんは立場上、かなりの奴隷と契約しててもおかしくない。

 ただ、生魔結晶を繋げると取り出しができないのが分かった。

 普通の魔結晶なら取り外しできるのに。



 さて、この先のことを考えると難しいな。

 光の魔晶石のドラゴンの話を考えれば、俺の体は戻るだろう。

 しばらくはご飯代も大丈夫。

 このままハーレム生活でもいいのだが、ステータス的に後二人迎えられることを考えると、もう少し頑張りたい。

 なぜならこの世界では美女の価値がえらく低い。頑張ればあと二人くらい手に入りそうだ。

 大魔法使いの素質と、超回復力をもってすれば巨大ハーレムの建設も夢ではない。

 今は金が無いが、獣狩りして魔結晶を取ったり、ダンジョンに籠って反魔晶石を集めて売却するだけでも生活はできるだろう。



 「美味しくないですか?」とシェリ。

 夕食のお肉をヴィーに食べさせて貰いながら、俺は考えていた。

 「いや、明日からどうしようかなと。ヴィーは日本語を喋れるくらいまで頑張ってもらうとして、俺とシェリは武器屋かなぁ」

 シェリがヴィーに翻訳すると不満そうに返事をしている。

 「ヴィーさんはちゃんと可愛がってもらうまで、ここを動かない。と言っています」とシェリ。

 「ヴィーを初めて可愛がった時、感想を日本語で聞きたい」と俺。

 シェリが訳すとヴィーは驚いたように目を見開き、顔を赤くしてうつむき、コクリと頷いた。

 シェリは俺に「ご主人様は町には入らないほうがいいと思います」と言った。

 「なんか悪い噂でも立っているの?」と俺。

 「町では『金貨十枚貰っても、ああはなりたくねぇ』という意見が主流です。また鈴木商店がご主人様を介護用の奴隷を二人付けて、町から体よく追い出したことになっています。町はようやくすべての問題が片付いたところなので、町に行かれるのはよろしくないかと。ご用命があれば鈴木商店を通じて私が調達いたします」とシェリ。

 「シェリは何の武器が得意なの?」と俺。

 「え、私ですか? 私は戦場では足手まといかと。できて荷物持ちくらいです」とシェリの困惑が伝わってくる。

 「まあ、そうかもしれんが、俺とヴィーだけだと今回のドラゴン戦を繰り返すことになると思う。常識的な戦闘指揮者が必要だと思うのだが、他人の意見など聞く気がしない。つまり、シェリしか選択肢がない」

 正直なところ、シェリを家に置いておいて間男に潜入でもされたら、目も当てられない。

 そしてシェリには戦闘後、俺を褒めたり、癒したり、いやらしいことをしてほしい。

 「考えておきます」とシェリ。

 君を連れて行くのは確定なのだよシェリ君。

 「もう夕食は大丈夫でしょうか」とシェリが皿をかたずけるが、シェリから動揺が伝わってくる。

 「じゅ、準備してまいりますね」とシェリ。

 「あ、あ、その事なんだが、今すぐにでもお願いしたいのだが、体が万全になってからにしたい。多分明日には何とかなると思うので、明日まで待ってほしい」自分で自分を生殺し作戦だ。

 本日のお風呂も大変良いものではあったが、初めては、初めてだけは、主人として主体的に立ち回りたい。

 「ご命じの通りに」とシェリ。

 俺もシェリもヴィーも一息つくと、グラグラするくらいの睡魔に襲われた。そういや、徹夜だった俺たち。

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