第74話 真・秩序の加護者

私は「時の加護者」アカネ。

「運命の次元」でこの悲劇の原因を見てきた。それでもやっぱり私は前に進んでいかなければならない。正すものを正して未来を切り開くんだ。ダル・ボシュンを排除、進化魔獣の排除も終わった。あとはハクアを正すだけだ。


—太陽の国レオ ラジス峡谷—


「ん.. 」


結月が目を覚ました。


「こ、これは! これが私の手。これが大地.. あ、あぁぁ、見える。見えるよ!! 」


ツグミの癒しの魔法により結月の瞳は完全に視力を取り戻していた。


そして結月の瞳を通じ世界中の暗欄眼から癒しの魔法が放出し、惑星の全ての病と怪我が完治した。


もちろん、ナイフにより塞がれた暗欄眼の瞳も元に戻った。


世界中の暗欄眼の子供たちは歓喜した。


「ク.. クク」


続いてハクアが目を覚ます。


「もう、ここまでよ、ハクア。いや、ライシャ」


アカネの言葉にハクアは力なく空を見つめていた。


「そうか。全てが潰えたようだな。この世界の力も満たされている。もはや僕に勝てる要素はないということか」



「そうではないだろう。お前は最初から勝つつもりなどなかったのだろ。お前は生きながらえてしまった命の捨て所を探していただけだ」


ハクアはその声に反応して顔を上げた。


「シャーレか.. お前はいつの時代もわかったような事を言うんだな。そんなんじゃない。僕はお前らが踏みにじった花の悲しみを味合わせたかったんだ」


「ハクア、もうやめて。ね 」


結月がハクアの腕にすがりついた。


「結月、お前、目が見える様になったのか? 」


「うん。そうだよ。ハクア、ここで一緒に暮らそう。そうしたらバンクとハクアと私できっと楽しい家族になるよ」


「ふっ、そうだな.... 」


一瞬、頬を緩めたハクアの目は希望を抱くような目をした。


結月が手を差し出すとハクアはその手を重ねる。


だが、次の瞬間、ハクアは結月を羽交い絞めにした。


「ははははは。やっぱり僕の勝ちだ『僕の世界はこんなんじゃなかった。この世界は僕の世界と同じになるべきなんだ。この世界を僕は認めない!! 』」


だがハクアの『審判の瞳』は反応しなかった。


「無駄だぞ。ハクアよ。もうお前の瞳は発動しない。真の『秩序の加護者』が誕生したのだからな」


朧げな光がひとつに凝縮すると人の形となった。


「よう、お前たち久しぶりだな」


『秩序の加護者』のトパーズ=ティムが姿を現した。


「ティム、あなた何やってたのよ」


私はつい呑気に出てきたティムに文句を言ってしまった。


しかし、ティムは私の言葉を意に介さずに語り始めた。


「俺はずっと見定めていた。なぜなら、この世界に3人もの『秩序の加護者』が現れたからだ。アカネ、俺はお前だと疑わなかった。だが、未来の『秩序の加護者』が現れ、さらに、そいつが奇跡の子供まで連れて来るもんだから、俺は困っていたのだ。そして今、真の『秩序の加護者』が覚醒したのだ。それは結月様だ」


「な、なんだと。そんな馬鹿な」


「ハクアよ、お前は恐れていたのだろう。本物の『秩序の加護者』が現れることを。だからお前は暗欄眼を持つ子供の目を奪った。だが、皮肉だな。お前が現世より連れてきた子供こそが真の『秩序の加護者』だったのだからな。結月様の力が覚醒したからには、お前の『審判の瞳』は役に立たないだろう」


ハクアは結月の顔を見た。


「ライシャ、私はあなたの過去を見た。私があなたの世界を変えてしまったのかもしれない。でも、私は謝らない。あの時リュウセイと決着を付けるしかなかったのだから」


「勝手なものだな、「時の加護者」よ。お前は、『始まりの法魔』を消し去ったのだ。そのせいでリンは消滅し、私の惑星は消滅してしまった..何もない。くそっ! もう何もないんだ」


そう言うとハクアは走り去った。


「あっ、あいつ逃げやがった! アカネ様、すぐにソックスに乗ってあいつを踏み倒しましょう!! 」


「待って、シエラ。ハクアが向かう場所はわかっている。結月、そしてツグミ、一緒に来て」


そうだ。ハクアは力を得るため、あの場所へ行くはずだ。


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